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抜戸岳南尾根偵察              1998/11/13-11/16 三瓶 修
 
 11/13 大阪-富山
 いつもの様に北国を待ちながら酒を飲む。久方ぶりのせいか少し緊張ぎみである。今回はこの冬の偵察ということであまり情報がないので、ガチャの類いが異常に多くなってしまい、ここまでくるだけで汗をかいてしまう。この冬は久しぶりに冬らしい天気になるとの長期予報だが、今のところ11月とは思えない陽気が続いている。ようやくホームに入った列車に乗り込み、これもまたいつもの様に荷物置き場に横になる。久しぶりである。

 11/14 富山-新穂高温泉(9:00)-蒲田川左俣林道-笠新道(10:00)-岩小屋沢-南壁のコル-C1(12:00)

 新穂高温泉を9時ころ歩き始める。全く雪はない。荷物が重いし、練習不足なので、無理にペースを上げずゆっくりと歩く。笠新道は入り口で大きな砂防工事がされていて少し分かりづらくなっていた。
 岩小屋沢に入ると、東南壁から南壁が見えてくる。南壁は思っていたより大きく立って見える。がらがらの沢を詰めて行くと、東南壁の前衛壁が望まれる。ブッシュが多くすっきりしないが、壁自体は大まかで安定したテラスが多く、1人で試しに登りにくるにはお手頃そうである。しばらく行くと下降ルンゼを挟んで中央稜が見えてくる。幾つかリッジがあって、登山体系に載っているルートがどれなのかはっきりしないが、顕著な3本のリッジとその間の2つのルンゼがきれいだ。これもまた次回への課題としておいておこう。

 さて今回の課題の南壁である。沢の上部は急な草付きで、なだれがブッシュをかきけずっている。スニーカーで登るには限界が来たので、アイゼンをつける。とりあえず予定の天場のコルに上がってみるが、そこは幅が1mに満たない狭さで、とても泊まる気にはなれない。かといって、ここまで登って来た途中にも、よさそうな場所は見当たらなかった。これはかなり下らなければいけないかと覚悟しながら、それでも辺りを探すことにする。

 ルートの偵察がてら、壁の対岸の尾根に上がって見る。正面はなるほどかぶった凹で、人工になる。そこを越えてしまえば後は何とかなりそうだが、今回はこのルートを取るには自信がない。右からは簡単にまけそうに見えるが、こちらは東南壁の上部に合流するため、見えない部分が読みにくい。冬のエスケープとして使われる左側は、今は簡単にトラバースできるが雪が付いたらいやらしそうである。とりあえず正面左側から取り付いて、トラバース気味にルートを取ることに決める。うろうろした結果、岩小屋沢の右岸に小さな岩小屋を見付だしそこに泊まることにする。ちょうど1人用のテント1張り分のスペースで半分くらいは屋根付きである。テントからは壁がよく見える。

11/15 C1(6:00)-南壁のコル(6:30)-南壁の頭(10:00-10:30)-南壁のコル(12:00)-C1=C2(13:00)

 昨日見ておいたとおり、正面左から取り付く。ブッシュ帯をトラバースして垂壁に取り付く。ハーケンとキャメロットで人工で登る。垂壁を越えたところでザイルをきる。支点はブッシュ。2ps目、ブッシュをつかんでの木登り。50m出して、凹の下できる。3ps目、凹を5mほど登って、南壁の頭に出た。頭はハイマツの密生した広い尾根で、とても薮をこいで登る気になれず、今回の山行はここまでとする。同ルートを下降してコルにたどり着いた。

11/16  C2(7:00)-新穂高温泉(8:00)

 のんびりと起きて、岩小屋沢を下る。と思いきや、下り初めてすぐのガレ場でこけてピッケルで胸を強打してしまった。このピッケルに差されるのはこれで3度目だ。このピッケルは割りと使い込んでいて、これまでもパキスタン、ネパールを始め国内でも各所に連れて行ってあげてるのに、恩知らずな奴である。幸い痛みはたいしたことはなかったが、多分、肋骨にひびくらいは入っただろう。降りたら医者に行かなければならない。



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