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白馬岳主稜     2004年05月02日〜04日                                L橘(記) SL須川 滝口 大西

白馬主稜。14年ぶりだ。
その間、山は、そして自分はどう変わったのだろう。
それを確かめるため、再訪する事にする。(んな、大袈裟な。。)
連休前の仕事を終え、天気予報を確かめると、肝心の5/4が雨の予報だ。

 今回の計画は各メンバーの日程合わせのため、非常にタイトで予備日も取ることができない。天候が悪ければ下山するしかないのだが、ある程度上まで登ってしまったら今度は登ってしまうしかない。インターネットを注視すると晴れは5/3迄しか望めそうにない。入山日に頂上まで行くのはきついなーと考えながらザックに荷物を放り込む。
 
5/2 夜10時JR西宮駅集合。3交替の運転体制と翌日のハードワークを考え車内をベッドにして北陸道経由でひた走る。しかし猿倉に着いたのはとっぷりと陽も昇った5時だった。用意をして、6時出発。白馬尻7時着。天候は晴れ時々曇りで今日一日は充分持ちそうだ。8峰への登り口は視界が効くためにすぐにわかる。

 上昇していく気温に不安を感じながら重い体を一歩一歩づりあげる。8峰を越えるとあまり雪崩れそうにはない地形になり、一安心する。7峰はよくわからない間に通過し、写真で見覚えのある6峰にたどり着く。(1030)そこからは5〜1峰まで、大凡ではあるが見当を付けることができる。

 小休止の後、歩き出し5峰あたりまで来た所で気温は最高潮に達し、雨蓋に入れたチョカリットもドロドロに溶けて食えない状態になっていた。顔も異常に熱い。あちこちの沢筋ではドンが木霊を始め、頼むからこのリッジでは起こらないでくれと天に祈る。

 そんな中、右の三国境方面の沢を雪崩を引き起こしながらスキーヤーが滑っているのが点のように見える。主稜からは絶壁に見える名もないB沢(仮称)を滑るあの二人は超人かそれとも命知らずのエキスパートか?。登山者が滑落したら絶対に停止できそうにない雪崩れ沢を滑る二つの点を暫く鑑賞し、やっと天気も曇り始めたので、雨に変わる前にと歩を進める。

 雪の状態は非常に悪く、トレースのバケツは着いているがいつ崩れるかわからない。そんな中、須川が先頭で登った雪のリッジで、後続の滝口がここに足を置いたら雪が崩れますよ、とその後続の大西さんへ言っている。もし雪が崩れたら両側が切れているリッジで落ちてどういうことになるのか、こいつらは解っているのかと腹が立ち、つい怒鳴ってしまった。「須川、なんでザイルを出さん!もし落ちたらどうなるのか解っとんのか!」大西さんにラストに回ってもらい、デッドマンで確保する。

 有能な若者二人にあまり制限は加えたくないが、自分が登れるということとパーティ全体が登るということは意味が違う。L、SLはパーティ全体の責任を負っている。たまたま足を乗せても雪が持ちこたえたのと、雪が崩れても不測の事態が起こらぬようザイルを張るのは意味が違う。その辺の意味が残念ながら須川、滝口にはまだ甘い。山を甘く見て死んでいった仲間達の気持ちがお前らにはわかるか・・。

 そこからはトップを交替し自分の判断で要所でザイルを張って進む。トップの確保はスタンディングアックスで行い、ランナーはデッドマン1本、支点もデッドマン1本とアックス2本で後続はユマール2と引上げ1だ。

 2峰までが長く感じられた。さっきまでザックのチョカリットを溶かしていた太陽は姿をくらまし、辺りは灰色一色で雨も降ってきた。リッジを通過するたび、左は致命的、右はうまく滑れば軽傷などと、一人確認して進む。それにしても14年前はほとんど頂上までザイルを出さずに新人の月脚さん(懐かし−)も含めて登れたのに、今回は気象が不安定ということもあり非常にデリケートな雪面となっている。しかし、気温低下でまた雪も締まってきたので、先ほどのカンカン照りで登っていた先行パーティよりはましだろう。

 また、この湿雪ではスノーバーは全く役に立たない。最後の60メートルのやや角度のきつい雪面を2ピッチで抜けると頂上稜線だった。と同時に風が反対側から激しく吹いていた。(1700)頂上からは地形的には全く不安はないと考えていたが、今度は風の応対が大変だ。白馬山荘横でテントを張る。ほっと一息入れたいが風が邪魔をしてくれる。

 5/4 一晩中風と雨でよく眠れなかった。だだっ広い地形というのも困った物だ。朝、GW中というのにひっそりとした小屋に立ち寄り、小屋番の人に聞く。「大雪渓は降りれますか?」 小屋番「はあ?」「この雨と風ですが大雪渓は降りれますかねえ?」 小屋番「そらあ、登ってくる人もいるんだから降りれるでしょう」「わかりました」充実した会話を交わし、村営頂上小屋を目指す。

 小屋横より大雪渓へと降りる。特に何の心配もない、大きな雪渓だ。但し、落石と雪崩は要警戒。
 2時間ほどで猿倉駐車場着。(800)途中、「まほろばの湯(?)」というひなびたロケーションが最高の露天風呂に立ち寄り一路土砂降りの高速道を3交代制で西宮駅に戻ってきたのは1800だった。

NOTES:
 ・スノーバーには向きが有る。今一度習熟を。
 ・電子着火のライターは雪山では使い物にならない。今一度確認を。
 ・主稜、稜線から携帯のアンテナは3本立った。稜線から177に電話して
  天気を確認できて便利な世の中になった。しかし何故かきつい日差しでは
  携帯の画面が暗くてURLには接続できなかった(画面が見えなかった)
 ・エスケープルートは白馬主稜には存在しないかと思ったが、6−3峰間の
  間で何本かの沢筋は大雪渓側へダブルアックスで下降が可能だ。
  (但し、早朝か夕方でないと危険)
 ・雪稜では、いちいちザイルをエイトノットでハーネスに付けない。



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