雪彦山 地蔵岳東稜~滑り台~大ジェードル凹角ルート アルパインクライミング

2006月06月04日(日)   岡島 滝口 橘

前夜、賀野神社で前祝を行う。スーパーの安売り肉を大量に買い込み、七輪で焼くが次第に胸がつかえて食えなくなった。

翌日、地蔵東稜の基部に取り付く。私はクレッターシューズを忘れてしまい、おまけに靴下も忘れてきて、滝口君に水虫菌付の靴下を借りて、運動靴で登ることにする。(滝口に感謝)

初めの2ピッチはお馴染みの東稜のスラブを登る。3ピッチ目から右にトラバースして回り込み、滑り台の基部に着く。

離れて見ると垂直のスラブに見えるが近づくと少しは寝ていて、登攀の可能性が見出せる。先行パーティは真ん中をフリーで抜けていたが我々は右側のクラック沿いを登ることにする。

真ん中はスラブで難しそうだがボルトが連打されており、アブミを使えば上まで行けそうだ。右側のクラック沿いにも潅木等があり、手がかりに使える(ただし枯れている)

左にもクラック沿いにルートが伺えるが、今の自分の力では歯が立たないことが明らかですぐに壁から拒否されそうだ。(ナッツやカムで人工を交えればなんとか登れそうだが)

さて滑り台を登りきり、もう1ピッチやさしいピッチの後、しばらくブッシュをたどり、馬の背基部に着く。ハイキング気分で楽しめる馬の背か胃が締め付けられるような大ジェードル凹角ルートに挑戦するか迷うが滝口の熱意に答え、大ジェードルルートにする。(先行パーティの登り方をよく観察させて頂いた)

大ジェードルの基部にトラバースしてみると意外と簡単そうに見えた(失礼)しかしリードで取り付いた滝口が苦戦している。

悪戦苦闘の末、やっとビレイ解除のコール。ミッテルの私が運動靴で取り付く。しかし体半分入りそうなクラックでそこから体が持ち上がらない。ピンもやや悪く、いやな所だ。あっさりと人工に切り替え、シュリンゲあぶみに乗り、ヌンチャクをわし掴みして高度を上げていく。先行パーティのリードは女性だったがほとんどピンも取らずによくこんなルートをリードできたなと感心する。

ルートは右上し、ピンに導かれてビレイ点に到着する。 ボルトにぶら下がりながらふと、後ろを振り返ると、・・・「 Too mach air !! 」 恐ろしい空間が足元に広がっていた。これを快感ととるか恐怖感ととるかは人によるだろう。 そのときの私の気持ちは隣の不帰岳で飛んでいる隼のような気持ちだった。ただ、それが危険の一歩手前であることは予想ができた。さあ、ついにラストピッチと思われるところまできた。

最後は地蔵の頂上を目指し、岡島がリードする。出だし、トラバースし右に回りこんでから左上するラインが登攀後にピンで読めたが、トラバースの後、強引に直上していく。落ちたら大墜落の所だ。(ピンがない) 私はセカンドで運動靴で必死で登る。

岩角の手触りでルートでないことがわかる。よくこんなところをリードできたとまた感心する。最後に滝口を頂上へ上げ、持参したコンロでコーヒーを沸かし、一服する。このコーヒーを味わうために登ってきたようなものだ。 しかしこの穏やかな頂上も一歩躓けば奈落の底へ落ちるような切り立った場所だ。油断はできない。

地蔵東稜からはハイキング気分の中高年クライマー達が次々に登ってくる。地蔵東稜もややマンネリ化はするが優しくて明るい好ルートだ。しかし我々はToo much air を抱えながら大ジェードル凹角ルートを苦労しながら登った。今回はこれで大満足としておこう。

ただし、もう少し練習を積んで、リードできる余裕をもってからもう一度登ってみたいルートだ。

さて、最後の緊張感を持って地蔵の頭から縦走路へ降り、下山していくと我々に先行していたパーティが今度は地蔵岳正面の加古川ルートの2ピッチあたりに張り付いている。しかもリードは女性だ。

その山行レベルの高さにまたまた感心させられた。(今の我々がやや低いのかも知れないが)逆に考えるとまだまだ我々に残された課題は多い!!