南アルプス 仙丈ケ岳 地蔵尾根 登山
- 山行日
- -
- 山域、ルート
- 南アルプス 仙丈ケ岳 地蔵尾根
- 活動内容
- 登山
- メンバー
- T、Y村、T内
南アルプス 仙丈ケ岳 地蔵尾根 登山 山行記録
鋸尾根を登り甲斐駒ヶ岳まで行く計画を綿密に立てたが、あに図らんや台風20号が24日に日本列島を縦断しどう見ても戸台川は増水してそうだ。過去にも一度増水で渡渉が出来ず敗退したことがあるので急遽計画を立て直し、仙丈ケ岳に地蔵尾根と言うのが西から延々と山頂まで伸びているのでそれを歩いて山頂まで往復することにする。
あり難いことに途中に松峰避難小屋というのがあり、そこで水も得られそうだ。
渡渉を後回しにして北沢峠から甲斐駒に登り鋸尾根を下る案も考えられたがそれでは登山本来の目的が外れるような気がする。
前夜22時JR尼崎駅に集合し、一路名神豊中から中央道駒ケ根ICまで一人で長躯運転する。途中疲れからかガードレールに接触しそうになり肝を冷やす。全く今回の山行の核心はこの往復の単独運転に尽きる。(他のメンバーは眠気覚まし担当係)
明朝やっとのことで登山口の駐車場に着き、急いで仮眠する。
25日朝8時起床。本日の行動計画は4.5時間の歩きのコースを今夜のおかずの茸を取りながら小屋迄というものなのでゆったりと出発する。暫く歩くと噂の「孝行猿の墓」に着き、休憩していると早速後続のPに抜かされる。今日、インターネットでは長距離トレランの記録ばかりで我々のようなのんびりした記録はもはや時代遅れの化石のようだ。
とろとろと歩いていると登山道と林道が複雑に交差し、よくわからない。しかし茸は次々に現れ、野イチゴと高山植物、白樺林、超美味しい正真正銘の南アルプスの水場と、飽きさせない。初見の茸が現れる度に図鑑を開いて同定しなければならないのでそのたびに15分以上を要する。ナメコが現れたらすぐ分かるのだが。とりあえずややこしいのは諦め、ショウゲンジを3本確保し今夜のおかずとする。他にはハナビラニカワダケ、フサヒメホウキタケ、(以上可食)、ドクベニダケ(フェアリーリングも!)、ドクツルタケ、その他同定不明な茸が多数。その合間には山イチゴが成っているので摘まんで頂く。食べきれないものは今夜のデザートに持ち帰る。途中、鹿の骨や可食のフキ、綺麗な紫色のトリカブトや紫リンドウ、タンポポによく似た黄色い花、超酸っぱい山リンゴ(?)と、登山者を飽きさせない。動物の雰囲気も濃いので熊鈴は忘れずに鳴らしながら歩く。やがて景色にも飽きた頃、ようやっと松峰避難小屋分岐の標識に出くわす。15時。
こんな谷間に小屋があるのかいなと訝(いぶか)りながら下ること10分で森の中の小屋を発見。うーん、何ともいえない雰囲気の小屋だ。しかし風雨は防いでくれるのであり難く中に入らせて頂く。中は窓が少なく暗いので、ドアのそばでザックを整理する。水場へは更に降りること5分位。今夜のコース料理は特製味噌焼肉カレー(レトルト違いますよ!)、付け合わせは採ったショウゲンジの醤油ソテー、飲み物は摘んだ山イチゴを浮かばせた赤ワイン。シェフもビックリの美味さだ。飯を食べ終わると昨夜の長距離運転の疲れもあり、即ダウン。
8月26日(日)3時起床。本日は仙丈ケ岳往復の10時間の長丁場なので最小限の荷物を背負ってさっさと出発する。なんせキノコを調べだすと1本あたり20分ほど同定に時間がかかるので、今日は道草せずに歩くことにする。道草とはよく言ったもので、道茸といったところだ。さて1hほど歩くと夜が明け最初の休憩でヘッデンを外す。ご来光を拝みたいところだが、ひたすら東を向いて歩くので来光は数々のピークを越えたあたりから差し込んでいる。やがて美しい白樺や唐松の原生林からシャクナゲ、ハイマツ帯へとかわり、遂には植物も生えない岩稜となる、と同時に視界が開けてきた。登るはずだった鋸尾根、男性的な甲斐駒、中央アルプスの山々、南に富士山、東に八ヶ岳連峰と今度は山々が我々の目を楽しませてくれる。しかし私はやや単調な歩きに辟易し、もう仙丈の頂上も沢山の登山者と共に見えるし、引き返してもいいかなあ。。と思うのであった。あとの二人は取り付かれたようにパワーが出てきたので必死で着いて歩く。やがて頂上付近の複雑なカール状地形に到達し、あれ?あんなところに仙丈小屋が、とかあんなところに馬の背ヒュッテだ!と適当な会話をしながら頂上に着いた。10時30分。すごい混みようで、頂上標識柱の前では写真撮りを待つ列までできている。かなりのアウェイ感だ。仙丈は色んな尾根の交差頂点にあり、大多数は北沢峠からだろう。中には草履履きの登山者までいたのには驚いた。頂上で30分ほど微睡(まどろ)み、360度の景色を楽しんだ後は小屋に向けて周回して降りる。なんか観光地にある売店のような小屋だ。ここでコーラを驕らされ、皆で乾杯するが気圧の関係か二口ほどでバリウムでも飲んだかというような腹部膨満感に襲われる。うーむ3003mで飲むコーラは危険だ(笑)。ラインで写真を送り、下山へと移る。我々の辿った地蔵尾根は本当にマイナーな尾根で、山頂の喧騒が嘘のような静けさ。しかしトレランナーには人気らしく、日帰りで走っている人を結構見かけた。うーむ、早月尾根と言いこの尾根と言い、もはや走って一日で往復せねばならないのか。時代は変わった。。しかし単独で鈴も慣らさず走ったら熊ちゃんに出会える確率も高そうだ。。なお、トレラン時の注意点はふもとの林道と登山道が複雑に交錯するあたりで何の目的か分からぬが異常に地図にない林道が多い。しかもまだ工事もしているので更に増えるだろう。歩いても帰りは何度か迷ってGPSを出すことがあった。
さて、また人の少ない地蔵尾根を黙々と4時間ほど下って、またもやこんな鬱陶しい谷間によく小屋があるなという我が家に帰り付く。犯罪者にでも来られたら大変だが今夜も我々の貸し切りのようだ。トレランの人は絶対に立ち寄らないだろう。時間の無駄だ。
しかし我々はその時間の無駄を楽しむのが今回の目的なので今夜も盛大に宴会をせねばならない。帰りにドクツルタケもあったがこれは致死性の猛毒種なので食べるのは止めよう。
昨夜以上にシェフの腕が冴え、豪勢な焼肉丼が出来たのであり難く頂く。あー旨。
明日は元来た道を4時間ほど歩いて帰るだけなので、残った時間はエアギターを伴奏に歌などを歌って過ごす。
8月27日(月)。3時半起床。昨夜は早速仕事でトラブルに見舞われる夢などを見、社会復帰も近いことを自覚する。ラジオを付けるとNHKのラジオ深夜便で宮沢賢治の詩の朗読などをやっており、しなびた山小屋の雰囲気と異常にマッチし、ゾクゾクするほどだ。
イーハトーブ、、素晴らしい。一人だったら怖いくらいかも知れないが。今回は山でクラシックは聞けなかったが宮沢賢治の作品世界に触れられて非常に趣を感じた。
さて、シェフはあまり棒ラーメンが得意ではないとの泣きが入り、棒ラーメン係を仰せつかり手順通り作る。まあまあ好評だった。私は鍋と棒ラーメンとプリンかゼリーしか山ではよう作れない。二日間お世話なった小屋に礼を述べ掃除をして5時半出発する。
帰りも林道のトラップに引っかかり30分ほど時間をロスしてなんとか再び美味しい林道脇の水場に辿り着き5Lほど汲んで帰る。奥美濃の石徹白の水以来の美味しさで、とにかく甘い!!太陽は照っているのに滅茶冷たい!!大峰のゴロゴロ水等とは大違いだ!
水に感動しながら、約5時間で麓の駐車場に着き、途中の景色を楽しみながら駒ケ根IC近くの温泉で汗を流して一路神戸まで戻る。往復の運転手が交代要員がいないので、危険性は行き帰りの高速道路にもあった。眠気覚ましの山の怪談話朗読が堪えた。今度はビバークの夜にお願いします。(完)