荒島岳 大野富士 厳冬期登山

山行日
山域、ルート
荒島岳 (大野富士)
活動内容
厳冬期登山
メンバー
芦田、岩瀬た

荒島岳 大野富士 厳冬期登山の山行記録

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こんにちは、岩瀬琢海(以下岩瀬た)です。
荒島岳に行ってきました。
今回の目的は、冬の荒島岳の一般道を歩くことと、ツェルト練習、雪洞練習でした。また、個人的に冬の日本海側の湿雪というものを知りたいということもありました。
途中ホワイトアウトしてしまい緊張感のある場面もあったりして、大変良い勉強になりました。


以下、山行報告です。


行程概要

1/28
曇りのち風雪
気温2°C~-8°C
8:00 勝原駐車地到着
8:15 登山開始
10:30 シャクナゲ平
11:30 1400m近辺で稜線に出る ホワイトアウト
12:15 1475m地点 撤退開始
13:15 シャクナゲ平
14:00 680m地点 ツェルト練習開始
15:15 ツェルト練習終了
16:00 駐車地 到着 下山完了

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行程詳細

3時に神戸にて芦田さんと合流し、予定から1時間ほど遅れて勝原スキー場(現在はスキー場は廃止されています)登山口駐車地に到着。
装備を整えて早速出発。
天気予報は悪くなっていく傾向だったけれど、出発時点では思いの外天候も悪くなく、高曇りという程度。移動の車中からは荒島岳全体を見ることもでき、行けるところまで行きましょうということで駐車場を出発。
土日にスノーシューの集団が歩いたようで、トレースもしっかりとついていて、楽々と歩みを進め、シャクナゲ平にて休憩。
これはもしや楽勝で山頂まで行けてしまうんじゃないかと思いながら歩みを進めて樹林帯が終わり稜線に出たところで、トレースは終わっている。風に煽られる。
若干のガスでしたが視界もまだあり、おぉ雪庇だ。気をつけよう。などと思いながら歩いていく。
次第にガスが濃くなっていき、あれよあれよという間に3m先の地形を見るのにも一苦労になる。
「方角通りに登れば山頂につく。下りは自分たちのトレースもあることだし。」
と思いながら、なおも歩みを進めましたが、徐々に無視出来ない勢いの風が吹き始め、顔に当たる雪の粒が弾丸になって痛くなってきたところで、この先をどうするか2人で相談しました。
「私は、無理せず降りるべきだと思う。」
「僕は、多少の無理をしてでも山頂まで行きたいです。」
とお互いの意見を確認したところで、下山を決定。
正直、進むことにためらいが無かったといえば嘘になる状態だったので、芦田さんとの相談の時間をキチンととることができて良かったと思いました。

さて、では下山しましょうと、元来た道を戻ろうとすると、稜線に出てから度々膝程度まで踏み抜いていたはずのトレースが完全に消えている。
ここで急に緊張を感じましたが、「焦りが1番の事故の元」と思いながら、ホワイトアウトの隙間を見つめ、わずかに残る雪面の凹凸を拾う努力をするけれど、まるで何も見えてこない。風雪は勢いを増していく気もする。
しょうがないので、コンパスを頼りに元来た方角通りに歩くも、自分たちの右側に張り出しているはずの見えない雪庇が怖くて気づかぬ間にどうしても左に向かって歩いてしまう。
修正を加えながら進んでいたつもりでしたが、登りでは絶対に通らなかった草木や石の地帯に入ってしまったところで、自身の技術不足に折り合いがつき、携帯のGPSで現在地を確認。30m程度道を外していました。
たったの30mを100mくらいに感じながら下山路を修正して無事に風雪の稜線から脱出し、トレースの残っている穏やかで静かな樹林帯まで降りることができました。
その後、シャクナゲ平で休憩し、さらに降りた平坦な場所でツェルトを張る練習などしてから下山しました。

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ホワイトアウトについて

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今まで何度か濃いガスに巻かれたことはありましたが、風雪による完璧なホワイトアウトというものを初めて経験しました。
ホワイトアウトの中でも安全に動くために、

  • 登り時点で方角をこまめに確認しながら登る
  • くだりはトレースを拾えば大丈夫

というのを意識しながら登りましたが、両方ともなかなか思い通りにはいかずでした。
下山時、補助ロープを持っていたので、アンザイレンをして傾斜と地形を感じながら方角を確認しつつ歩けば解決できるかもしれないとチラリと考えもしましたが、確固たる自信が持てなくてGPSを確認しました。
冬山にGPSは必携と思いますし、山に入るときは記録を兼ねてほとんど常に携帯電話のGPSを起動するようにしてますが、精度に全幅の信頼をおける物でも無いし万が一故障したときのことを想像するとやはりアナログの技術が重要になると考えています。
当然、天候回復までビバークするのは選択肢のうちの一つですが、そのことはひとまず置いといて、ホワイトアウトが起こる予測がある場合に安全に引き返すための方法を考えてみました。

  1. 竹串などある程度高さのあるもの(15cm以上)にピンクテープをつけたものを多数用意。
  2. それを雪面に刺して、方角を確認してそこから絶対に方角を変えないようにまっすぐに進む。最大50歩(20m程度)。
  3. 曲がるときは地面に竹串を刺して、そこからまた真っ直ぐに歩く。
  4. この繰り返し

・・・・距離にもよりますが、竹串の数が膨大になりそうなのと、回収を考えるとピストン前提でしか使えないのであまり現実的では無いかもしれません。

なにか、良い方法をご存知の方がいらっしゃいましたら集会や山行でご一緒になった時に教えてください。

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ツェルト練習について

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今回の山行の目的のうちの一つに、雪山でツェルトを張る基礎的な練習というものがありました。
前もって5パターンの張り方を調べていって、そのうち2つをやってみました。
1つめは、ストック・張り綱・ペグを使って張る1番基本的な方法。
雪山では小枝や竹ペグを使うことが多いと思いますが、最近どうやら竹ペグの残置が問題になっているようで、自然物と言えども還る時間がかかり過ぎるので現地のものを使わない場合は基本的には回収して帰ることがマナーなようです。今回は練習ということで割り箸を十時に組んで麻紐でガイラインを伸ばしたものを使いましたが、回収し易いように幅広の薄い板を使う方法もあるようです。

2つめは、ロープとペグと立木を使って張る方法。
ツェルトにロープを通して張るわけですが、意外に立木に結ぶ高さに気を使うのと、自在結びなどのロープワークがいまいち習得できてなかったので少し時間がかかってしまいました。

他の方法はいずれも雪洞を掘って、中でツェルトを張ったり入り口をツェルトで閉じるようなものですが、今回は時間的なこともありやりませんでした。
ツェルトの緊急時の使用を前提に現実的に考えると、木や岩の影にできた窪みを踏み固めてツェルトを吊り下げる方法が簡単かつ早いのでこの5パターンの中ではベストなのかなと思います。
また、稜線でホワイトアウトしたときに、ツェルトを張って休憩すれば良い練習になったかもしれないなとも思います。もっとも、練習としてやるには余裕も無かったしリスクが大きいので、あくまで「後から考えると」というところですが。
次回、どこかでホワイトアウトした時に充分に余裕があればやってみようと思います。

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以上、山行報告でした。

ホワイトアウトの印象が強過ぎてそのことばかり書いてしまったような気がしますが、荒島岳は樹氷も綺麗で、晴れていれば姿形も一級品らしいです。またいつか積雪期に一泊予定など組んで行きたいなぁと思います。
また、樹林帯はトレースのおかげで苦労することなくて個人的に知りたかった日本海側の山の雪は堪能できませんでしたが、ちょこちょこトレースを外して歩いてみたりして、なんとなくきめ細かいようなしっとりしているような、そんな印象を持ちました。

そして、今回一緒に行っていただいた芦田さんの冷静な下山判断で無事に余裕を持って降りられたので、僕は自分が思ってるよりももっと手前の段階で安全な選択をしたほうが良いだろうなと思い、良い勉強になりました。ありがとうございました!