杓子岳 杓子尾根 残雪期雪稜登山

山行日
-
山域、ルート
杓子岳 杓子尾根
活動内容
残雪期雪稜登山
メンバー
T.I、H.I

杓子岳 杓子尾根 残雪期雪稜登山の山行記録

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こんにちは、岩瀬琢海です。
後立山に行ってきました。
当初、白馬尻から杓子尾根経由で杓子岳を登り白馬岳まで繋げる予定でしたが諸々の条件により杓子岳までのピストンとなりました。
新雪を掻き分けての山行。
展望こそありませんでしたが、それゆえに雪山の大変さを噛み締めた良い登山になったと思います。

以下、山行記録です。


行程概要

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4/10

22:30 神戸にて合流・出発

4/11「二俣駐車地ー1900m地点BC」

気温 +3 °C~-7 °C
曇り、雪
風有り
8:30 二俣の駐車地到着・準備
9:00 出発
11:00 猿倉荘
13:20 白馬尻
16:00 1900m地点・テント設営
20:00 就寝

4/12「BC-杓子岳-BC」

気温 -11 °C
2400m以上ガス
時折風と雪有り
4:00 起床
6:00 出発
9:00 ジャンクションピーク
12:00 杓子岳山頂・下山開始
15:00 テント地到着
20:00 就寝

4/13「BC-下山」

気温 -3 °C~+10 °C
快晴
ほぼ無風
4:00 起床
6:00 下山開始
8:00 猿倉荘・雪上確保練習
11:00 二俣駐車地・下山完了

行程詳細

1日目

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目がさめると、雪の降りしきる「道の駅 白馬」でした。
運転席にはH.Iさん。ぐっすり寝ている。
起こさないように外に出て、手を洗うついでに煙草を一服。
昨夜、僕も役に立たねばと思い免許を取って以来のMT車の運転を振り返り、
「SA内でエンスト2回、路上でクラクション1回鳴らされただけで無事に済んだ。この山行の核心は越えた。」
と1人静かに生きてることを噛みしめる。
見渡す田畑にはシンシンと雪が降り積もって行く。思い出したく無いことを柔らかく白く染めていく。

しばらくしてH.Iさんも起き出し、改めて二俣に向けて出発。
前調べ通り二俣で通行止めになっているので、柵の前で準備を整えて歩き始める。
猿倉荘の車道は途中まで除雪されていて、思っていたよりも早く進むことができた。
猿倉から先はノートレース。なめらかな白銀の世界。
交代番子で雪を掻き分け進む。
どうにか白馬尻までたどり着き、地図を確認して杓子尾根にとりつく。
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右側対岸にある斜面ではところどころ表層雪崩が起きている。下山に白馬大雪渓を使うつもりだったけどやめといた方が良さそうだなと思いつつ交代ごうたい黙々と雪を掻き分け続ける。
振り返れば白い雪面には自分たちのトレースだけ。あぁ気持ち良い。
H.Iさんがラッセル頑張ってる後ろで、こっそりエネルギー補給や立ち寝しているうちに日暮れが近づいてきたので、大きなダケカンバの下を整地してテントを張る。
夜ご飯を食べつつ、明日の予定を考え直す。
この先もラッセルが結構大変であろうことと、下降予定の大雪渓の雪崩が気になること、思いの外天気もイマイチということで、ここをベースキャンプにして杓子岳とあわよくば白馬岳までのピストンにすることを決め、就寝。

2日目

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ハーネスを履き、ヘルメットを被って準備を整えて出発する。
背負う物がビバーク装備と登攀具と行動食だけなので荷物は軽いが、目指す山頂は雲の中。
相変わらずのラッセルをこなし、雪のナイフリッジや短いけど少々斜度のある雪壁をこなしながらとにかく進む。
2400mを越えたあたりでガスに巻かれる。
完全にホワイトアウトというわけでは無いけれど、先が見えない。見えるのは足元から10m先までだ。
立ち止まり、振り返ってH.Iさんに
T.I「どうしましょう?」というと
H.I「え、なにが?」と。
T.I「だって見えないですよ、この先。」
H.I「そう?見えてるやん。」
T.I「え。。?そうですかねぇ。。。見えますかねぇ。。。H.Iさんって視力良いんですか?」
H.I「いや悪いで。」
T.I「そ、そうですか。どう進んだら良いのかわからないんですけれど。。。」
H.I「そうかなぁ。見えるけどな。辞めとくか?」
T.I「辞めたくは無いですけど、どうにも、見えてこないです。」
とウダウダ迷った結果、H.Iさんに先行してもらってついて行くことにする。

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不思議だ。H.Iさんはなんの迷いも無く進んで行く。僕に見えるのはH.Iさんの後ろ姿と足跡と、自分のすぐ右側にうっすら見える雪と背景の切れ目だけだ。
どうやって行き先を判断してるんだろうと思いながらついて行くとしばらくしてわかってきた。
ここは尾根上で、雪と背景の切れ目が見えていればそれに沿って歩くと進行方向を間違えることも無いし、時折見える岩の陰やひとつ隣の尾根の木の陰と、地形図を照らし合わせれば現在地もわかる。雪庇は張っていない。
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いくつか岩場を越えてから、先頭を代わってもらう。
この尾根を辿れば山頂に着く。
とわかっていれば先が見えなくても怖く無いことを実感しながら登ってるうちに杓子岳山頂に到着。
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展望は無く寒い。
記念撮影などして、白馬岳まで行くかどうかの相談も必要無いくらいに「早いとこ降りよう」と意見一致したので引き返す。
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帰りはトレースがあるので安心でしたが風向きの加減でところどころ消えていて、広くなった分岐地点で尾根を間違える。H.Iさんが間違えてることに気づいて、GPSを確認しつつ登り返して修正。油断して気が抜けてました。
まだ日の高いうちにBCに到着して、のんびり夕飯を食べたりして就寝。明日は降りるだけだ。

3日目

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超快晴。雲ひとつない。
タラレバ話ですが、今日がアタック日だったら最高だったろうなと話つつ激しく後ろ髪を引かれながら下山。
猿倉荘まで降りてきて時間もたっぷりあったので、雪上での確保(スタンディングアックスビレイ、腰がらみビレイ、カラビナと半マストでのビレイ、スノーバーの使い方など)を練習させてもらい、ぼちぼちで切り上げて、下山を続ける。
駐車場でがっちり握手して山行を終了しました。

神戸までの帰りは高速道路の事故等の通行止めの影響で時間がかかりましたが、「結構元気やから大丈夫やで。」と言われて一度もハンドルを握ることができず、僕のデッド・オア・アライブ・ドライビング・テクニックを披露することはできませんでした。

登攀具について

今回はダブルアックスと40m補助ロープ+スリングやカラビナを持って行きました。
杓子岳下降時に1箇所だけロープを出して確保しましたが、クライムダウンできるので、人によるとは思いますが無くても大丈夫だったようにも思います。
ダブルアックスは必携でした。僕は一本は縦走用で、もう一本はハンドルタイプのバイル(ペツルノミック)でしたが、問題ありませんでした。今後は雪稜ではこの組み合わせになりそうです。
アイスやミックス壁のクライミングが無い限り、2本ともハンドルタイプはイマイチかもしれません。

食事について

1日目夜:キーマカレー+ほうれん草とベーコン炒め
2日目朝:棒ラーメン+ウィンナー+乾燥野菜
2日目夜:おでん+うどん
3日目朝:袋ラーメン+ウィンナー+卵+乾燥野菜
にしました。
1日目のカレー、精魂込めて家で下準備をして現地で仕上げ調理して美味しく食べることができたのですが、振り返ってみると汁物の方が良いように思いました。水分を多く取れるメニューの方が良いなという感じです。油分の後片付けも少し面倒。おでんは食べた感もあるしすごく良かったです。
ラーメンは定番ですが、次回は具材に少し工夫した方が良いかなとも思いました。重さとの兼ね合いが難しいところですが、今回のようなBCからのピストンだったら食料の重さはある程度どうでも良いような気もします。

日焼け

日焼け止めクリームを貸してもらって初日に塗りましたが、今めっちゃくちゃ顔が痛いです。
何重にも塗った方が良さそうです。
頬と鼻と鼻の下が猛烈に痛い。


以上、山行報告でした。

今になって思いつきましたが、3日目に天気が良くなることはわかっていたので(杓子尾根は携帯電波入ったので天気図など見れました)、うんと早起きしてもう一度アタックしてみても良かったかもしれません。
トレースはつけてあるし暗くても迷わないのでスピーディーに山頂まで行けたかも、、、
とはいえ、残雪期の北ア・後立山は初めてで、勉強になることがたくさんあってすごく充実していたので思い残すことはありません。
またそのうち違うルートでの杓子岳や白馬岳からの景色を楽しもうと思います。
ひとつ天候に関して学んだのは、後立山は天気予報が良くても、完全に高気圧の勢力下になっていないと現地はそれほど良く無い天候ということです。

H.Iさん、計画段階から何から何まで相談にのって頂きありがとうございました!
またよろしくお願いします!!
あと、MT車の運転のイメトレもしておきます!
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