五竜岳 東面 GII中央稜 残雪期アルパインクライミング
- 山行日
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- 山域、ルート
- 五竜岳 東面 GII中央稜
- 活動内容
- 残雪期アルパインクライミング
- メンバー
- T.I、I(記)
五竜岳 東面 GII中央稜 残雪期アルパインクライミングの山行記録
杓子尾根からの帰り、今季もう一つ冬山をということで五竜岳を思いつく。
次のステップに良さそうなG0稜とGII中央稜の2本立てで計画する。
しかし、またもや後立山の荒れた天候に翻弄される山行となった。
5月1日(水)曇り時々雨
前回の杓子尾根と同じく低気圧の通過直後の入山となる。
テレキャビンは、往復1,800円也、5日間有効。
テレキャビン終点から地蔵の頭まではスキー場脇を歩く。
地蔵の頭付近から雨がポツリと降り出す。本降りでないのが不幸中の幸いか。
初めの急登を登り切ると、小遠見山まで雪庇の発達した稜線が続く。
連休前半のトレースが複数付いており、有難く辿らせて貰う。
視界はそれ程悪くないのだが、目指す五竜岳は霧の中だ。
小遠見山で休憩を挟み、一旦下って中遠見山へ登る。
中遠見山を過ぎると、大きく下って大遠見山へ登り返し。
寝不足おっさんの身体には堪える。
大遠見山で一息入れていると、一瞬晴れ間も出て、鹿島槍と五竜がドーンと見えた。
ここから傾斜も緩くなり、西遠見山までは何処でもテントが張れそうだ。
我々は、西遠見山手前の平坦地にあったテント跡をお宿とする。
雪ブロックを高く積み上げたが、気温が高く、直ぐにブロックが隙間だらけとなる。
じっくり時間をかけて再整地してテントを設営し、一服する。
翌日の登攀に備え、トレースを付けに空荷で出かける。
標高2,200mのラインをトラバースしていったのだが、左は結構な急斜面である。
暫くトラバースして、西遠見山から西南西に落ちる下降ラインに見当を付け、一気に100m程下る。
雪が適度に緩く、壺足で歩けるのでいいが、凍ったらバックステップで下りなければ怖い。
白岳沢を急いで横断し、G0稜へ登り返す。
登りのラッセルはT.I君にお任せだが、相変わらず追い付くのが大変だ。
トレースはG0稜取り付きまでとし、テン場まで戻る。
夕食は、T.I君が担ぎ上げてくれた鳥味噌鍋で温まる。
鍋に入れる野菜を小袋に丁寧に小分けして持参するのが如何にもT.I君らしい(笑)
低気圧は通過したが、明日、午前中まで天気が悪く、午後から回復傾向の予報。
前回と同じ傾向の天気図と予報に、ちょっとまずいなと思いつつ眠りに着く。
コースタイム:アルプス平駅0915~0945地蔵の頭~1100小遠見山~1145中遠見山~1230大遠見山~1335標高2,200m付近BC1600~1645G0稜取付~1715BC
平面距離:6.41km、累積標高:(登り)1,022m、(下り)362m
5月2日(木) 雪後晴れ(強風)
最近、どうも山での眠りが浅い。
夜半過ぎから、再び雨が降り出したと思ったらどうも様子が違う。
テントを流れ落ちる音から雪だとわかる。
0300に起きて外を確認すると、あられ雪が降り積もり、強風で視界も悪い。
塩ラーメンを食べて様子を伺うも、状況は変わらず沈殿ムードが漂う。
いつの間にか雪山は厳冬期シュラフでしか眠れないと言っていたT.I君が着の身着のままで爆睡している。
思わずツッコミたくなったが、我慢する(笑)
だが、しまいには2人とも再びシュラフを出して本気寝モードとなる。
うとうとしていると雪が止み太陽が顔を出したのだが、変わって猛烈な強風が吹き荒れる。
爆睡するT.I君を起こして様子を伺うが、風が強過ぎて外に出るのも億劫な気持ちになる。
再びうとうとしていると、いつの間にかヤル気モードに切り替わったT.I君が、登山道で五竜岳でも行こうと誘う。
全然!?乗り気じゃなかったが、T.I君の熱意に押され渋々テントを出る。
雪で埋まったトレースを辿り、西遠見山に登ると強風で身体がよろめく。
先行ラッセルするT.I君は、元気一杯で白岳への急登を登って行く。
トラバースルートの雪崩を警戒し、白岳へ直登して雪庇を越えると、爆風がお出迎え。
厳冬期なら、短時間で低体温症に陥れるレベルだ。
凍てつく強風に雪は飛ばされ、所々氷化した登山道をよろめきながら進む。
しかし爆風が吹き抜けていく標高2,550m付近でギブアップ。
斜面の雪質も安定してそうだったので、帰りは山荘からのトラバースルートを選択して下る。
夕食は、もはや定番となったおでんとうどんで満腹になるが、2人とも明日の天候が気がかり。
明日も風が強い予報であり、全く登れず敗退も頭をよぎる。
爆風が収まっていたら、何れかの稜に取り付こうということで就寝する。
コースタイム:BC1100~1115西遠見山~1230白岳~1250標高2,550m~1355西遠見山~1410BC
平面距離:3.56km、累積標高(登り)510m(下り)510m
5月3日(金) 晴れ(強風)
0230に目覚めると、星空が綺麗に見えるが爆風は変わらず、やっぱりダメかと諦めムードが漂う。
カレーラーメンを食べて暫く待機。
すると、心なしか、強風が吹く間隔が広がり、収まる傾向が見え始める。
登れるリミットタイムが近づき、決断するなら今しかない。
T.I君にGII中央稜の話を振ると、行きましょう!との回答。
これで自分の腹も決まる。
例え時間がかかっても、2人でGII中央稜を登り切り、今日中に無事、下山するのだ。
素早く準備してGII中央稜向け出発する。
一昨日付けたトレースはすっかり降雪で埋まり、例の急斜面は氷化していたので、バックステップで慎重に下る。
俄然ヤル気のT.I君は、ズンズン進んで行く。
更に2つの沢をトラバースして急斜面を登り、見当を付けていたAルンゼへ。
雪の切れ目に気休めのハーケンを打ち、T.I君リードで登攀開始。
雪壁に適度な間隔スノーバーを打ち込みながら、約40m登った所の灌木でビレイ。
次のピッチは這松帯を右上すると2人とも思い込んでいたのだが、早過ぎた。
更に雪壁を左上すべき所を下部の這松帯を右上してしまう。
25m程延ばし灌木でビレイするが、どうも這松帯が切れる気配がない。
次のピッチは更に藪が濃くなり、所々傾斜も強く、よくこんな所登ったなと思える悪場で消耗する。
ここで右に寄り過ぎたと判断し、T.I君が被った岩を気合いで乗り越え左にトラバースして行く。
声が届かないのとロープが重くなったので、一旦短くピッチを切り、更にトラバースを続ける。
リードするT.I君から稜線まで少しです!との声が入り、ホッとする。
雪庇下のT.I君を越えて、雪壁と這松帯のコーナーを右上して行くと強風が吹き抜ける稜線に出た。
這松帯を一登りし、雪の付いた緩傾斜地で漸く一息入れる。
続く急な這松帯を藪漕ぎしながら登るが、途中から嫌気が差し、左の雪壁にルートを取る。
T.I君が急斜面で用足しをしている間に、急な雪壁と這松帯を繋ぎ、浮石の多い岩稜帯に出る。
ここは右の岩稜帯にトレースがあったようだ。
これを抜けると左から広大な岩礫のザレ場が広がる左稜が合流する。
登るとガラガラと崩れるザレ場に気を遣いながら右上し、続く這松帯の急斜面を登る。
這松帯を越えて雪壁を辿ると待望のGIIの頭が見えた。
岩峰の右に付いた雪壁を登り、細いリッジを右にトラバースすると最後の約20mの雪壁へ。
左下は急な雪壁が切れ落ちていたが、時間も押しているので、ダブルアックスで這い上がる。
そして無事稜線へ到達し、T.I君とガッチリ握手する。
既に時刻は1200で、下山時間と体力を考えると自分は頂上を踏んでいる暇はなさそうだ。
まだまだ余裕のあるT.I君に頂上を勧め、自分はゆっくり下山を開始する。
GII直下の斜面トラバースは強風で氷化しており、バックステップで慎重に下る。
山荘前で一息ついていると、山頂からT.I君が下り始めるのが見え、あっという間に悪場を通過して近づいてくる。
トラバースを終えて急斜面を下っていると、いつの間にかT.I君に追い付かれる。
ついさっきまで、山荘前で休んでいるのが見えていたのに、走って下りてきたと言う。
予定では、テン場付近で追い付かれる筈だったのだが・・・やれやれだ。
登ってくる沢山の登山者と擦れ違いながら、ヨレヨレでテン場に戻る。
付近は一大テント村が出来上がっていた。
一息ついて、急いでテントを片付けるが既に時刻は1420。
どう頑張っても1600最終のテレキャビンに間に合いそうにないが、どうもT.I君は諦めていないようだ。
ズンズン先を歩き、おっさんに無言の圧力?をかけてくる・・・。
トボトボと小遠見山からの稜線を下っていると、先行するT.I君がスマホを見ながら嬉しそうな声で、最終1630ですから間に合いそうですよ!と叫ぶ。
お、この距離なら間に合うかも?と残り僅かな気力を振り絞って急いで下ると、嬉しいことに最終前に滑り込みセーフ。
ゴンドラに揺られ、楽チンであっという間に下界の駐車場へ到着。
帰りは近くの白馬竜神温泉で汗を流し、途中、梓川SAで夕食を食べ、眠い目を擦りながら運転して帰神。
今回は眠気に勝てず、やむを得ず?T.I君に帰りも運転していただきました(笑)
コースタイム:BC0435~0540GII中央稜Aルンゼ取付~0910GII中央稜上~1150GIIの頭横~1225五竜山荘~1320BC1420~1435大遠見山~1510中遠見山~1533小遠見山トラバース~1620アルプス平駅
平面距離:10.5km、累積標高(登り)990m、(下り)1,500m
大陸からの寒気が入った時の後立山の天候の厳しさは相変わらず。
完全敗退で虚しく下山となるところだった。
しかし、天候とタイミングを見極め、無事、目標であったGII中央稜を越えることができて本当に良かったと思う。
GII中央稜上は雪が殆どなく這松の藪が凄かったので、もう少し雪のある時期が適期だろう。
同日G0稜を登ったパーティの話では、同じく藪尾根だったとのこと。
T.I君にはルートミスと体力差で若干足を引っ張った形となり申し訳ないことをした。
T.I君ありがとう!また懲りずに次回もよろしく!
備忘画像です。今後の参考まで。