奥大日岳 南面 直登沢~称名川 山スキー
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- 奥大日岳南面直登沢~称名川
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- 三浦、友人
奥大日岳 南面 直登沢~称名川 山スキーの山行記録
奥大日岳の南面直登沢をスキー滑降した。
奥大日岳は、剱岳から剣御前と室堂乗越を経由して延びる大日尾根の最高峰であり、立山室堂周辺から峻厳な山容を望むことができる。奥大日岳の山スキーのルートとしては、2012年11月と2016年5月に遂行した東面からカガミ谷へと滑降し、室堂乗越に登り返すルートが有名である。一方、立山高原バスの通行する天狗平に向けて奥大日岳が見せる南面直登沢は、よく滑降されている東面にも引けを取らない峻厳さを備えており滑降意欲をそそらるものの、滑降記録は少ない。この南面直登沢から称名川の継続滑降記録、およびそのエスケープルートとして弥陀ヶ原~天狗平への登り返しルートが、酒井正裕著「山スキールートガイド105」(本の泉社、2013年) に掲載されている。今回の山行は、その奥大日岳の南面直登沢をスキー滑降し、称名川の対岸である天狗平まで登り返すルートである。
5月11日朝、室堂に入山し、まずはその日の宿のみくりが池温泉に不要な荷物をデポ。雷鳥沢キャンプ場でシールを装着し室堂乗越を目指した。室堂乗越付近で大日尾根に乗り上げ、尾根伝いにシール登行。斜度が増してきたらスキーを背負いアイゼン登行に切り替えた。大日尾根からは剱岳の西面、東大谷側の急峻な姿を望める。
P2511を越えて奥大日岳に近づくにつれて、滑降する南面が良く見えてくる。東面からカガミ谷へ滑降する際は雪庇の切れ目を狙ってドロップするため奥大日岳山頂まで登らない場合があるが、南面には雪庇がないためドロップ場所に気を使う必要はなく、奥大日岳の最高地点P2611付近のどこからでもドロップできる。P2611まで登行してから滑走準備に取り掛かった。P2611は比較的広く準備しやすい。大日岳へつながる優美な尾根を望むこともできる。
滑走準備を終え奥大日岳の南面直登沢のドロップポイントに立つ。切り立った両岸を持ち谷底に見える称名川は、その向こうに見える平坦な天狗平に彫りこまれたように見える。
登行時に左手に見えている大きな扇状の斜面なので間違える可能性は低いが、ドロップの際、P2611から若干称名川の上流側、つまり左側に方向をとって滑り出す必要がある。右側に向けて滑ると崖である。
雪質は素晴らしいザラメだった。扇状の斜面は長く適度に斜度があり滑りごたえがある。ノドまでは広く自由に滑降ラインをとれる。
ノドは狭くなるが特に問題なく通過できた。しかし、ノドを過ぎるとデブリと落石で急に滑りにくくなる。我慢の滑降を強いられるが、とにかく下っていけば称名川本流に合流することができる。雪はすべてつながっておりそのまま称名川のボトムに滑り込むことができた。称名川のボトムは広く、雪で完全に埋まっていた。
称名川に合流してから距離200m程度下流側に進むと、左手に天狗平へ登り返す尾根の取付きがある。大きくせり出した尾根で、その尾根の上流側から乗り上げるようにして登る。この尾根は重要で、大日尾根から確認した限りでは登り返せる尾根は一つしかない。他は崖になっていたり木のあるやせ尾根だったりして、登り返しには使えないだろう。斜度はあるがアイゼンとピッケルがあれば登れる。
200mほど登ると急に平坦になり、称名川を脱出し天狗平に到達したことがわかる。振り返ると先ほど滑降した迫力ある奥大日岳の南面が望める。
称名川を脱出してしまえば、あとは平坦で広い天狗平をゆったりとシール登行すればよい。この展望は素晴らしく、平坦な天狗平の奥に険しい立山連峰が望め、まるでヨーロッパアルプスの氷河を登っているようだ。そのまま立山高原バス道路の北側を登っていくと見えてくる立山高原ホテルで登行終了となる。道路の反対側の天狗平山荘で室堂行きのバスチケットを買って、立山高原バスで室堂に戻ることができる。
今回の奥大日岳の南面を称名川までスキー滑降し天狗平に登り返すルートは、素晴らしい展望と滑りごたえのある滑降が楽しめた。また、天狗平山荘から室堂への帰路に立山高原バスが利用できるため効率的であるが、他のパーティーに会うこともなく独り占めできるいいルートだと思う。