七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング

山行日
-
山域、ルート
大峰 七面山 南壁 Long Hope
活動内容
マルチピッチクライミング
メンバー
岩瀬た(記)、林

七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミングの山行記録

七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング 4E76C846-F7F8-4913-A763-43F1E3FF78E0
こんにちは、岩瀬た、です。
林さんと七面山南壁に2019年に引かれたフリーライン。LongHopeに行ってきました。

開拓が発表された時から気にはなっていて、2020年の8月始めに林さんとOKDさんが行くと言っていたのを聞いて僕もその計画に参加させてもらうことにした。
それぞれの仕事の都合等で2021年の6月初旬に行くことにしました。

予定が決まってからは怒涛のクライミング練習が始まった。
休みの日は道場近辺やその他いろんな岩場にクライミングに行き、仕事終わりはジムで汗を流し、家に帰ってきて寝る前に筋トレを行い、食事量を減らした。
その成果は秋のクライミングシーズンに入ると同時にすぐに出てきた。
最初の成果は、10月26日不動岩”タイコ5.11c”のRP。足掛け1年以上取り組んで、24トライ目でのRPだった。このルートではレストの大事さとパンプを感じても頭を落ち着かせることを学んだ。
それからは鳥取のN先輩のアドバイスを受けて、トップロープはやめて、テンションコールもしないようにトライすることを心がけた。
取り組み始めには「こんなん登れるかよ」と思えた”北山・林ルート5.11c”では細かな足置きと勇気を出して一手出すことを学び、”甌穴群5.11d”では苦手な急傾斜を体幹でいなし、年が変わる頃には”シーサイド5.12a”で核心部のクリップができずにランナウトの恐怖に耐えての足ガクガクRP、”撃墜王5.12a”ではヒールフックやトゥフック、自分のリーチを目一杯使ってテクニカルなクライミングでRP。
順調にRPグレードは上がって来た。しかしなかなかOSグレードは上がって来ない。5.12aが登れても5.11aやbを安定してOSできなければLongHopeにトライするには意味が無いとだんだん焦ってきて、5.11aや5.11bのルートを見つけてはトライをするけれど、どうしても2、3トライかかってしまう。結果が出ないことで段々嫌になってきてしまいトレーニングがおろそかになる。
3月頃にはついにフリークライミングへの集中力が切れてしまった。
5.11台オンサイトへの情熱が完全に尽きて、「グレードなんて関係無い!ワクワク楽しいエンジョイクライマー!」として岩登りをするようになった。
そのタイミングで、OKDさんが仕事の都合で一緒に行けなくなってしまう。
この計画はもう次の秋頃まで延期かなと思ったけれど、OKDさんは気にせず2人で行ってくれと言ってくれて、林さんと2人で行くことに変更。
たぶん、4月の時点でロングホープに情熱を燃やしていたのは3人の中で林さんだけだっただろう。林さんはRPグレードもOSグレードも伸ばし続けていた。
そして、僕の小出し小出しに出てくるネガティブな発言からフリークライミングに対するモチベーションが下がってることもわかってただろうけれど、それでも「行きましょ!」と言ってくれたことで僕も引くに引けなくなってしまった。
5月になってから「あぁマジでやばい。あと1ヶ月しか無い。雨降って中止ならんかな。。。」と思いながらクライミングを再開。早い梅雨入りで外岩になかなか行けず、ジムでロングホープのピッチグレードを踏まえたエンデュランストレーニングをしたりした。

だんだん日が近づいて来てあと1週間で本番。
予定してた3日間は雨予報。ホッとする傍ら、林さんの勢いに押されて僕にもわずかながらやる気が湧いて来てたので、雨なら下降路の偵察山行にしようということで計画を立てていく。
下降路の可能性は4パターンあった。
1、Rock & Snowの開拓記にある、レンゲ谷の下降。
2、地形図を見て、七面山西峰から西に伸びる尾根を降り、ガケ記号の隙間を縫って取付へ。
3、登山大系に書いてあり岡島会長も推してくれた、七面山東峰と大峰奥駈道の間のコルからルンゼを降りて岩壁基部に沿って取付へ。
4、同ルート懸垂下降。

下降路の選択次第でどういう行程を組むか変わってくる。
あいにく宇無ノ川林道がここ最近の雨の影響で途中で通行止めになってるらしいという噂を聞いて、七面山登山口からのアプローチにした。
初見での懸垂下降のリスクと単純に挑戦として面白く無いので4はやめた。
1、2、3の下降路の偵察できたら良いなと思ってるうちに、天気予報は好転し始めて、まさかの計画した3日間とも晴れ予報に変わってしまった。
おやおや、、、と思いつつ、LongHope登攀の計画をし直し、下降路をどうするか悩み続けてクライミング能力のあれやこれやを考える暇も無く、虚をつかれたかのような状態で挑戦することになりました。

前置きがかなり長くなりましたが、以下、山行記録です。


装備(登攀時)

  • ヘルメット 各自
  • ハーネス 各自
  • ビレイ機 各自
  • PAS 各自
  • 8.9mmx60mシングルロープ x1
  • 3mmx60m PEロープ x1(撤退時懸垂下降ロープ回収用)
  • クイックドロー短 x8
  • クイックドロー長 x6
  • アルパインドロー60cm x2
  • スリング60cm x2(予備)
  • カラビナ x2(予備)
  • スリング120cm x2(終了点用)
  • 環付カラビナ x6(終了点用)
  • プルージック
  • 食料合計500g
  • 水分合計3L
  • 応急処置セット(テーピング、ビニール手袋、塗り薬)
  • ロープナイフ 各自
  • アプローチシューズ 各自
  • ウィンドブレーカー 各自
  • ヘッドライト 各自
  • ツェルト x1
  • 16Lザック x1

行程概要

5/29 晴れ

9:30 駐車地出発
13:00 七面山東峰分岐
14:00 下降路偵察(パターン3)
14:40 偵察終了
15:40 楊枝ヶ宿小屋 泊

5/30 晴れ

3:00 起床
4:00 楊枝ヶ宿小屋 出発
4:35 下降点 到着
5:00 下降開始
5:40 取付到着
6:00 登攀開始
13:40 12P目終了 登攀終了
13:45 七面山山頂
14:20 下降点
15:40 楊枝ヶ宿小屋 泊

5/31 晴れ

6:00 起床
7:30 楊枝ヶ宿小屋 出発
11:20 駐車地 到着

行程詳細

まず、LongHopeの登攀の記録は林さんに任せようと思います。
結果としては、林さんが4P目の5.11-、僕が8P目の5.11-を登り、目標だったチームオンサイトを果たすことができ、まずまずな速さで登ることができたと思います。12P目の終了点についた時には嬉さとやっと着いたという安心感と足のつま先の痛みがごちゃ混ぜでした。
七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング 11C642D3-B050-49E9-A794-3DBB3A061DB7
登り始めるまでは5.11-のピッチは両方とも林さんに登ってもらおうと弱気でしたが、8P目に着く頃には、「この1年弱、今日のために練習してきたし(後半完全にダレたけど)、なんか今日はイケる!」と思っていつにも無く完全集中してトライできて、無事に終了点についた時にはやったぜと思いつつかなりホッとしました。どっちかというと僕の得意な感じのピッチだったと思います。
七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング AC47F37B-EC9B-46A6-9E50-47FC17ED40A5

僕はこの記録では下降路のことを書こうと思います。
七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング 7DAD00BE-6E08-4DCC-A404-254BB704B216
今回とった下降路は下降点からLongHope取付まで1時間もかからず、懸垂下降も無しで歩いていけました。
七面山東峰と大峰奥駈道の間のコルから発生する大きくロウト状になったザレ/ガレのルンゼ(古びたワイヤーが木にかかってる)を降りて、しばしそのまま降りて行く。
七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング 93095AE6-C52B-42B2-9F93-CC5D53A13BB5
そろそろ歩いて降りるには難しいかなとなったところで西方面を見ると七面山南壁の側壁が木々の間に見えるので、そのまま壁に向かってトラバース開始。
七面山 南壁 Long Hope マルチピッチクライミング 8906E3CD-7285-45F5-95ED-F172C33D21A8
小尾根を越えてルンゼを越えると壁に当たり、そのまま壁沿いにいくつか小尾根やルンゼの源頭を越えて歩くとLongHope取付に到着。
と言った感じです。岩壁からはあまり離れない方が良いと思います。
特に難所は無く、想像以上に地形図通りで拍子抜けですが、ガスってたり日没過ぎてたら言うまでもなくわかりにくいだろうなとは思います。今回は明るくなってから下降開始して、ガスも全く出てなかったので良い具合で取付に行くことができました。気をつけるとしたら下降のし過ぎくらいかなというところで、僕たちは時々GPSを見ながら歩いたので無駄無く行けたと思います。
白やピンクのテープもいくつかあった(途中から見失いましたが。)ので、少し安心感もあります。
登山大系は偉大です。


以上、山行記録でした。

前置きが長くなり過ぎて記録として重要であろう登攀の部分は書きませんでしたが、僕にとっては登攀中のことよりもここに来るまでにあった1年ほどの出来事の方が重要でした。
目標を立て、それに向かって進み、とうとう眼前に迫ってくる課題に向かって行く経験は、成功だろうが失敗だろうが、山だろうがなんだろうが、とっても良いなことだなぁと思います。
自分自身のことから始まって、一緒に行った林さんや今回来れなかったOKDさん、最近故障やらなんやらでクライミングぼちぼちなYさんや、この冬結構たくさん一緒に過ごしたKくんを含めた山岳会のメンバーや、一緒に山や岩や沢で過ごす友人、家族、僕がこうして何かに取り組むのを見てくれてる人、こんな経験をさせてくれる先人、とにかくいろんな人に、いつもありがとうございます、これからもまたどうぞよろしくお願いします。という気持ちになりました。

なんだか、充実して幸せです。明日からもまた仕事と私生活と頑張ろう!!