穂高岳 滝谷 遡行 滝谷ドーム中央稜 アルパインクライミング
- 山行日
- -
- 山域、ルート
- 穂高岳 滝谷ドーム中央稜
- 活動内容
- 遡行 アルパインクライミング
- メンバー
- 藤本 (L) (記)、谷口、吉澤
穂高岳 滝谷 遡行 滝谷ドーム中央稜 アルパインクライミングの山行記録
長年の念願が叶って
アルパインクライミングの聖地
穂高の滝谷へ行って来ました。
少し私の話をさせて頂きます。
若かりし頃に山を始め、我武者羅に登った20代。 それが災いして29才の時に厳冬期の北アルプスで1週間遭難して九死に一生を得たがその代償として両足先を凍傷で失った。
リハビリを終え落ち着いた頃にかねてから興味があったクライミングジムに足を運んだ。
当時は今ほどクライミングジムはなかったが偶然にも近くにOCSと言うジムがあり怖怖と伺うと心優しく迎え入れてくれた。(大阪市OCS社長林さん)
また私の話に興味を持って頂きクライミングシューズをプレゼントの上、知人に私の足に合わせてシューズを加工までして頂いた。(石川県KCウォール社長宮保さん)
お2人には心から感謝です!
それならばと毎日通い詰めたが歩く事も困難な為、なかなかに厳しく挫折した。。
30代は大人の事情で年に数回の山行程度で、40才を超えた頃から本格的に始動、数年前からはクライミングにも再トライ、成長は遅いものの少しづつ登れる様になっていくのが楽しい。
色々調べていくと「滝谷」もルートによっては可能性がある事に気づいた。勿論、強いメンバーとではあるが。
遠く昔に憧れ、絶対に行ける事はないと思っていたあの「クライミングの聖地、滝谷」に行く事を決意した。
行くからには下から詰め上がる、滝谷出合経由
それから綿密な計画が始まった。
以下、山行記録です。
装備 (主な物)
[共同]
ダブルロープ 8.5mm × 50m 2本
カム C4 #0.3-#3 1セット
ナッツ 1セット
ハーケン 4枚 (遡行時敗退用を含む)
アルヌン 180cm × 1 400cm × 1
[個人]
アックス (ハンマー型)
アイゼン (前爪付き)
アルヌン 60cm × 3 120cm × 2
荷物を3人で分担して極限まで軽量化をしても1人当たり約14kgになった。
事前のトレーニングで、10kgを歩荷してIV級程度のマルチは経験していたので未知ではなかったが本チャンはやはり別物。
行程概要
7/19
20:00 関西で合流
7/20
晴れ
1:00 高山のすき家で充電してから新穂高温泉
1:30 入山
4:30 滝谷出合
6:00 雄滝取付
16:30 雄滝落口 ※無念の敗退を決定
21:30 滝谷出合
23:00 就寝
7/21
晴れ、夕方雷雨
4:00 起床
6:00 行動開始
滝谷出合-槍平小屋-南岳新道-南岳小屋-大キレット-
16:00 北穂高小屋
21:00 就寝
7/22
晴れ、夕方雷雨
2:00 起床
3:30 行動開始
6:00 滝谷ドーム 中央稜取付
11:00 終了点
12:00 テン場
涸沢槍-涸沢岳-
15:00 穂高岳山荘
20:00 白出沢出合
22:00 新穂高温泉
行動詳細
7/20
滝谷出合までは順調に到着した。
出合から滝谷大滝が遠くに見えるが距離的には近い。歩いて直ぐに雪渓が現れた。雪渓と岩壁の間を
通ったり、雪渓の上に乗り上げたりしてアイゼンとアックスを要した。
念の為にスノーバーも用意していたが出番がなくてホッとした。
まもなくすると右に雄滝、左奥に雌滝が控えめに見えてくる。近づくにつれその雄姿に圧倒される。
雄滝と雌滝の間の尾根から取付く記録があり我々もその様にした。
1P、吉澤
下からは大きな階段状に見えるが意外に悪い。棚は外傾しており使える部分も小さい。ホールドも少ないし小石が堆積している。取付いて直ぐに安定してる?所でザックを下ろしクライミングシューズに履き変えた。35m程ロープを伸ばして適当な所でピッチを切った。トップバッターでリードするつもりだったが任せて正解だった。汗
2P、吉澤
少しスイッチが入ってきた?そのまま連続登攀
このピッチが超絶に悪かった。右にバンドがありそれを辿る。その先はバランシーなボルダー。マジか!!
時間をかなり要したがここも突破した。どうやって登ったの!?
※敗退時に分かった事だがここは右に行くのではなく、もう少し上に行くと薄い踏跡と言うかここが弱点と言う
ラインが見つかる。
ここから、この滝の最強点を突く恐ろしく長い一日が始まった。
3P、吉澤
完全に覚醒!ここも悪かった。。よう行くわ!
更に右にトラバース気味に行く。
4P、吉澤 言わずもがな (笑)
草付を右上して立木を通りすぎ奥の岩壁でピッチを切る。
写真なし
5P、吉澤 書く必要もないか?
記録では取付とここの写真しかなかったのでかなり悪いと想定していたが問題はなかった。
傾斜の寝たルンゼをトラバースして45m程ロープを伸ばし立木でピッチを切る。
6P、吉澤 やっぱり書いておこう
草付を右上するがここもかなり悪いし適当な懸垂支点が見当たらない。
一度全員が上がり細い木で元の所までトラバース気味に懸垂下降。
※ここはビレイポイントの立木からすぐ落口方向に向かうと小さなルンゼがありそこを超えて少し被った岩の下をトラバースすると綺麗に落口に出る。
写真なし
まだこの時点では滑滝上部まで日没までに行けると思い奮闘するが、時すでに16:00。
恐ろしく時間がかかり過ぎた。
この先何処まで詰めれるかは分からないがビバークをして3日間もあれば抜け切れる事をある程度は想像できた。しかし1日目の安全地帯はオセロ岩 (A~F沢が集まる所) かなり広い場所なので落石の危険が少ない。
そこまで辿り着けないのだけは分かる。
雄滝落口のすぐ上部に2段20m程の滝がありその上部の雪渓の状況が分からない。その遠くに滑滝が見える。
ヘッデンで前進して適泊地がなければ。。標高2,200m アルプスの冷たい雪解け水が飛び散り落石の危険性のある沢際での一夜は迷うまでもない。敗退を決定。
何ピッチ切ったのか分からないくらいヘッデンで懸垂下降。取付に着いてもまだ落石があり安全地帯ではない。
雪渓を超え滝谷出合に着いたのは21:30 疲れ過ぎて食欲もないがかきこむ。バーボンで自分にご褒美。
ほどなくして23:00にはゴーロ帯の上にマットと寝袋だけで就寝。
※20時間行動
7/21
4:00 起床 流石に寒い
※谷口さん満身創痍 1人で下山
温泉とビールで復活!?(笑)
翌日には早朝からトレランで笠ヶ岳までCT14時間の所を10時間で行ったとか。流石です!
※藤本、吉澤
別ルートから再アタック!
プランBに変更 (当初から計画)
やったります!
6:00 行動開始
滝谷出合-南岳新道-南岳小屋-大キレット-北穂高小屋
荷物の分担を3人でしていたがリタイアがでた為、ロープ他が増え17kgに
流石にこのコースはきつい。ペースが上がらない。昔の山屋は凄かったんだろうな。
16:00 北穂高小屋
※10時間行動
まだ滝谷登攀が終わってもないのに土産を大量に買い (笑) 宴会!
雷雨をやり過ごしテン場に移動
21:00 就寝
道中、ボルダーで遊ぶヨッシー♪
7/22
2:00 起床
素速く朝食をとり、ギアを装着
テントに荷物をデポして最小限のワンザックで。
3:30 行動開始
いよいよだ!
縦走路を通り、滝谷ドームを越え奥穂方面に最初のクサリ場を降りたコルがアプローチの入口
その先には薄い踏跡が右に伸びているが直ぐに見失う。少しクライムダウンをすると記録にはあるが、何処か分からない。しかもこんな高所でボルダーなのは嫌だ!(笑)
更にトラバースすると小さなケルンがあった。それを見て安心、感謝。
また少しクライムダウンをして当たりを手分けして探しても懸垂ポイントが見つからない。
と覗きこんだ先に発見!新しく信頼できる支点で50mロープ1本でギリでバンドに到着。その先はしっかりとした踏跡がついたバンドをトラバースすれば直ぐに取付に着く。
そこはこの上なく贅沢な場所!縦走路からは見る事のできない岩の要塞に包まれたド迫力の滝谷!
眼下には、前々日に格闘した雄滝、本来目指していたその先の滑滝、オセロ岩、C沢、スノーコル (泊地)、第4尾根、ツルム、、、念入りに計画してきた全容が模型の様に見える。
至福の時間
ん~マンダム ♪
6:00 滝谷ドーム中央稜 登攀開始
1P、吉澤 IV 核心ピッチ (2人の感想)
凹角の中のクラックからチムニーを抜ける
コンディションは申し分ない。フォローで登ったがチムニーでザックが挟まり身動きがとれない。奥に良いスタンスとホールドがあるがスタックして身体を振れない。汗
ここは練習してきた1/3システムで荷揚げをするべきだった。
2P、藤本 V
リッジからカンテ左のスラブを登りテラスへ
朝一はやはり緊張する。しかも初リード(笑)
上部のスラブが悪く痺れた。
一番の絶景のピッチ。当然余裕などない。
ビレイ点にて、まだ終わってないよ~(笑)
3P、吉澤I
ガレた岩場のリッジ
難なく通過
4P、藤本 IV
凹角上部はチムニー
上部チムニーのチョックストーン越えが悪かった。ホールドがあるか偵察して戻り、迷ってる間によれてきたが何とか突破する事ができた。汗
5P、吉澤 V
右の凹角に入り出口のハングを右に抜ける
最終ピッチ
ビクトリーロード
雄たけびを上げたのは言うまでもない
それにしても錆びて朽ちたハーケンを見てのクライミングは恐怖だわ!
11:00 終了点
余韻に浸ってる暇などはない。
12:30 テン場
急いでデポした荷物を纏めて下山。下山とは言っても 滝谷ドーム~涸沢槍~涸沢岳 の激しく長いアップダウンがある。
15:00 穂高岳山荘
白出沢出合を目指す
2020年の地震の影響により通行不能となってはいるが、通ってる記録もある。穂高岳山荘の親切なスタッフに状況を教えて頂き自己責任のもと降りる事を決定。
始め浮石はさほど多くもなかったので大げさな注意喚起だと思った。が途中から終始浮石だらけになり、雪渓も現れた。その時に猛烈な雷雨がやってきて厳しさ極限!白出沢に流れ込む支流の鉱石沢の崩壊が凄まじく、そこに張られていたFIXロープを使い懸垂下降した。懸垂してる自分のロープが堆積してる石をひっかけ落石を落とす。恐ろしい。その先には小滝が連続する。巻道も崩壊している。一つ目の滝は倒木で懸垂下降。次は軟鉄のハーケンで残置支点を作り懸垂下降。重太郎橋など跡形もない。渡渉ポイントを心配していたが当たり一面はゴーロ帯の為、何処でも渡る事ができた。また前日と直前の物凄い夕立による増水の影響もなかった。
何とか難所を日没までに突破。後は下山のみ。
20:00 白出沢出合
22:00 新穂高温泉
※18.5時間行動
谷口さん、お待たせしました。_(._.)_
以上、山行記録でした。
あくまで個人的意見ですので、この記事を参考にされる方は自己の責任において行動をお願いします。
色々と考えさせられる事もありアルパインの未熟さを感じたが、滝谷出合からの情報も沢山収集できた。
準備をしっかりとして必ずリベンジします!
今回同行して頂いたメンバー、本当にありがとうございました。