錫杖岳 前衛壁 3ルンゼ アルパインアイスクライミング
- 山行日
- 山域、ルート
- 錫杖岳 前衛壁 3ルンゼ
- 活動内容
- アルパインアイスクライミング
- メンバー
- 吉澤 (L)、藤本 (記)
錫杖岳 前衛壁 3ルンゼ アルパインアイスクライミングの山行記録
タフな山行でした
丁度20年前
私にとっては特別な日
北アルプスで遭難をして気力体力共に限界
1週間後に救出して頂いて九死に一生を得た日
その代償に両足全ての指を凍傷で失った
「2月1日」
ある意味、第二の誕生日と言えるこの日を毎年感慨深く迎える
その日に今年は錫杖岳へと向かった
天気は決して良くはない
良いシーズンはあっと言う間に終わる
しかし過去の失敗、不安が脳裏をよぎる
悪いイメージは失敗を招くし実力を発揮できない
昼過ぎまでは可能性はある
揺れ動く気持ちを奮い立たせ決行!
以下、山行記録です
装備 (主な物)
[共同]
ダブルロープ 8.5mm × 2本
アイススクリュー
21cm × 2本 (使用無し)
17cm × 4本 (使用無し)
13cm × 5本
10cm × 2本
カム C4 #3.0
リンクカム #2.0、 #1.0、#0.75、#0.5
ナッツ
ハーケン × 2 (使用無し)
アブミ × 2
[個人]
ビーコン
ゾンデ
ショベル
行動詳細
3:15 槍見温泉
天気が崩れるのが早まり、
前衛壁を遠望して拝むだけになる可能性が高い
そう思いながら出発
ここ一週間まとまった降雪はなく気温も低かったのでクリヤ谷の登山道は膝丈ほどのトレースが残っており快適
穴滝上部の渡渉ポイントも軽くジャンプして突破
笠ヶ岳へと伸びるトレースはあるが錫杖沢方面へは途絶える
3月に登られてる記録が多いのでまだ時期が早いのかと不安になる
GPSでは出合に着いているが全くルートが分からない
雪に埋まり雪原となった出合の対岸に樹林の薄い雪壁がある
錫杖沢はそこしか考えられない
ここからは膝ほどのラッセルだが表層下の雪は締まっていて登りやすい
確かこの辺りは落差のある小滝
ズボっと踏み抜くのが怖い
7:00 錫杖沢の岩舎 到着
何かヤバい物が見えてしまった
一息入れ登攀ギアを装着、1ザックに
やりますか!
樹林帯より沢筋の方が登り易かったのでそのまま錫杖沢を直上して詰める
1ルンゼ ヤバし...
でも最高に格好いい!
技術を付けていつかは絶対にやりたい
頑張ろう
ここが3ルンゼなのか?
遠目に見れば顕著な3ルンゼだが近づくと見た目が違って分からない
喉の様な所が2カ所 雪がなく繋がってない
怖そう
もう少し右に回り込んで偵察する事に
見えてきた!
間違いない
当たりも晴れてきた!
穂高が綺麗
8:00
1P IV- 40m
(氷壁となったルンゼから氷へ)
氷壁ではなく雪原
フリーで凹角まで登る
ツボ足がしんどい
2P III 30m
(ルンゼ凹角の氷を登る)
藤本リード
フリーで行けそうだったのでそのまま直上
だが凹角の雪は詰まってなく踏み抜いた
その下は身長ほどの空洞
迷わずにロープを出した
その先の小滝も見た目は簡単そうだがベルグラとズボズボ雪
バランスが悪く足が決まらなくて痺れた
3P IV 40m
(ルンゼ右側の氷を登る)
吉澤リード
かなり苦戦していて時間もおしてきていた
ビレイしてる側は寒さ半端ない
チリ雪崩が四方から頻発
時には大きな氷の塊が飛んでくる
敗退も視野に入れるがヨッシーは粘って突破!
かなり痺れたであろうが前進してくれた、流石
4P III+ 30m
(氷化したチムニーのトンネルを抜ける)
藤本リード
ベルグラな上、チムニーが狭くアックスを振り辛い
奥のクラックに カム#3.0 を決め
右のアックスはクラックにジャミング
左のアックスはベルグラにわずかにかけ、
足はスタンスの悪い状態でチムニーの抜け口へと進む
いつ落ちてもおかしくない
チムニーを抜けると左側が切り立ったとこに出た。
怖い
5P IV A0 30m
(ルンゼ右壁から左か中央の壁を登る)
吉澤リード
アブミをかけチョックストーンを越えようとするが抜け口が悪そう
フォローでギアを回収するのも一苦労
一瞬口にくわえたカラビナが唇に張りつき直ぐに剥がすと
口の中に血の味が広がった
6P IV A0 30m
(チョックストーンのあるチムニーの左壁を人工で越える)
藤本リード
左壁の変形したリングボルトにかけられた切れかけのスリングにアブミをかけ身体を上げる
更に2本目のアブミをかけて上がる
その先はチョックストーンの上にアックスを振り下ろすが効かない
ズボズボ雪
痺れながらクラックの氷を叩き割りカム#3.0を決めるが信頼できない
しかし上がるしかない
左足で側壁を蹴り這う様にして乗っ越す
その時、上からは猛烈な風が吹きつけ目を開けていられなかった
今回の為に自作したアブミ
少し改良が必要だな
7P II 50m
(雪壁化したガレ場と草付 ブッシュを使ってビレイ)
藤本リード
6Pと継続
雪原を詰める
立木でビレイ
3ルンゼのコル 到着
やったぜ!
ハイタッチ
コルの向こう側、間近にグラスホッパーが見えているが氷が繋がってない
偵察をするにも完全に時間がおしていたので写真を撮るのみ
いつかは北東壁を回り込みチャレンジしたい
急いで下降の準備に入る
安全をみて4ピッチで取付まで懸垂下降
支点はまずまず信頼できる
16:00 取付
岩舎にデポした荷物を回収した時点で日没
辺りは風雪が強くなってきた
後はGPSのログを頼りに安定のヘッデン下山
19:00 槍見温泉 駐車地 到着
16時間行動
今回の山行で特に感じた事は、本や記録は参考程度にするべき
事前にどこまで現場の状況を想像してあらゆる準備ができるか
まだまだ修行が必要
またまた記憶に残る最高の1本になりました
ヨッシーありがとう
※ 注意
本文は記憶が曖昧な為、ご注意ください
以上