大峰山脈 明星ヶ岳 三ッ嵓谷 無名滝 明ケノ明星 アルパインアイスクライミング
- 山行日
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- 山域、ルート
- 大峰山脈 明星ヶ岳 三ッ嵓谷 無名滝 明ケノ明星
- 活動内容
- アルパインアイスクライミング
- メンバー
- 岩瀬た、OKD
大峰山脈 明星ヶ岳 三ッ嵓谷 無名滝 明ケノ明星 アルパインアイスクライミングの山行記録
こんにちは、岩瀬た、です。
先週に引き続き大峰にアイスをしに行ってきました。
当初は戸台川に遠征する予定でしたが、インスタグラムでいろんな滝をドローンで空撮した映像を投稿している人をたまたま見つけて、その中に大峰の明星ヶ岳近くにぶっとく凍った綺麗な滝の映像があり、かなり興味深かったので撮影者に連絡を取って場所を教えてもらい、OKDさんと行ってみることにしました。
以下、山行記録です。
装備(主なもの)
60mダブルロープ
スクリュー14本
行程概要
2/11 晴のち小雪
6:30 湯ノ又登山口 出発
11:30 1500m近辺 テント設営
12:30 偵察 出発
13:45 前衛滝 左岸ルンゼの巻道探索
16:00 偵察終了折り返し
16:45 テント 泊
2/12 晴
4:30 起床
5:30 出発
6:00 前衛滝 準備
6:30 前衛滝クライミング開始
8:00 無名滝取付
8:30 無名滝クライミング開始
9:20 1ピッチ目終了 2ピッチ目開始
11:00 2ピッチ目終了 3ピッチ目開始
11:30 3ピッチ目終了 詰め開始
13:00 中尾
14:30 テント 撤収
15:30 下山開始
18:50 湯ノ又登山口 下山完了
行程詳細
2/11
湯ノ又登山口近くの広いスペースにて駐車。準備して出発。
幕営装備とギアの重みを両肩に、「滝どんなんでしょうねぇ、登れたら良いですねぇ」と話ながら中尾を歩く。
(あまりの暑さに上裸になったら快適だった。人の少ない山でオススメ。)
地形図の1325mピークのあたりで、樹林の隙間に小さく青く光る滝が見えた。目的の滝だ。嬉しい。
鎖場を抜けて標高1500mくらいの平坦地にてテントを立て、しばし休憩したのちにギアを身につけて偵察に出発。
トラバースしながら三ッ嵓谷の沢床に降りる。
踏み抜きに気をつけつつラッセルし、15m程の前衛滝に到着。
GPSで見ると前衛滝手前の左岸から切れ込むルンゼに目的の滝があるようだったのでルンゼを詰める。
しばしラッセルで進むと、踏み抜きまくってどうしようも無くなったので左岸に乗り上げ、そのまま登るも一向に滝が出てくる気配がない。今一度GPSで確認すると、どうやら間違ったルンゼだったようで、もう一つ尾根を越えたところが目的の滝があるルンゼだった。
懸垂下降で降りながらトラバースできる場所を探してみたけれど見つからず、前衛滝まで降りてくる。
良い時間になっていたので、明日は前衛滝のクライミングからスタートということにして、ギアをデポしてテントに戻る。
目的の滝を拝むことはできなかったけれど、前衛滝を巻くという選択肢を消すことができて進む道がハッキリしたのでまぁ良いだろう。
あたたかい我が家で鍋と酒で慎ましく宴会をして、明日のクライミングを想像しながら眠りにつく。
2/12
4:30に起床。のんびり準備して、出発。
昨日つけたトレースのおかげで30分ほどで前衛滝に着く。
ギアを身につけて、いよいよクライミング開始。
僕のリードでスタート。よっしゃ頑張るぞ。
前衛滝、傾斜のゆるいところを選んで登るが氷結が悪く思いの外ボールドな登攀になる。足元の氷ごと崩れてしまいそうなゆるさ。
20mほどロープを伸ばしたところでようやくしっかりした氷にスクリューを打つことができてひと安心。傾斜の緩い右に寄りたかったけれど水の流れる音がハッキリ聞こえたのでやめておく。
氷結の良い小さなバーチカルを抜けて笹藪に突っ込み、滝上に抜ける。左岸からルンゼが切れ込んでいる。
立木までズボズボのラッセルをこなしてビレイ。
蛇行したラインどりをしたのでロープスケール50mほどだった。
(ビレイ点からフォローのOKDさん)
ビレイ点からルンゼを詰めれば目的の滝に着くはず。
腰ほどのラッセルを、えっちらおっちら交代番子で続けてほどなくしてドーンと青白く輝く大滝が見えた。
うおー!すごい!!でかい!綺麗!!!
空撮の写真を何回も見てから来たけれど、下から見上げるとまた違った迫力がある。
しっかり凍っていて嬉しい。これはイケるとテンションも上がる。
ひと通り眺めて、ルート取りを確認。
2段になっていて、1段目は真ん中の段状になった緩傾斜にラインを決める。目測20mほど。
2段目は右の方は緩傾斜になっていそうだけれど岩が透けて見えて氷が薄そうなのでやめとく。
正面のバーチカルが少し凹角になっていて、しっかり凍っているし、ところどころ段があるように見えたのでそのラインでいくことにする。これも目測20mくらい。もう少しあるかも。
一服していよいよクライミング開始。
1ピッチ目 OKD
段状の氷を登る。打ち込むアックスはカツーンカツーンとどうやら結構氷が硬そう。結氷良く嬉しいが疲れそうだ。
しっかりスクリューを決めてスムースに1段目をこなす。好きにラインが引ける感じで、ビレイしながら羨ましくなる。
2段目の直下でビレイ。
フォローで快適に登る。うーん気持ち良い!
2ピッチ目 岩瀬た
ビレイ点では霧のような水が降っていた。水滴にもならないくらいの薄い水。こういう水でこんなに大きく凍るのかと感心する。
さて、ぶっ立つ2ピッチ目スタート。
焦らずゆっくりパンプしないように良い体勢を保つ努力をする。
順調に高度をあげるがやはり結構腕にくる。凹角と思ってたけどうまく足を効かせられず、10mほど登って「あぁやべえなぁ」と3回思って、思わずフィフィに手を伸ばす。がしかし、フィフィをつけてるスリングが短くてアックスに届かない。しまった!
とりあえず身体を上げて早くアックステンションしないとと思って足を上げると、やっぱりなんだかいける気がしたので粘ることにした。フィフィのお世話にならずに済んでオンサイトトライ継続。
じわじわと上げていき、もう少しでバーチカル終わりそうなところで左手のアックスを微妙な角度で打ち込み、右手のアックスを振ると、打ち込んだ場所が大きく剥がれてボディブローのように身体に直撃した。
「う、落ちる。」
と思ったけれど、どうにか左手のアックスと右足で耐えることができていて、まだ落ちていない。必死で右手をもう一度叩き込む。落ち着いて真っ直ぐに振りかぶって、叩き込む。綺麗に刺さる。ホッ。落ちてない。まだ落ちてないぞ!
2、3歩上がってようやく段になっているところに上がって一安心。右手フリフリ左手フリフリでゆっくり休んで、あともう少し。
もうワンプッシュ登ってようやく緩傾斜に乗っこす。
その先は階段状の快適なビクトリーロードだ。やっほー!
階段を登っていくと、真ん中に雪のルンゼを引いて両側に綺麗なシャンデリアを下げた庭園のような場所に出た。明るい陽が当たって綺麗。
まだロープ長があったのでそのままその庭園を突っ切っても良かったけれど、せっかくなので松の木でピッチを切ってOKDさんを迎える。
3ピッチ目 岩瀬た
松の木のビレイ点でゆっくり景色を楽しんだあと、庭園にかかるシャンデリアをよいしょっと乗っこしてルンゼを詰める。
大きな立木でビレイ。
OKDさんも登ってきて、無名滝のクライミング終了!ハイタッチ!
記念撮影だ。
その後、懸垂下降しても良かったけれど、せっかくなのでグルっと回ってテントまで歩いて戻ることにする。
がしかし、この選択はなかなかのミスだった。
中尾までのトラバースはしんどいながらも知れてるラッセルで、中尾の尾根に移った時には景色もよく最高の気分でしたが、その後の下降が踏み抜きだらけの藪漕ぎのラッセルになってめちゃめちゃしんどかった。登攀よりもしんどかったんじゃなかろうか。
(ここまでは良かったがこの後が地獄だった。)
僕は100回くらい踏み抜いた挙句心が折れかけて胸まで埋まってボーッとしてしまいましたが、OKDさんが沢屋魂を燃やして「こっちの方向や!」と藪漕ぎのラッセルをリードしてくれてどうにかテントに戻ってこれました。
しんどい時のOKDさんはやはり漢である。
テントを片付けつつゆっくり休憩して、また重い荷物を背負ってゆっくり駐車地まで。
下山完了。
以上、山行記録でした。
何人かの大峰の沢や関西のアイスに詳しい方にお聞きすると、どうやらこの滝はまだ誰も登ってないらしく、今回が初登のようです。
僕もOKDさんも初めての初登なので、記念に今回登ったルートに恥ずかしくも僭越ながら名前をつけることにしました。
明ケノ明星
にしようと思います。
滝直下から明星ヶ岳まで方角的に東に向かって登ることになるので、この名前としました。
また、明けの明星は縁起が良いものでもあるようなので、良い名前だと思います。
もし、「すでに登ってる人がいるよ」という情報がありましたら、教えてください。
明ケノ明星のルート図と経路の概念図を記録として残します。
(PDFデータやより詳細な位置図など必要な方は連絡いただければお送りします)
積雪状況によりますが、健脚なパーティーなら登山口を早出して滝を登った後に懸垂下降すればワンデイでのトライも可能かもしれません。
今年はよく冷えたので前衛滝15mも凍ってましたが、ここは結氷状況をよく見る必要があると思います。左岸の巻きは厳しいと思いますが、右岸は確認していません。
メインの滝は、めちゃくちゃ難しいわけでは無く、結氷もしっかりしていて広くていくつもラインが引けるので、下段は緩傾斜からバーチカル、上段はバーチカルからそれ以上に見えるところもあるのでいろんなクライマーが楽しめると思います。
中尾でテントを張って、1泊2日もしくは2泊3日などで登るのがのんびりできて楽しいんじゃないでしょうか。
終わりに、この滝を登るきっかけを作っていただいたTakuさんに大きく感謝します。ありがとうございます!!
兵庫県の人だそうで、いつかご飯でもいければ良いなと思います!いろんな氷瀑の話を聞かせてほしいです。