大山北壁 天狗沢 冬期アルパインクライミング
- 山行日
- 山域、ルート
- 大山北壁 天狗沢
- 活動内容
- 冬期アルパインクライミング
- メンバー
- 吉澤 (L)、藤本 (記)
大山北壁 天狗沢 冬期アルパインクライミングの山行記録
前回、天候悪化で止む無く撤退
登攀準備を整え
大屏風岩の喉を過ぎた最初の滝 (F1)を見上げた頃
辺りの視界が急激に消えてきた
視界10m、目前の大岩壁も見えない
「雪崩の巣」の様な地形がこのルート
兆候を観察する事ができないまま登るのはリスクが
高すぎると判断
あれから二週間
毎日、降雪、気温、風、
何度となく天気予報を睨み狙える条件をうかがった
山スキーであれば、この様な所をハイクアップする
事は通常しない
滑走前にピットチェック (弱層テスト) やスキー
カット、危険地帯では止まらず一気に通過して
尾根に少し乗り上げ雪崩のラインを避けて停止
するのが鉄則
だが天狗沢の登攀ルートはそのど真ん中
雪崩れば逃げ場がない
その為、氷結、雪の結合等 かなり慎重に観察して
予測できる限りの状況を想定して準備をした
状況は決して良くはない
前回と同じ様になる不安を抱え行く事を決意
以下、山行記録です
装備 (主な物)
[共同]
シングルロープ 8.6mm × 1本
アイススクリュー
21mm × 2本
17mm × 3本
13mm × 3本
10mm × 2本
スノーバー × 2本
ハーケン × 2枚
アルパインピトン × 2本
行動詳細
6:40 大山寺橋 駐車場
元谷の大堰堤まで先行者と共にラッセル
風貌からしてもオーラがを放っていた
「弥山尾根西稜」を登ると言う強そうな山屋と別れ
お互いの健闘を祈った
初めて大山北壁の全貌が見えた
時折、青空が見え期待に胸を膨らませる
左奥に見えるのが大屏風岩と目的地の「天狗沢」
その時、得体の知れない恐怖を感じた...
喉の向こうに見えるのが
左側から「元谷沢」と「天狗沢」
けっこう斜度があり立ってるではないか
と何度となくぼやいた...
相方に共同装備を少し多めに持ってもらってるので
ラッセルを交代してもらう訳にはいかない
しかしどこまでもラッセルは続く...
階段をつくり一歩づつ上がるが
なかなか前進しない
うへ~
9:30 F1取付
平均50~60度の壁が続く
途中で詰まる事はないと判断してそのままF1に
取付いた
やばいと思いロープを出してもらおうとしたが
次のアックスを振り下ろし効いた感覚があった
瞬間に心が落ち着いた
ワンミスで間違いなく 300m下の
谷底まで落ちる
容易にその絵が想像できてしまう
怖いが確実に進めばロープを出す必要はないと判断
遠目にF2が見えたと思い突き進んだが見えた感覚の
遥か近くのハイマツ帯だった
ガスガスの中、もはや遠近感も平衡感覚もない
とりあえず目の前のハイマツを乗り越える
だが向こう側が見えない
切れ落ちてるのか
手探りで乗越していく
アイススクリューを使うには氷結が甘く薄い所が
多い、スノーバーにしても表面が微かにパック
された雪で中は柔らかく深さもない、ハーケン、
アルパインピトンを使うにも適当な所を探すのに
時間がかかりすぎる
確実なプロテクションが取れない
アックスを振り下ろす腕が疲れてきた
12:30 稜線到着
稜線なのか
細心の注意を払わないと雪庇の反対側に落ちる
疲れているが予断を許さない
恐ろしい...
疲れた...
一度左足を踏み抜いて胸で止まった
足ブラ... 汗
うかつに動けない
雪に圧をかけずに立ち上がる
剣ヶ峰から弥山小屋まではこの様な稜線が続く
雪庇は一定方向ではなく視界のない中、どちらを
進むかを慎重に選びナイフリッジ直下をトラバース
するか、時には馬乗りになり後ろ向きに進むか
偽尾根にも騙され疲労困憊
次回はシートラで山スキーにくるぞ!
板の軽量化は必須だな
今日も良き一日