大山北壁弥山尾根東稜 残雪期アルパインクライミング、行者谷 山スキー
- 山行日
- 山域、ルート
- 大山北壁弥山尾根東稜 行者谷
- 活動内容
- 残雪期アルパインクライミング、山スキー
- メンバー
- L藤本、三浦
大山北壁弥山尾根東稜 残雪期アルパインクライミング、行者谷 山スキーの山行記録
大山 (伯耆大山) は鳥取県の1729mの山で中国地方の最高峰である。西側は富士山のような優美な円錐形の山容を持ち、伯耆富士とも呼ばれる。一方で大山北壁は荒々しい岩稜と岩壁をまとい、北アルプスのような峻厳な姿を見せる。深田久弥は著書の「日本百名山」の中で北壁を、剃刀の刃のように鋭い頂稜からなだれ落ちている、と表現している。そのような大山北壁には多くのクライミングルートと山スキールートが引かれており、西日本を代表するクライミングと山スキーのエリアの一つになっている。
弥山尾根は元谷から弥山の三角点に向けて北壁をダイレクトに突き上げる尾根である。東稜と西稜がありどちらも代表的な冬季入門のバリエーションルートである。
今回は大山北壁弥山尾根東稜を登攀し、行者谷をスキー滑降した。
3月に天狗沢を登った藤本さんから声をかけていただき計画が始まった。ロープを使って登攀しスキー滑降したいという互いの趣向が一致し、大山弥山尾根を登攀し、状況次第で弥山沢か別山沢をスキー滑降する計画とした。とはいえ、私はクライミングに数年のブランクがあったので、まずは藤本さんや会員の方々に付き合っていただき、岩場やクライミングジムで練習して山行に備えた。
大山寺橋駐車場に深夜到着後、仮眠してから朝5時行動開始。まずは大神山神社まで雪のない参道をスキーブーツで歩く。大神山神社の登山口からは雪があったのでシールで登行したが、木道や階段があったり雪が切れていたりして、結局元谷までほとんど板を担いで歩いた。
堰堤を越えて元谷に出ると、大山北壁が見えた。雪はかなり減っていて雪稜を想像していた弥山尾根にも雪はほとんど付いていなかった。弥山沢も落石に覆われていて滑降不可。他は先行に1パーティのみ、4月の大山北壁は賞味期限切れか。
元谷上部まで登って登攀準備をしていると、県警ヘリを含む2~3機のヘリが大山北側を旋回し始めた。そのうちの1機が近づいてきて、乗員2名がこちらに向けて腕でバツ印をして別山沢方面を指差している。別山沢が見える尾根に登ってみると、ホイストを出して収容しているようだ。後で知ったが2名が滑落事故で亡くなったそうだ。ご冥福をお祈りします。
尾根から別山沢をみると雪が割れており、滑降できそうもない。さっきのバツ印は別山沢が滑降できないという意味か。ということで、滑降目標は行者谷とした。
気を取り直して弥山尾根取り付きに近づいて行くと、落石が次々と飛んできた。雪のクラックに隠れて落石をやり過ごし、スキをみて急いで取り付きの雪壁を登った。
1P 藤本
ロープを出して灌木で支点をとって登攀開始。ロープがいっぱい伸びたところでビレイ解除の声。雪の切れ目のキワを登っていった。
2P 三浦
そのままリード。雪の上端まで登ると2~3mの崖が出現した。右岸の傾斜は緩いが、藪地獄。崖か藪か迷ったが、藤本さんのオススメに従いなんとか藪を抜けた。
3P 藤本、4P 三浦
雪のついた小さい沢状の地形。灌木で支点を取りつつ進む。喉が渇いたので雪を食べてやり過ごす。
5P 藤本
浮石で覆われた雪のない尾根まで。
6P 藤本
尾根を乗っこして左側の雪のある沢へ。支点が無さそうということでリードを代わってもらう。グサグサの雪で登りにくい。
7P 三浦から藤本
そのまま沢を登るトレースがうっすらある。しかし沢の左岸の尾根に乗り上げた方がその後の傾斜はゆるいようだ。とはいえ乗り上げるまでの傾斜はキツく酷い藪なので、短いピッチをきってリード交代。フォローで登るが藪地獄で傾斜も立っていた。枝を掴みながらなんとか身体を持ち上げて進む。ここが一番きつかった。
大山北壁弥山尾根東稜 7P 右側の尾根の乗り上げの藪が核心。
8P 三浦
2~3mで藪を抜けたと思ったら甘かった。急登と藪は続く。ロープ残り10mまで藪が続いた後、やっと藪を抜けて開けた尾根に出た。稜線も近くに見える。ピナクルで支点を取る。
大山北壁弥山尾根東稜 8P終了点。やっと藪を抜けた。
9P 藤本
浮石と藪のやせ尾根を抜けて、小さい雪のコルまで。やっとゴールが見えてきた。
10P 三浦、11P 藤本
フリーでも行ける雪の斜面だが一応スタカットで。ロープいっぱい伸ばしてついに夏道に出た。グータッチして互いの健闘を讃え、ロープを解除した。
夏道を歩いて、弥山山頂避難小屋で喉の渇きと空腹を癒しつつ滑走準備をした。雪が切れているので木道を七合目あたりまで歩いて下ってから板を装着した。
稜線に出て夏道を弥山山頂避難小屋まで歩く。
行者谷はカリカリ。横滑りと斜滑降でなんとか高度を落としていく。元谷まで降りると雪は緩んでいた。ギリギリ日没前に堰堤まで降りることができた。
堰堤からザックに板を固定してヘッデンつけて、歩いて19時駐車場着に下山。
所感
- ロープを使って登攀する山スキーは以前からやりたいと思っていたが、機会に恵まれずできずにいた。今回は強力なリーダーに恵まれ実現できた。山岳会ならではの山行だと思う。
- 4月の大山北壁は賞味期限切れのようだ。
- カメラを忘れてしまったため写真がほとんど撮れなかった。