鹿島槍ヶ岳 天狗尾根 山スキー
- 山行日
- 山域、ルート
- 鹿島槍ヶ岳 天狗尾根
- 活動内容
- 山スキー、偵察
- メンバー
- 長谷川
鹿島槍ヶ岳 北壁 偵察の山行記録
4/9-10に鹿島槍ヶ岳北壁の偵察に行ってきました.
本当はカクネ里のスキー滑降もしたかったのですが,シートラーゲンで天狗尾根を登るのが辛すぎて,泣く泣く1600m地点にデポ.
その後の天狗尾根上や北壁主稜までのトラバースも,終始気温が高く陽光からも逃げられなく,雪がグサグサで厳しい山行でした.
以下に報告の詳細を示します.
なお,主目的はアプローチの偵察であるため,ルート上の注意点等も可能な限り示そうと思います.
4/9
10:30 大谷原(1070m) 入山
12:00 アラ沢出合(1143m)
14:00 スキーデポ(1600m)
15:30 第一クーロワール取付き(2120m)
16:30 第二クーロワール取付き(2270m)
17:30 天狗の鼻(2326m)
4/10
05:15 起床
06:00 出発
09:00 蝶型ルンゼ手前 引き返し開始
10:00 天狗鼻 到着
11:30 下山開始
15:30 アラ沢出合
17:15 大谷原駐車場 下山
4/9 無風快晴
入山は7:30の予定であったが,色々あって3時間も遅れてしまった.
具体的には間違って大冷沢を,西俣出合まで行ってしまって引き返した.
初っ端から盛大にミスってしまった.
言い訳をすると,正規と思われる登山道の入り口が土砂崩れで道とは思えない状態になっていた(にしても方角で気付け…).
駐車場まで戻ると,丁度天狗尾根から下山したと言う男女2人に出会った.
雪の状態が悪く,第一クーロワールで引き返してきたとのこと.それでも2パーティとすれ違ったらしい.
時間的にも雪の状態的にも天狗鼻まで行けないかもしれないが,取りあえず入山した.
アラ沢出合までは計3回の徒渉を要した.
どの徒渉も水かさは深くても脛の下部くらいで,足場を選べば踝くらい.
徒渉用の袋は持参しているが,スキーブーツであるのでそのまま徒渉した.
アラ沢出合手前の堰からは結構悪い巻き道となる.登山道ではあるが,雪があると沢に落ちる方向に傾斜が出てくる.シートラーゲンなのでバランスも悪く,灌木を掴みながら慎重に通過した.
アラ沢はデブリだらけ,所々穴が開いており,冷たい水流が覗いていた.
尾根に取り付こうと言うところでスマホが無いことに気が付いた.結局アラ沢出合に落ちていたから良かったが,これによって更に1時間ほどロスしてしまう.
取付きからは急な登りが300mほど続く.ここで体力を大幅に削られた.スキーを担いでいたのはもちろんだが,割りと速いペースで登ってしまったため,枝尾根に合流した頃にはバテバテであった.
枝尾根からはスキーを履ける傾斜になったが,雪が腐ってきて斜登行をしていると表層ごと落ちそうになる.これは危険と判断して,シートラーゲンを継続することにした.当然ペースは上がらない.これでは天狗鼻に行けないし,天狗鼻まで行けないならスキーがあっても滑るところがない.ということで1600m地点でデポすることにした.折角歩荷したのに…
そんなこんなでなんとか第一クーロワールに到着.
見た感じ意外と行けそう.
確かに雪壁の真ん中は割れていて2段になっているが,厚みはあるし地面とも接しているから落ちないだろう.ダガーポジション,ノーロープで登った.1ヶ所だけ立った雪壁がある.
第二クーロワールは200mほど.
上部に先行パーティを捉えた.
最初は第一クーロワール手前で敗退かもと思っていたが,ここまで来たら天狗鼻まで行ける.
ここも1ヶ所だけ灌木を掴んで登る悪い箇所があるのみで,ノーロープで登った.
計画の1時間遅れほどで天狗鼻に着いた.丁度日の入りくらい.山ではこの薄明の中に居るのが最も感動的な時間だと思う.
浸りたいが,疲労であまりそれどころでなかった.先行者にトレースの礼を言い,ツェルトを張って腰を下ろす.アラ沢出合からのハイペースな登りが効いてる.天狗鼻までは長いので,ゆっくり行って体力を温存した方が良いな.
疲労で胃が食糧を受け付けなかったが,山では食事も仕事の一つと自分に言い聞かせ,無理矢理捩じ込んだ.
天狗鼻には北壁に行くパーティと,北俣本谷を滑るパーティがいた.ここまでスキーを担いできたパーティがいるとは驚きであった.見たところ,自分のスキーの半分くらいの重さだし...と心の中で思いつつも,若干悔しい.
4/10 無風快晴
目が覚めると丁度日の出であった.昨日と同様雪がグサグサだったら偵察も諦めて引き返そうと思っていたが,少し締まっている.これならいける.手早く準備を済ませて出発した.北壁のパーティは起床時にはもういなかった.
主稜へのアプローチは2つある.1つは天狗鼻からトラバースで行くルート,もう1つはくの字雪渓からカクネ里に降りて,登り返すルート.今回は最短距離に思える前者で行くことにした.
トラバース開始点はトレースがあったが,すぐ消えた.永遠と雪壁に蹴りと正拳突きを繰り返す.
トラバースを開始すると,カクネ里に北壁のパーティが見えた.一旦降りるルートを選んだようだ.結論としては,一旦降りる方が良いと思う.トラバースは時間も短縮できないし,精神的にも疲れるし,ルートファインディングも求められる.これは行く前から判明していたことだが,実際にやってみると結構しんどく,降りた方がよかったな...という気分になる.
北壁と言いつつ実際は北東に向いているので,朝から日が直撃する.アプローチは日の出前からした方が良い.
トラバース中から,谷に雪崩の音が何度も鳴り響いて,その度に進退を悩まされた.
雪が次第に緩んできて緊張感も増してくる.ステップは崩れないか?アックスは効いているか?落ちたらどうなるか?雪崩はないか?一歩ずつ自問自答しながら進んだ.
2時間ほどトラバースすると,蝶型ルンゼ手前で一段と急な雪壁が出てきた.雪も腐ってきているので,ロープを出して通過した.ゲレンデ以外でのロープソロは初めてであったので緊張したが,まあまあ上手くできたと思う.しかし,終了点で9時とタイムアップ.引き返すこととした.
氷のリボンも,岩に隠れて見ることはできなかった.
天狗鼻まで,カクネ里に降りることも考えたが,くの字雪渓の登りがしんどいし,雪崩が怖いのでトラバースを引き返すことにした.
トレースはしっかりあるがアイゼンに雪が団子になって来るので気は抜けなかった.
天狗鼻に着いてから,幕営装備の撤収と朝飯を摂った.北壁のパーティのコールが聞こえる.どうやら上手いこと登っているようだ.
パートナーがいても取り付くのを躊躇う条件だが,それでも登っている人がいると悔しくなってくる.
来シーズンこそは…!!
下山開始.
雪がグサグサで,尾根も細いので不安定な歩きとなる.ストックは必携だと思った.
ダガーポジションも必要な箇所があるので,ストックとアックスを持ち替えながら下る.ウィペットがあれば楽だと思う.
下山中も谷には雪崩の音が鳴り続け,足元も崩しながらの歩行となり気が抜けなかった.
第二クーロワールはクライムダウンで,第一クーロワールは一回の懸垂下降,アラ沢出合手前で三回の懸垂下降を要した.アラ沢出合に降りる斜面は,スキーを背負っていたこともあるが,単純に非常に滑りやすい状態であった.
以上です.
ミスが多く,偵察も満足にできず,端から見れば情けない山行だと思うので,正直記録を書くのが恥ずかしいです.
しかし,慣れないソロで鹿島槍でもが気苦しんだことで気付かされる点も多く,個人的には非常に実りの多い山行でした.
1人だとなんか,複数人の時とはリズムが違う感じがしますね.普段しないミスをしたり,どんどんペースが上がってしまいます.