大峰 北山川 田岡谷 沢登り
- 山行日
- 山域、ルート
- 大峰 北山川 田岡谷
- 活動内容
- 沢登り
- メンバー
- OKD(L)、岩瀬た(SL)、SMB(記録)
- 天気
- 曇りときどき雨
- 装備
- ロープ50mx1登攀用、30mx1予備、カム1セット、ハーケン
- 行程
- 7:10 駐車地 7:15 入渓 8:10 二俣 13:40 脱渓 16:30 下山 17:30 駐車地
大峰 北山川 田岡谷 沢登りの山行記録
前置き
こんにちは。
菊池敏之さんの『日本50名ルート』という本を購入し、就寝前に1ルートずつ読み進めていますが、興奮して寝付きが悪く、最近寝不足気味のSMBです。
今回は、OKDさん、岩瀬た君と私の3人で田岡谷で沢登りをしてきました。
そもそも本山行の目的は、OKDさんと岩瀬君の二人による、ザクロ谷に向けたトレーニング。
そして、この度自分もザクロ谷の3人目のメンバーとして参加させていただく事になりました。
昨年7月27日、谷口委員長に初めて沢登りに連れて行ってもらい、鬱蒼とした木々に囲まれ、動物の白骨体が放置された入渓点に立った瞬間、直感で「これは自分の好きなやつだ」と分かりました。
それから会のメンバーと色々な沢を遡行する内に「もっと険しく、困難な沢に行きたい。全力を出し切れる厳しい沢を完全遡行して、大きな達成感が欲しい」と考えるようになったのです。
以前からザクロ谷の計画が上がっているのは知っていましたが、自分には経験や技術が足りないので、時期尚早と考え、手を挙げることを躊躇っていました。
しかし「今回参加しなければ、もう一生行けずに後悔するかもしれない。その日までに出来うる限りのトレーニングをして参加しよう」と決心し、田岡谷への道中、二人に参加表明したところ、快諾していただきました。
そして今回の田岡谷は、私がザクロに参加するだけの力量があるか否かの試金石になると考え、気を引き締めて臨みました。
前置きが長くてすみません。
以下、山行記録です。
入渓
入渓して直ぐに息が上がる。
昨日から気が張ってほとんど睡眠を取れていないので、おそらく寝不足が原因か。あと、菊池さんの本。
それに道中、コーヒーを1.5リットル以上飲んだので動悸がする。
そんな中、最初の9m滝が現れる。
ここは左手の壁をロープを出して登る。
OKDさんは以前、田岡谷を遡行した経験がある為、今回はビレイに徹するそう。
岩瀬君とは事前にジャンケンで勝った方が(特にハイライトは)リードしようと決めていて、今日はグーしか勝たんと決めていた自分が勝つ…勝っちゃったよ。
もたもたしている時間はない。息が上がり動悸もする!頭が朦朧として、なんだか体に力も……入らないっ!!と仮設5号機に乗った某パイロットの様なことを考えていたら、ロープが絡まってごちゃごちゃに…すみません。
気を引き締めてクライムオン!!
(腕の一本くれてやるっ!!)
雨の影響か、そもそも滑りの強い沢なのか、先日の蛇谷とは打って変わってフリクションが効かない。
それでもなんとか慎重に登りビレイ解除。
ネガティブなコンディションでもキッチリリードする強いメンタルが必要だなと感じた。
小滝
田岡谷は程良く歯応えがあり、シャワークライム出来る小滝がいくつかあったので、ここで一挙に紹介!!
この滑滝、普段は登れるらしいのだけれど、今日はヌメヌメで無理な日。行けるとこまで登って、無理ってなれば釜にジャンプ!!
トイ状を快適にシャワークライム。こういうのが一番好きです。
すだれ状、スタンスもホールドも豊富だが、落口の乗越が意外に大変。
こういうのも大好きです。
25m滝の高巻きトラバース
連瀑帯の中の25m滝を左岸巻き、落口へ向かう為のトラバースが悪そうだったので、ロープを出してSMBがリード。
想定より悪く、いつ落ちるとも知れない灌木やフレークに少しずつ荷重をかけながら進んでいく。
より安全なラインを、と考えるも裏目に出て、プロテクションの位置も悪くロープが上下左右ジグザグに、まるでスパイダーマンが通った後の蜘蛛の糸の様…
それでもなんとか重たいロープを引っ張りながら無事落口まで到着、離れた場所にある立木で支点を取りビレイ解除。
次は岩瀬君がアッセンダー登攀。
正直、岩瀬君は落ちない、難なくこなしてくれる、という思い込みがあり油断していた。
しかし落ちた。
岩瀬君自身初めてだと言っていたが、自分もセカンドビレイ中の墜落は初めて。
その瞬間、リード中にフォローの事を考えたライン取りを怠っていた事に気付き、ショックと申し訳なさで一杯に。
幸い怪我もなく、終了点まで登ってきて、その後はOKDさんが回収しながら登ってビレイ解除。
以前、谷口さんから泳ぎからの離陸パートでリードする際、離陸箇所で可能ならプロテクションを取るようにと言われた事を思い出す。
言われた当初はよく意味が分からなかったが、フォローの泳力、自分との体格差を考慮して支点をとっていく、細やかな心配りが必要なのだという事に気付いた。
しかしその教訓を活かすことができなかった。
よくよく思い返してみれば、行ける確信はあったものの一箇所デッドポイントムーブだったな。
アルパインでそんな事続けていたら危ないので自制しよう。
突っ込まない、クライムダウンの判断もリスクコントロールの上で必要な事。
反省点の多いピッチだった。
分岐瀑20m
今回のハイライト、分岐瀑20m。
先人は、小滝に対して直瀑等と名付けるのは大仰であり、遠慮して直滝と呼んだ。
自分の中で、〇〇瀑の境界は
①高さ20m以上
②派手である
と決めている。
今回の滝は遠慮なく分岐瀑と言えると思う。
今日はグーしか勝たんと思っている自分は、ジャンケンの結果、連勝。
しかし勝って嬉しいはずなのに…あまり嬉しくない。なんでチョキしか出さんの…
寝不足とかコンディションが悪いとか色々ネガティブな要素が頭を過ぎる。
「もし自分が負けてたらホッとしてたと思うわ」と岩瀬君に正直な気持ちを打ち明けてしまう。
「無理そうなら自分がリードしますよ。あ、でも、もしここをリードで行けたらザクロ谷行きはOKですよー!」と発破をかけてくれる。
再び滝を見上げる。
ラインは明確。
滝身右から取り付き左上、落口から数メートル下の水線を水圧に耐えて突破、立木で終了点をとる。
上部は水流で磨かれてフリクションもホールドも豊富そう、下部の滑りが核心だな、でもしっかりプロテクションもとれそうだ。
よし、いける。
OKDさんにビレイをお願いし、荷上げ用のロープも取り付けて空身で取り付く。
スタンスもホールドも豊富。
立木とカムで支点を取り高度を上げていく。
そしてそのまま左上し水流の中へ突っ込む。
激しい水流の中でキャメロットの2番をキメている時のこと。
突然心が穏やかになり『このままもう少し、この中に留まりたい』という気持ちが生まれた。
しばらく滝に打たれていたが、二人を心配させてはいけないと思い、手を振って大丈夫だよアピール。
それから水流を突破し、いい感じの立木で終了点を作る。ビレイ解除。
滝行で心に安らぎを得たからか、爆発するような喜びは無かったけれど、二人からのナイスの声がとても誇らしかった。
荷上げの作業も初めて経験した。
荷上げ用のロープはビレイループじゃなくて、ギアラックのカラビナなどに付けて、上がった方が、上手い具合にロープを捌けて良かったのかもしれない。
何事も経験だな。
2段30m
見た目優しそうで、実は最後の落口が意外に悪い2段30m滝を岩瀬君リードで自分がビレイ。
立木で支点を取り、滝身上部右を果敢に攻める。
すると岩瀬君から落石のコール。
人の頭サイズの石が唸るような音を立てて私とOKDさんの側方へ、ザックを吹き飛ばし、ロープの上でワンバウンドして通過。
瞬間、ロープ切れてないかなと確認したところ、幸い末端5m部分一箇所だけ綺麗にブチ切られていた。
真っ先にロープの確認をしたのも、以前フリーで同じ様な経験をしたから。
山における経験というのは本当に大事だなと感じた。
その後、落ち口を抜けると昼を過ぎ、脱渓予定時刻に。
遡行を打ち切り左岸の尾根に上がり尾根伝いに下る。
脱渓
ロープが切れて、
うっかりOKDさんのモチヅキハーケンを残置してしまい(すみません、バガブーで許して下さい)
ザックに大穴が空き(最初から空いてたよ)
首の後ろをアブとブヨとヒルに咬まれ、
水分塩分不足で全身の筋肉が攣り、
軽い熱中症、
色々ボロボロで満身創痍の中、ドンピシャで入渓ポイントに帰還。
周囲を鬱蒼とした木々に囲まれ、冷たい沢の水で熱中症寸前の身体を冷やす、至福のとき…初めて入った小黒谷の入渓点に似ているなと思う。
あの時と比べてどれだけ成長出来たか分からないけれど、なんとかザクロ谷に挑戦する為の切符を手に入れる事が出来たかもしれない。
下山完了。
まとめ
今回、OKDさんは登攀でフォローに徹された。
しかし登攀以外でも未熟な自分に対しフォローを頂き、沢での経験に基づいた様々なアドバイスも頂いた。
岩瀬君からはアルパインでの経験に基づいたアドバイスを受け、自分の未熟さを痛感。
これからより一層トレーニングに励み、あと2回くらい変身して遥かにパワーが増した状態で本番に臨みたいと思う。
ザクロ谷を完全遡行の暁には、OKDさんと私は勝鬨をあげるので、岩瀬君は法螺貝を吹いて下さい。
以上、山行記録でした。おしまい。