甲斐駒ヶ岳 黄蓮谷右俣 アルパインアイスクライミング

山行日
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山域、ルート
甲斐駒ヶ岳 黄蓮谷右俣
活動内容
アルパインアイスクライミング
メンバー
藤本 ソロ (記)

ソロ・アルパインアイスに行ってきた

初めての南アルプス「甲斐駒ヶ岳」の山頂を目指し
日本を代表するクラシックルート「黄蓮谷右俣」に
行ってきた

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このルートは数々の山行記録がある上に、山岳会の
強い先輩が数年前にソロで行った記録もあるので
情報は豊富だ
この界隈では入門ルートと言われているが、
アプローチ、登攀、下降までの行程が長く冬山の
総合力が必要
またアイスのバリエーションルートなので状況が
変わればグレードは一変する
現に先輩が行った時は薄氷、ラッセル、藪漕ぎで
とてつもなく時間を要し想像を絶する山行となった
その様な事になりたくはないが覚悟はしている

今回は今年一年を振返りながら一人旅でと思い
立った
年中、余裕のない忙しい山行ばかりだったので
楽しみだ

12月27日

入山一日前に出発
夜の帳があけるのを見ながら車を走らせる♫
中央道に入り時折雪を纏った山が見えてくる
無言でグーサインをしている自分
テンションが上がってきた

諏訪湖を過ぎドーン! 八ヶ岳
こんな時間に見た事がない (笑)

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振返れば今回のターゲット?!
なんかヤバそうなやつ...

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まだ明日からの事だと現実逃避して旅を楽しむ

小淵沢「月み亭」のカレーうどん、激旨で
リピート決定! 全てに拘りと愛情を感じた

未明スタートなのでアプローチを迷わない為と
年末なので駐車場が混雑しないかを偵察に行ったが
ガラガラで心配なし
8台のみ (80台収容)

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その後「尾白の湯 べるが」でゆっくり一年の
疲れを癒した
露天は関西で言えば有馬温泉の金泉みたいな
濁り湯♨
八ヶ岳の借景がまた格別!

「道の駅 はくしゅう」麦酒でフル充電して
早目に就寝 18:00

以下、山行記録です

甲斐駒ヶ岳 黄蓮谷右俣 アルパインアイスクライミングの山行記録

装備 (主な登攀具)

※ ソロシステム

ザック (60L)
アックス × 2
ハーネス (シット・チェスト)
ダブルロープ 8.5mm × 50m
アイススクリュー
22cm × 1本  
17cm × 5本   
13cm × 2本
ハーケン × 1
クイックドロー × 3
アルパインヌンチャク (60cm × 2、120cm × 2)
スリング 120cm
マイクロトラクション
フィフィ
捨縄

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行動詳細

12月28日

6:00 竹宇駒ケ岳神社 (770m) 入山

黒戸尾根を登り小一時間で雪が出てきたので
チェーンアイゼンを装着
かなり頑張って軽量化したつもりだがザックが重い
(行動着以外で21kg)

刃渡りの難所で景色が開ける

「富士山」と「北岳?」

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振返れば「八ヶ岳」がかっこ良い!

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黒戸山の巻道を進むと見えてしまった...

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10:00 五合目小屋跡 幕営地 (2,150m) 到着 
(CT: 5時間40・獲得標高差: + 1,380m)

ゆっくりとアプローチを満喫するつもりがいつもの
癖で足速になってしまった
お陰で腰がやられてかなり痛い
年末なので場所取り合戦を心配していたが
七丈小屋泊の人を含めても一番のりで到着

テントを設営して翌日の「黄蓮谷」までの下降路を
偵察に行く
往復3時間を計画していたが、100m程マーキング
しながら標高を下げ先の見通しがつきそうだった
ので引き返して2時間のお釣り

10数人程、通り過ぎて行ったが誰一人
クライミング目的の様な人はいなかった
テン場には誰も来ない、貸し切りだ
気温は氷点下のはずなのにポカポカ陽気で暑い
くらい、気がつけば2時間程も熟睡していた

実はこの山行、ソロである事には間違いはないが
少しだけ違う
同じ山岳会の仲間に事情があって転戦して
同ルートを同日に行く事になって計画が被った
その別パーティのリーダーには私のソロ計画を邪魔
しないのでと凄く気を遣って配慮して頂いた
いや、、、自分だけの山でもないし近くに
いるだけでも精神的には安心、また想定される
激ラッセルも別パーティであっても協力するもの
なのでソロには間違いない

その別パーティの到着予定時刻 16:00 を過ぎても
来ない、予定変更して来ないのか?
期待が不安になった瞬間に声が聞こえてきた!
少し会話を交え、夕飯は済ませていたので先に
就寝につく 18:00
テントの中で再確認をした

「あくまでもソロ...」

12月29日

3:00 起床 (-12℃)

風が強く厳しく冷え込んだ

ラッセルが厳しく頂上までは抜けられない
奥千丈ノ滝上部までは行けてもそこで敗退して
懸垂で同下降
六丈ノ沢をツボ足で数百メートルも上がるのかと
思うと恐ろしい
それに加えアプローチで痛めた腰が寝がえりを
うつ度に激痛がして目が覚めた

とは言え着々と準備をして戦闘モードに

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5:00 出発

五合目小屋跡の直下のコルから延びる五丈ノ沢を
辿り黄蓮谷 (千丈ノ滝上) を目指す
冬期 2,000mを超す標高のアルプスの山中
暗闇の道なき沢を数百メートルも降りるのは
気持ちの良いものではない

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数日前と思われる薄いトレースがあり助かった
獣の踏跡ではなさそうだ
大きな落差のある数滝も上手く左岸巻きで降りて
いた
釜へは細い枝を掴み下降する緊張の場面もあった

6:00 黄蓮谷出合 (1,720m)
(獲得標高差: - 430m)
(甲斐駒ヶ岳山頂まで + 1,250m)

予定より1時間も早い

所々凍ってなくて水が流れているのが見える
靴を濡らすと即終了するので注意して渡渉
小滝を左右から巻き進む

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6:30 坊主ノ滝 (50m) 取付

何度も記録で見た滝だ
着いた時はまだ暗闇の中でヘッデンに照らされる
門番の様

2ピッチを想定していたが中段までは右から
上がれそうだったので急いでソロシステムの準備を
して取付いた
クライミングあるある
中段に乗越してから悪かった...
大きなスラブにベルグラすらなく雪が20cm程
積もってるだけアックスがかからない
呼吸を整え、小さくても良いので信頼できる
岩の粒を探した
一瞬痺れたが少し左にトラバースすると雪が
締まっており一安心
振り返ると下に別パーティ(仲間) が追い付いてきた
少し水の流れる音がするがしっかり氷結した部位に
スクリューで支点を取り、ロープソロの体勢に
何度も練習してきたので迷いはなかった

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ランナーを1ヶ所取り、5m程の立った壁を
乗り換えた
ソロと言えどロープがあればフリーより遥かに安心

※ 左のロープは別パーティ

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傾斜が緩んできた上部に立木があったが50mロープ
では届かない
仕方がない、別パーティと混雑するが隣に支点を
構築した
ロープ半分の位置でFIXさせてスクリューを回収
しながら懸垂下降
残置したザックを担ぎマイクロトラクションで
再登攀 ソロの場合、1往復半を要する
先も長いしなるべくならロープを出したくはない
良く考えれば2本で懸垂しなくてもバーチカルでは
なかったので立木までロープを伸ばして1本で懸垂
しても良かった

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15m滝、その先の二俣を越して右俣に入る
(写真なし)

200m程ナメ滝が続くそうだが埋もれていた

8:30 奥千丈ノ滝 (1,980m) 取付

記録で読んだ階段状と言うほど優しくは
なかったが各々フリーで抜けて行く
但し滑り台の様なこの滝では滑落は許されない

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 ↓ 東北大学山岳部出身
   (最近までバリバリの現役) ※ 会外
   この人かなり強そう!
  
もう一人も同山岳部出身
※ もっとヤバい人
 
   非常食に氷砂糖を1kgも持って行くとか (笑)
   400 kcal / 100g
   4,000 kcal / 1kg (1袋)

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※ イメージ

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↓ ※ 奥千丈ノ滝の上部? 何処だろう
自然の造形美が美しい

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全行程を通して薄いトレースがついており雪は
締まっていた足首から時には膝下のツボ足
恐れていた激ラッセルはなかった

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奥ノ滝 手前の小滝
グレード感としたら奥千丈ノ滝同等
別パーティが少しトラブルを起こして渋滞して
いたので私は左の雪稜へ乗り上げたが坊主ノ滝
下段と同じでアックスがかからず気合で抜けた

ソロはギアが重たいので (言い訳) なかなか追い
付けなかったが
ここで漸く先頭に立ちトレースを少しだけ伸ばす
事ができた
若者には勝てん...

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奥ノ滝 (2P)

下段は左から
テラス?からが1P目だが遠目に見ても氷が薄そう
しかも傾斜は寝ているがレストできそうな所がない
上部2P目は左寄りが弱点ぽく見えた
ソロで行くには危険すぎるので右岸巻きで
ハイ松帯の尾根に乗り上げた

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落口のレベルまで上がったが再度本流の沢筋を
詰め上がる理由もないのでそのまま300m程左上
する事にした
稜線はかなりの強風に見えたので地獄装備に
チェンジ
程なくして一般登山道に出た

13:30 (2,870m)

視界はなく寒いが安全地帯
自然と笑みがこぼれる

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頂上まであと100mアップ
ここまで来て爆風で頂上に立てなければ悔いが残る
急げ

14:00 甲斐駒ヶ岳 (2,967m) 山頂

ついに達成!

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下山は可愛い雷鳥が先導してくれた

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15:30 七丈小屋

各々、ご褒美の缶ビールを買った
800 円 / 500 ml 値打ちがある!
ピオレドール賞を受賞した花谷さんとも話ができた

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16:30 五合目小屋跡 幕営地

まさかこの時期に頂上まで抜けてこの時間に
ベースに戻って来れるとは想像もしていなかった
時間が想定できたなら奥ノ滝を攻めても良かった
かな、今だから言えるけど (笑)
悶絶しながら1時間あたり標高100m上げて最長で
20時間行動をも覚悟していたのは事実
この結果は甲斐駒ヶ岳の神様が微笑んでくれたのと
何よりも仲間が近くにいた事につきる

そしてソロらしく一人テントで祝杯をあげた
「ククリ」と言うラム酒
これは先日までネパール遠征に行き
アマダブラムに登頂した信頼できる友人であり
ビレイパートナーからのお土産
達成できたらこの瞬間に開けようと持ってきた
ガラス瓶なので少々重たかったけど (笑)
最高に美味いよ!
ありがとう

19:00 就寝

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12月30日

5:00  起床 (-12℃)
    夜中はかなりの爆風
7:30  下山開始
10:30 竹宇駒ケ岳神社 (駐車地) 到着

※ 別パーティが1時間後にテン場を出発する時、
丁度あの「山野井さん」がアイスクライミングに
来られたらしい!
すれ違ったはずなのに気付かなかった...
あ~お会いしたかったな

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2022年も良い締めくくりとなった

※ 注意
本文は記憶が曖昧な為、ご注意ください

以上