伯耆大山北壁 中ノ沢 アルパインクライミング
- 山行日
- -
- 山域、ルート
- 伯耆大山北壁 中ノ沢
- 活動内容
- アルパインクライミング
- メンバー
- 藤本 (L) (記)、竹原
大山 中ノ沢
「伯耆大山北壁 中ノ沢」に行ってきた
大山へはアイスクライミング、雪稜登攀、
山スキーで数回来た事があるが考えると
夏山は登山道を含め登った事がなかった
それならば北壁から頂上を目指したいと考えた
著書「日本登山大系」には以下の様に書かれている
北壁の各沢は一部を除いてはガレと岩屑を固めた
脆い壁で構成されている
夏季は落石とホールドの崩壊が著しい
その中でも「中ノ沢」は比較的に岩盤が固い
だが一般的に夏の北壁は登攀対象とされていない
以下、山行記録です
伯耆大山北壁 中ノ沢 アルパインクライミングの山行記録
装備 (主な物)
ダブルロープ 50m (2本)
キャメロット #0.0-#3 (1セット)
ナッツ (1セット)
ハーケン (7枚)
ジャンピング
リングボルト
トランシーバー
入山 5:30
前日の夕方には雨があがる予報だったが、
駐車地のアスファルトは濡れており小雨も降出した
ただ微風と快晴予報なので乾いてくる事を期待した
元谷大堰堤 上部
通常は伏流しているが、
前日この辺りは線状降水帯でかなりの雨が降った
元谷小屋の左側のガレ沢を登り最後の堰堤
(どれも落石で埋まっていて見えない) から左の沢を
詰める
右が「滝沢」
左が目指す「中ノ沢」
北壁のほぼ中央に位置する小屏風岩のすぐ右隣りに
ある幅広いスラブ
沢と言っても通常は水が流れていない涸沢である
上部の狭まった所がF2
著書では、下部は比較的岩は堅いが
上部は浮石が多いので終始注意が必要
と記されている
少ない情報ではあるが登られているのは
右寄りの少し水が流れている沢の中心
乾いていればフリクションが良く登りやすそうだが
水線となっていた
P1 8:30
前進するか敗退するかの判断を常に視野に入れ
懸垂下降のライン取りとプロテクションを考え、
苔た階段状の所からロープを出した
シューズが濡れて滑りやすいが雑巾を腰にぶら下げ
階段状のピッチを順調に登った
P1 ビレイ点
このあと右側の沢筋のラインに入りたかったが
更に直登して問題なくロープを伸ばした
別山をバックに、かっこいい
振返ると紅葉が美しい
見ごろをねらって良かった
三鈷峰 が近くに
ホッと一休みの私
北壁はなかなか日が差さなくて少し肌寒い
P3 ビレイ点
このピッチは遠目にサクッと登れそうに見えたが
濡れた岩のホールドやスタンスはシビアで、
相方のハンマーを借り狭い凹角を数メートルほど
ドラツーの様にピックで登ったところもあった
クラックが乏しくマイクロカムも受け付けない
ハーケンも半分しか入らずタイオフ
50m ロープをいっぱいに伸ばしビレイポイントを
上下左右5mくらい探しまわるがカムが使える
クラックは全くなくハーケンが使えるリスも
なかなか見当たらない ...
試しに打ち込むと入っていかないか岩が剥がれる
途方に暮れそうになったがプアプロで
セカンドビレイをするわけにはいかない厳しい
ピッチだったので粘り強く探し
漸く1枚バチ効きがとれたので遠くからスリングを
伸ばし気休めのハーケンをあと2枚打ち分散せて
バックアップとした
散々注意深くプロテクションを探しかなりの時間を
要してビレイ解除をコール
ビレイをしてくれた竹ちゃんとしては不安が増して
いたかと思うし待ちくたびれた事だろう
この先も状況は変わらないと思いリードを続投
P4 ビレイ点
(F2 上部)
P3 と同じ様にこのピッチもプロテクションが
取りづらい
数少ない記録では右側に見えていた F1 を直登して
いるが水が流れていて無理
ハーケンは全部で 7枚
ビレイヤー用兼ゼロピンに 2枚 残し
上部ビレイポイントはプアプロしか取れない事が
予想されるので 3枚 は欲しい
すると中間でカムが使えなければ ハーケンは 2枚
温存して登りたいがそもそもプロテクションが
取れない
無理に上がるとクライムダウンができないので
慎重にならざるを得ない
偵察しては戻るの繰り返し
15メートルほど直上してランナウト、
安心できそうなハーケンを打ち込み大きく右に
バンドをトラバースして F2上部に乗り上げ奥に
見える確実そうな岩を目指したがロープが足りない
50m のダブルロープ、2本のうち青い方が少し短い
仕方なくビレイヤーの末端を解き何とか辿り着き
ビレイ点を構築した
いよいよ日が暮れてきた ...
天気は良かったが北壁は一日中、日陰だった
P5 ビレイ点
記録にもあったがこのピッチがかなり悪い ...
思えば今までの方がましだ
ここまで来たら先に突き進む方が安全圏と判断した
だが安全マージンの感覚が麻痺しない様にと焦らず
集中した
暗闇のなか、月とヘッドランプの灯りを頼りに進む
が全く登攀スピードが上がらない
ガレた沢を登ると滝壺の様な地形になり3mほどの
岩壁が現れた
落口から上部は右に進む感じだったので右側から
取付いたが堆積した弁当箱ほどの石はどれも不安定
落ちそうな石をまず落とし細心の注意をはらい
ながら力をかけると崩れた
ラインを変え左側から
まだましだが信用ができない石ばかり
両手両足に力を分散させてジワリと乗越した
その先に恐ろしく暗闇に聳え立つ柱状節理が現れた
ガレを詰め何とか安心できそうなハーケンをきめ
岩壁沿いにガレたバンドをトラバース
明らかに効いてなさそうな情けでとった
プロテクションはどれも引けば岩が動きクラックが
広がった
バンドを通過してビレイ点を探すが大小どの岩も
ミルフィーユの如くサクッと剥がれていく
時間をかけ岩を砕きその中にある強固なリスに
ハーケンを打ち込んでコールをかけた
ビレイ中、微かに見える先のルートを探す
老眼の私には不鮮明だが難しそうに見える壁で
不安に襲われた
P6
近づくと 5ピッチ目とは真逆で強固な岩で階段状
ホッとした
P7
記録では、
すぐに現れる二俣は右俣へ、
その上部の二俣は左に入る
これだろう
細かい石が堆積したルンゼを詰めていく
P7 ビレイ点
疲労困憊
だが集中
P8
暗く地形が分かりづらい
左は脆い石が堆積した尾根
直上は斜度がある土砂崩れの様な跡
数メートル上がると斜度が緩みプロテクションが
とれそうなので取付いた土壁ならハンマーのピックが刺さるがザレた砂には
手応えがない
何度も足を蹴り込み一歩づつステップを作った
中央に大きな立ち枯木がありビレイ点とした
P9
目を凝らせば右手にうっすら尾根が見えてきた
稜線縦走路へとつづく最終の藪尾根なのか
ガレ沢をトラバースして尾根の側壁にハンマーを
打ち込み乗り上げた
猛烈な藪漕ぎで少し前進した先にまたしても壁が
現れたが暗くて状況が見えない
疲労もピークにきており無理すると危険と判断
2:30
適当な所を崩し2人が座れるだけの場所を確保
ロープを座布団代わりに敷き弱った胃袋にパンを
入れ眠りについた
9ピッチ全リード
21時間行動終了
5:30 起床
6:00
凍える夜のなか少しは眠れたので回復
適度な緊張のなか行動を開始
だがいきなり難関が現れた
昨夜に見えていたのは脆い岩壁
そこはどう考えても危ない
だが尾根上は一部崩落しており横断しなければ
ならない
P10
細い根に3ヵ所スリングを伸ばしプロテクションを
とりいざ崩落した中へ入った
ハンマーが効かない砂壁をジワリと登り最後は
手掛かりがないので乗越した先の草付にハンマー
投げをして手繰り上がった
ガスで稜線は見えないが残り高度は50mほど
もう安全な草付帯になってきたがそのまま2ピッチ、
ロープを引いて稜線に出た
※ 辿ったルート上に残置支点は一つもなかった
弥山から剣ヶ峰の中間あたりに出た
強風が吹き荒れるガスの中、
ナイフリッジが恐ろしく見える
この縦走路は平成28年の鳥取県中部地震により
登山道が崩落して弥山から先は立入禁止と
されている
まだまだ気が抜けない ...
灌木帯が弥山まで続いている
もう安全圏
弥山
連休という事もあり山頂には大勢の人がいた
山中で格闘していたのとは別世界で安堵した
全行程を通して冷静に対処をして
事故する事なく登りきる事ができたのは良かった
今回もわがままにお付合いしてくれた竹ちゃん、
連絡が取れておりアクシデントではないが予定が
押し救助に動こうとして頂いていた山岳会の皆様
には本当に感謝してます
以上、山行記録でした
山は遊びの宝庫や!!
筆者が書いた関連記録
- 2024年8月20日
クラガリ又谷 大滝登攀 - 2024年8月12日
楊梅の滝 大滝登攀 - 2023年9月12日-14日
滝谷出合~滝谷第四尾根
アルパインクライミング - 2023年6月4日-6日
大峯奥駈道 スピードハイク - 2023年5月9日-11日
黒部源流域 山スキー - 2023年5月2-4日
槍、穂高滝谷 山スキー - 2022年12月28-30日
甲斐駒ヶ岳 黄蓮谷右俣 アルパインアイス - 2022年5月17-18日
剱岳 大脱走ルンゼ 山スキー - 2022年5月2-5日
前穂高岳 奥明神沢
奥穂高岳 南稜
北穂高岳 東稜
登攀 山スキー - 2022年4月19-21日
黒部川源流域 山スキー 釣行 - 2022年4月2日
大山北壁 弥山尾根東稜 登攀 山スキー - 2022年3月2日
大山北壁 天狗沢 アルパインアイス - 2022年2月1日
錫杖岳前衛壁 3ルンゼ アルパインアイス - 2022年1月19日
御在所岳 1ルンゼ中又 アルパインアイス - 2021年9月13-15日
穂高岳 屏風岩 雲稜ルート
前穂高岳北尾根
アルパインクライミング - 2021年7月20-22日
穂高岳 滝谷 アルパインクライミング - 2020年9月29-30日
槍ヶ岳 アルパインクライミング