八ヶ岳 旭岳東稜 厳冬期アルパインクライミング
- 山行日
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- 山域、ルート
- 八ヶ岳 旭岳東稜
- 活動内容
- 厳冬期アルパインクライミング
- メンバー
- L大さん、岩瀬ひ、川さん、須川(記録)
八ヶ岳 旭岳東陵
こんにちは須川雄です。正月山行は涸沢岳西尾根~穂高に行く予定でしたが、年末年始の冬型が厳しい予報でしたので八ヶ岳の旭岳東陵に変更しました。八ヶ岳の旭岳は2671m。旭岳東陵は18年前に滝口さんと岩瀬さんで取付いて敗退したルート。今回は岩瀬さんとエースの大さん、期待の新人の川さんの4人で行ってきました。
八ヶ岳 旭岳東稜 厳冬期アルパインクライミングの山行記録
1日目 2024年12月31日
- 7時30分 美しの森到着
- 8時15分 美しの森出発
- 10時50分 出会い小屋着
連日、日本海側の豪雪のニュースが流れているが八ヶ岳の雪は少ない。美しの森から出会い小屋まで3時間ほど。宴会セットが重くザックが肩に食い込んで辛い。雪のない林道を歩き、途中から川俣川地獄谷に降りる。堰堤をいくつも越えて標高2037mの出会い小屋へ。
出会い小屋は香港から来た若い二人組の男女パーティーがいるだけで空いている。テントを張る予定だったが、広い小屋を使えて快適。小屋の隣にはトイレもある。
今日は低気圧の影響で、ずっと雪が降っている。しんしんと降る雪の中、旭岳東陵の取付きまで偵察する。すぐに小屋に戻り、特製寄せ鍋で宴会して早めに就寝。
二日目 2025年1月1日
- 1時 起床
- 3時 出会い小屋発
- 6時10分 日の出
- 8時20分 雪壁
- 9時30分 五段の宮取付き
- 10時00分 1ピッチ目 五段の宮左の草付き
- 12時10分 2ピッチ目 五段の宮(3段目~)
- 14時50分 3ピッチ目 ナイフリッジ
- 16時20分 4ピッチ目 岩稜帯
- 17時12分 5ピッチ目 岩稜帯
- 17時30分 旭岳ピーク
- 18時30分 ツルネ下降路
- 21時10分 出会い小屋着
1時に起床し各自朝食を食べて3時に出発。昨日は一日中雪が降ったが、ところどころトレースが残っている。旭岳東陵は権現沢と上ノ権現沢の出会うところの急登をラッセルしながら登る。尾根はやせていているので、尾根伝いに歩ければルートを間違えることはない。
標高2150m辺りで尾根が切れ落ちており進めない。ロープを出して懸垂する。ここからやせ尾根が続き両側が切れているために二回ほどロープを出す。2250m地点には少し広い場所があるので、テントを張ることが可能。急斜面が続きアックスを草付きの斜面に刺しながら登る。このあたりで日が昇ってくる。暗闇にオレンジが浮かび上がり、赤い光線が雪面を照らす。
日の出の瞬間は見れなかったがモルゲンロードで朝焼けに染まった山が美しい。振り向けば富士山が見える。元旦から日の出と富士山で縁起がいい。
標高2500m辺りは雪壁になり凍った草付きにアックスを刺しながら登る。下が切れ落ちているのでダブルアックスが必要。新人の川さんがアックスに不慣れで苦戦している。このあたりで、香港人パーティーに追い付かれラッセルを代わってもらう。サラサラ雪のラッセルと急な草付きの雪壁。落ちると止まらない緊張感の中で川さんも奮闘。
標高2550mの五段の宮に到着。まさに岩が5段になっている岩壁で圧巻。大迫力で直登は難しそう。
先に着いていた香港人パーティーは直登で登っている。プロテクションも取れず厳しそうだ。文献ではIV級+。太陽も登り気温も上がり暖かい。晴天の下、赤岳も一望できテンションも上がる。
1ピッチ目は大さんが左の草付きをリード。ハイマツの灌木で支点を取りながらダブルアックスで登攀。下がスパッと切れ落ちていて高度感が半端ない。緊張感が続くクライミングだが、大さんが安定した登りで進んで行くのが頼もしい。一本のロープで終了点にフィクスし、川さんと岩瀬さんがアッセンダーで登り須川引き上げで登る方式なので時間がかかる。
2ピッチ目も大さんが五段の宮の3段目の少し左からいっぱい伸ばす。ところどころ岩が浮いていて気持ち悪い。先ほどより支点を取る箇所が少ないようだ。岩に着いた雪を落としながら直登してから左上していく。
3ピッチ目はナイフリッジの雪稜で須川がリードする。先行パーティーがトレースを付けてくれているのでなんとか通過できたがトレースがなければ両側が切れ落ちたナイフリッジは気持ち悪い。雪の下に埋もれているハイマツを掘り出してプロテクションを取りながら進む。
4ピッチ目は旭岳の肩までの雪壁。五段の宮のような難しさはないが、滑落すると一巻の終わりで緊張が続く。このあたりで太陽が権現岳の陰になり、急に寒くなる。予想以上に時間がかかっているので日が暮れるまでに安全圏の稜線まで出れるか不安になる。すぐ近くに権現岳のピークが見えているが、旭岳のピークは見えない。
5ピッチ目は肩から頂上直下までの岩稜帯。権現岳が太陽を隠すので、かなり寒くなり風も出てきて焦る。
5ピッチ目終了時点で日が暮れてしまいヘッドランプ着用。旭岳のピークは目と鼻の先。ここからピークまではロープ不要でコンテで通過する。念願の旭岳のピークに到着するが、真っ暗の上に強風で感激する間もなく下山に取り掛かる。
旭岳のピークからツルネ下降の取付きまでは一般縦走路。バリエーションルートのようないやらしさはないが、強風でバランスが崩れる。吹雪ではないだけましだが、旭岳からツルネまでの急なくだりを慎重に下る。
ツルネに入ると風も治まり小休憩する。緊張感が解け一気に疲れが出て座り込んでしまう。行動時間も長くかなり消耗しており、疲労困憊で足が踏ん張れずフラフラになる。ツルネの東陵はトレースがあり、赤テープも豊富にあるので道に迷うことはなかった。なんとか出会い小屋に着いた時には出発から18時間行動していた。香港人のパーティーは下山しており、自分たちしかいない出会い小屋で食事も食べずにそのまま寝てしまう。
3日目 2025年1月2日
7時30分に外の明るさで目が覚める。疲れすぎて一度も起きなかった。昨日の夕食予定だったカレー鍋を食べる。疲れ果てた体に染みてかなり美味しい。
重たいザックを背負い、美しの森へ。道の駅こぶちさわの延命の湯で疲れを落とし神戸まで帰る。
今回は天候もよく五段の宮からは先行パーティーのトレースもある好条件。計画よりかなり時間がかかってしまったのは、大さん以外のメンバーの実力不足。これからトレーニングを積み、来年こそは涸沢岳西尾根から奥穂高を目指したい。
個人山行が主体の中で新人育成の山行にご一緒してくれた大さん。長年のパートナーの岩瀬さん。やる気のあふれる新人の川さん。楽しい山行を共にできて楽しかったです。ありがとうございました。また行きましょう!