北アルプス ジャンダルム飛騨尾根 アルパインクライミング
- 山行日
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- 山域、ルート
- 北アルプス ジャンダルム飛騨尾根
- 活動内容
- アルパインクライミング
- メンバー
- 石橋(L)、川(SL、記)

こんにちは、川です。
今から7年前、初めて北アルプスの地に足を踏み入れ、慣れない岩稜帯に神経をすり減らしながら奥穂高岳に登頂。
当時は両側が切れ立った稜線の先に鎮座するジャンダルムをただ茫然と眺めるだった。
今回、どこかに行かないかと石橋さんに声を掛けていただいた際に、初めて「飛騨尾根」というルートを知った。
まだ行ったことのないジャンダルムをアルパインクライミングで登る。
これは!と思い、意気揚々と返事をした。
次々と試練が降りかかってくる修行山行になるとも知らずに…
北アルプス ジャンダルム飛騨尾根 アルパインクライミングの山行記録
主なギア
- ロープ(8.9mm 60m)
- カム(#0.2~#3 ×1セット、#0.5~#2 ×1セット)
- トライカム 1セット
- アルパインヌンチャク(60cm×6、120cm×6)
- 240cmスリング×2
- 無線機 1セット
- ハーケン(撤退用)
- ハンマー×1
- テント(1~2人用)
行程
8月30日(土)
2:45 鍋平駐車場より出発
4:40 白出沢出合
7:35 荷継小屋跡
10:46 穂高岳山荘(泊)
8月31日(日)
3:25 穂高岳山荘より出発
5:10 αルンゼ下降点
6:15 飛騨尾根 取り付き
11:10 ジャンダルム頂上
12:50 穂高岳山荘
16:35 白出沢出合
18:30 鍋平駐車場
1日目 白出沢を経て穂高岳山荘へ
仕事を終えて石橋さんと合流したのは前日の夜20時。
深夜の名神と東海北陸道をひた走り、午前2時過ぎに新穂高温泉に到着した。
そして、夏山シーズンの駐車場争奪戦を甘く見ていた我々を待っていたのは、まさかの満車という現実だった。
さっそくの洗礼に多少狼狽えるものの、少し離れた場所にある鍋平駐車場をその場でネット予約して事なきを得た。
余分に30分歩くことになるけど、入山前に撤退するよりマシだ。
食欲が湧かない中、無理やりコンビニ弁当を詰め込み出発。
「帰りはこれ登り返すんか…」なんて思いながら鍋平駐車場から新穂高温泉まで一気に下り、いよいよ山行スタート。
長期縦走でもするのかってくらいザックが重たい。開始早々不安がよぎる。
林道の途中で穂高平への近道と書かれた急登に軽い気持ちで突っ込んだところ、早々に不安は現実となった。
足がゴリゴリ削られ、急激にペースダウン。
原因はすぐに明らかになった。
なぜか水4Lに加え、アルコール類をしこたま担いでいた(そりゃ重いわ)
水は1Lだけ残して捨て、アルコールは山小屋で調達することとし白出沢分岐付近の茂みにデポした。
申し訳ないことに、石橋さんにはテントに加えてロープまで担いでもらうことに。

白出沢のトラバース地帯をやり過ごし休憩。
そして再出発しようとしたとき、事件が起きた。
石橋さんがザックを背負った直後、何故かザックが肩から落下。
信じられないことにショルダーストラップが根本からちぎれてしまっていた。
おいおいそんな壊れ方あるんかいなとか思いながら覗き込もうとしたとき、足にあの嫌な感覚が...
「あっ、攣った攣った!」と、ふくらはぎが悲鳴を上げ、私はなすすべなくその場に崩れ落ちた。
石橋さんがスリングとカラビナで器用にザックを応急処置する傍ら、足が攣り悶絶する私。なんだこの光景。
その後も、膝が攣りながらも白出沢の急登を牛歩でゴリ押しする私に対し、石橋さんは信じられないペースでグイグイと登っていく。
その体力は本当にすごいの一言。

石橋さんのペースコントロールのおかげで、昼前に穂高岳山荘に到着することができた。
山小屋で得た昼食とビールを摂取し、その後はやることもなく昨日から睡眠をとっていなかったので昼寝。

意外と暑く、調子に乗って裸足で寝ていたら見事に日焼けしてしまい、
翌日日焼けの痛みに耐えながらクライミングシューズを履く羽目になった。
2日目 ジャンダルム登攀~下山
2時半に起床し、山荘内で朝食を済ます。
外は寒かったので屋内で食事ができるのはありがたかった。
身支度を整え、3時25分にジャンダルムに向けて出発。
以前は怖くて仕方なかった奥穂までの登りを難なくこなす。慣れって恐ろしい。
自分の中では通過に手こずるかもと思っていた馬の背の下りもあっけなく通過。
(暗くて高度感がなく、手も足も豊富にあった。)

内心ほっとしていたけど、道中で想定外の難所が現れ
油断するなとしっかり釘を刺された気分になり気を引き締め直す。
αルンゼは視界のきく5時過ぎに下降したかったのでジャンダルム付近で少し待機。
次第に奥穂方面の空がオレンジ色に燃え出す。
この日は富士山が見えるほど視界良好で文句なしの天気だった。

ヘッデンなしでも視界が明るくなってきた頃にジャンをトラバースして明瞭なコルからαルンゼの下降を開始。
話には聞いていたけど、出だしから浮石しかなくて笑う(笑えない)
右岸の際に張り付きながらマシそうな浮石を選びながら慎重に下っていく。
多少の落石はあったけど、思っていたほどひどくはなかった。

枯れた小滝で懸垂下降を2回こなし、適当なところでバンドをトラバースする。
ロープを出すほどではないにせよ、一部スラブ状の箇所もあったりと油断できない感じだった。

トラバースを終え上部を見上げる。
最初は登山靴でも容易に登れる感じなので、そのままフリーで抜けることに。

ある程度登ったところで少しいやらしいポイントが出てきたので、いよいよクライミングシューズに履き替えてロープを出す。
ここまでの行程で無事にメンタルがやられたため、1P目は石橋さんにリードをお願いすることに。
高度感満載の箇所をビビり散らかしながら通過し1P目を終える。

2P目、3P目も難しそうなので引き続き石橋さんリード。
3P目は出だしで一旦クライムダウンして左上するもいろんなものが浮いてる。
行き詰まったので少しクライムダウンして右側に際どいトラバース。
ビレイしてる私も手に汗握る展開となった。

そこから先の2ピッチは簡単そうなのでリードで登らせてもらう。
これといった難所もなく浮石に注意しながら順調にロープを伸ばしていく。

最後はあと少しでトップアウトというところでロープがやや足りずピッチを切った。
飛騨尾根では終了点など用意されていないため、カムやピナクルを駆使して支点を構築しないといけない。
初めてやったけど不恰好ながら何とか構築できた。
残り10mほどの最終ピッチは石橋さんが簡単に料理して登攀終了。
一息ついてから一般道を駆け上り念願のジャンダルムに登頂した。

余韻に浸りつつ一般道?を山荘に向けて戻る。
「そりゃ遭難事故多いわ」なんて思いながら1ヶ所ほど際どいクライムダウンをこなし穂高岳山荘に帰還。
昼食を済ませ白出沢を駆け降りる。
想定以上にいいペースで降ってこれて楽勝ムードが漂うが、穂高の神はそんな我々に追い討ちを仕掛けてくる。
休憩が終わりいざ出発というところで何やら石橋さんのザックの様子がおかしい…
信じられないことにもう片方のショルダーストラップも根本から破断してしまっていた。
(私のふくらはぎは無事だった)

すり減り切ったメンタルでトラバース地帯をなんとかやり過ごし、
永久に終わらないんじゃないかと思うような樹林帯を抜けて新穂高温泉に下山。
薄暗くなる中、ザックをデポして鍋平駐車場までダメ押しの登り返しをこなして車を拾いに行く。
嬉しいことに石橋さんもついて来てくれた。(なお、あっという間にぶっちぎられた)
こちらも出せる限りのハイペースで最後の追い込みをかける。
しんどいけど、何とも充実した時間だった。
帰路で「平湯の森」と王将近くにある台湾料理屋で英気を養い、最後の核心となる神戸までの運転を無事にこなしていった。
今回は体力不足のため石橋さんにテントとロープを担いでもらったり、全く付いていけなかったりと大変申し訳なかった。
これまで少しづつ歩荷トレをしてきたけど、いよいよ本腰入れて登りを鍛えて行かないとなーと痛感した山行となった。
今回誘ってくれた石橋さん、ありがとうございました!
登りの体力強化に励んでいくので、また行きましょう!