兵庫県山岳連盟救助講習会
兵庫県山岳連盟救助講習会 2008年6月1日 (日) 内容の紹介(抜粋)
- ロープについて
- 落下係数(落下率)
- ロープ(スリング)の強度
- ハーケン、ボルト、フレンズの強度
- 救助で必要なロープの結び方
ロープについて
- 衝撃吸収性(衝撃荷重):墜落時の衝撃を表す数値 1000dnN以下が必要
- 伸び率:150kgの静加重をかけた時のロープの伸び。8%以下が標準
ロープが伸びることによって墜落の衝撃を吸収する。
激しい墜落をすると40%程度は伸びる。ロープが破断するのは60%。
太いロープ(11mm)ほど切れ難いと思われがちであるが、太いほど伸びにくく、墜落した場合の支点への衝撃は大きい。 - 耐墜落回数:落下係数1.77、80kgの墜落テストをクリアーした回数
6以上が基準 リードでの墜落がこの数値を超えるとロープが切れる。 山道具屋に行ったらロープのカタログをもらって読んで勉強して下さい。
落下係数(落下率)=墜落距離 ÷ 繰り出したロープの長さ
- 垂壁でビレイ点から2.5m登ったところで墜落(中間支点なし)した場合・・
墜落距離=5m、出したロープ長さ=2.5m ⇒ 落下係数=5/2.5=2 - ビレイ点から2.5m上に中間支点(ランニングビレイ)を取り、更に中間支点から2.5m登って墜落した場合・・
墜落距離=5m、ロープ長さ=5m ⇒ 落下係数=5/5=1
- ①と②は同じ墜落距離5mであるが、中間支点のある②の方が墜落係数は低い。
※ 墜落係数が低い程、支点への衝撃力が低く抑えられる。 - 落下係数2(max)のとき 衝撃力(一番上の支点にかかる力)は650kg
落下係数1のとき490kg、0.5のとき370kg
つまりリードで墜落すると700kg以上の衝撃が支点にかかる可能性がある。
落下係数2のとき、9mmロープでは700kg、11mmロープでは1トン - 落下係数を低くするには出来るだけ中間支点を作ること(3mに1つ)
- 特に登り始めは小まめに取る。ビレイ点から登り出す前に手の届くところに1本は欲しい。
ロープ(スリング)の強度(静荷重でスリングが切れる荷重)
6mm 750kg、7mm 1050kg、9mm 1700kg
6mmスリングを使用している人も多いと思いますが、上述の墜落時の衝撃力では6mmスリングは切れる可能性があるので今後は7mm以上を推奨します。
ハーケン、ボルト、フレンズの強度(静荷重でアンカーが抜ける荷重)
講習内容ではありませんが手元の資料(岩登りの確保技術・労山)です。
- ハーケン 平均450kg(最低380kg) 手で抜けるハーケンもあります。
- リングボルト 平均680kg ・RCC型ボルト 平均840kg
- フレンズ
差込方向に対して90度(水平方向に差して垂直に引いた)では平均106kg
差込方向に対して0度(反対方向)では平均670kg
古いタイプ(フレキシブルでない)のデーターなので現在はもう少し強いでしょう。 - ロックス 90度方向 600kg、0度方向 800kg
激しい墜落ではスリングが切れる前にハーケンが抜けるでしょう。
救助で必要なロープの結び方
クライミングだけでなく、一般路から谷に転落した場合などを想定して、ロープ、カラビナ、スリングの最小限の装備で負傷者を安全な場所まで運ぶための技術です。
- ムンターヒッチ(半マスト、イタリアンヒッチ) 確保目的、ロープの仮固定も容易
- ラビット(変形8の字)1本のロープで2人を同時に確保できる
- オートブロック(マッシャーノット) バックアップ用
- ロープ同士の結束 8の字+ダブルフィッシャーマンで末端処理
- 変形ブーリン 強い荷重がかかっても結び目がほどき易い
- レスキューではロープの結び目が固く締まらずほどき易いことが重要。
一度に2~3人の全体重がかかることもある。 - エイト環を使いこなせること
- 安全環カラビナはネジ式が基本(オートロックは開閉が手間で危険)集会などで練習したいと思います。
救助講習会参加者 山吉、橘、岡島、三瓶