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大台ヶ原 釜の公谷−大台ヶ原−白崩谷−東ノ川     
 1996.9.13-16   三瓶 修
 
Party L 三瓶  AL 山本  M 松尾 山田

9.13 大和上市に10時に待ち合わせる。あいにく雨が降っているが、なんとか明日は回復の見込みである。久しぶりにPartyを組んで、車の中で酒を交わし2時頃に就寝とする。

9.14 曇り
 駐車場 6:50 釜の公谷出合 7:45 稜線 12:30 大台ヶ原駐車場 14:30白崩谷源頭 15:30

駐車場を出て夏道を辿る。黒倉又谷の出合を過ぎた辺りで、山本さんが車の中にヘッドランプを忘れた事に気づき、慌てて走って戻る。残る3人はのんびり歩いて釜の公の出合まで。山本さんはかなり必死に走ったらしくあっと言う間に戻って来た。

 出合の吊り橋の右岸からすぐにブッシュを伝って沢に下りる。最初の滝は、昨年山本さんたちが登ったときの核心部ということで、ここで全員ハーネスを付ける。ルートは滝の左側の草つきである。下から見る限りno seilで 十分に思えるが、話に聞くとなかなか手ごわいということで緊張して取り付く。沢を渡り適当に登るがさして難しい所はなく、このPartyならば技術的にはnoseilで十分である。が、後から登って来た松尾さんや山本さんに聞くと、昨年はもっと右寄りを登ったということで、 seil scaleが長いことと、見通しがききにくい事などから、的確なルートファインディングができなければ詰まる可能性があると考えられる。

 後は適当に登れる滝を次々と越え、快適な遡行を続けると間もなく二股に達する。右手に見え始める岩尾根はなるほど見事である。続く連瀑帯は左岸から大きく高巻く。かなり大きな巻になり、幾つかの滝を一気に巻いてしまった。
沢幅はだいぶ狭くなり源頭も近くなって来た。最後は50mの大滝である。 よく見ると上下2段に別れている。まず下段を左側のナメをつたって登る。 ここから対岸に渡りブッシュの中に逃げる訳だが、雨の後で若干水量が多いかんじで緊張する。水にあたらないようにしようとすると、落ち口に体がよってしまうので、思い切り水に打たれながらバンドをトラバースする。意外と水流はきつくない。渡ってすぐの所から、木登りでブッシュの中にはい上がる。外傾した岩盤のうえに笹が生えているだけなので、さらに大きく巻いて滝の先に出る。

 これでこの沢も終わりである。あとは源頭のガレを詰めて稜線に出る。このガレが以外に悪く、抱えたら抜けそうな大きな浮石がいっぱいに詰まっているというかんじだ。ここをそーっと抜けると、大台に特有の背の低い木の生えた草原に出る。風がもう冷たい。そのまま稜線を辿り、三河落岳に出る。立派な看板が立っており慎重に夏道を選んで行けば真っすぐに駐車場へと向かえるはずだったが、適当に下った結果、筏場へ下る夏道の途中に出てしまった。

 大台の駐車場は何やら大きな看板ができていて、そのほかにも何か工事中であったが、3連休ということでかなりの人出である。そんな中にオウム指名手配の看板がそこらじゅうに立っており、不審者に間違われそうな我々は早々に白崩谷の源頭を目指す。尾鷲辻を過ぎると観光客の姿も消え、すっかり山の中という感じになってくる。白崩谷は少し分かりづらい。ここにツエルトを張る。水がないので控えめにたき火をするが、高気圧の前面になっているため風が強く、火を大きくしないと寒くて仕方がない。もう秋である。
 今日の晩ご飯は、夏野菜カレーである。最近は野菜と言えばナスしか食べていないので、カボチャやらトマトやら山のように入ったカレーは、里で食べる飯よりもはるかに豪華である。Partyで来ると飯がうまいのがうれしい。1人だとついつい面倒でジフィーズだけになってしまうし、そもそも作るのが面倒で行動食の残りをかじってお茶だけ飲んですませてしまったりする。 風が強いのでたき火は勝手にどんどん燃えてしまい少々、火の始末が心配になったので、まだ早いがたき火の始末をする。火が消えると風が冷たい。山本さんはお月見コンパで飲み過ぎて、奥様から酒を禁止されているし、寒いので早々にツエルトの中にもぐりこむ。

9.15 晴れ
 C1 5:45 東ノ川出合 10:20 地獄釜滝手前 12:30 滝見尾根末端 C2

白崩谷を下る。河原を適当に下るが、Lのわたしはなんでもない倒木の上で足を滑らせ、お尻を強打してしまう。あとで分かったことだが、何と尾底骨が折れていた。が、このときはそんなこととは知らず、お尻をさすって歩き始める。2回目であるということと、ひさしぶりにPartyを組んだせいかはしゃぎ過ぎたのか、緊張感がなかった。この程度の歩ける怪我ですんでよかったというところである。一人ならちょっとした捻挫でも即遭難につながるという気持ちで歩いているのにこのときは気を抜き過ぎていた。

 すぐに大きな滝が現れる。前に来たときの懸垂の支点に残置したシュリンゲがいまだ残っていた。左岸のブッシュの中を滝の落ち口まで下り、そこから懸垂で下る。50m seilで丁度の距離である。これを下るとすぐに小さな函が始まる。水流の中、2mくらいの段差をクライムダウンし、泳いで通過する。まだ朝方なので水が冷たい。
 続く幾つかの段差を快適に下り進むと核心のゴルジュ帯にさしかかる。 幻の大滝へと続く大きな滝を左岸から大きく高巻き、尾根をのっこして隣の沢に入ってこれを通過する。振り返ると30m以上はありそうな滝が、風を巻いて落ちている。このうえにさらに上から見た大滝があることになる。すべて中を行こうとすれば大変なルートになるだろう。

 まだ終わらない。大岩を積み上げたような河原が続くがこの大岩が下れずに右岸を大きく巻く。降り口が悪く、笹の生えた泥壁をシュリンゲを垂らして下る。これを過ぎると沢は単調になる。沢幅もしだいに大きくなり、大きな岩の間を縫うようにしてどんどん下る。やがて水が涸れ、伏流になると、右手からがらがらの沢が3本合わさってくる。このうち1番下のが地図にある大きな枝沢である。これを過ぎれば東ノ川はすぐそこである。最後は小さな函を右岸から通過したり、中を行ったり適当に下る。

 出合には、何とターフが張られており巨大なファミリー用のテントがいくはりも張ってあった。すぐそばまで林道が来ている様子である。東ノ川も入りやすくなったものである。
 まだ時間が早いので先に延ばすこととする。日本の南海上には台風がうろうろしている。まだ動く気配はないものの、先に進められるなら先に進めておいてほうがいい。滝見尾根の末端まで行ければ1番だが、とりあえず地獄釜滝の下の天場を目指す。大岩の中を流れる沢を水に浸かりながら進む。 巻始めるとどんどん巻いてしまうので、ここは山本さんが先頭に立って中へ中へと進む。中崩谷の手前は右岸を巻く。沢に戻ると左岸側に広くて気持ちのいい天場がある。まだ時間はあるがメンバーに疲れも見えるのでここで泊まろうか迷う。が、山本さんと相談して、滝見尾根まで進むこととする。

 地獄釜滝は左岸から大きく巻く。大きな流れの中をさらに進むと、3つの大岩が現れる。前に来たときには、いったん大岩のうえに上がり、その上にある残置を使ってくだったりとなかなか鬱陶しいルートをとったが、今回は右岸をへつって簡単に越える。大ヌケ谷の出合、右岸にはダンロップの6天が張れそうな広い天場がある。これを過ぎると西の滝の圧巻は間もなくである。この景色は僕の見たことのある沢の風景の中でも最もすばらしいもののうちの1つである。滝の下をくぐるようにして歩く。ちょうど虹の中を歩くようになる。後ろからくるメンバーも虹の中に見える。この滝はなぜか夏よりも秋が似合うように見える。

 中の滝の沢との二股にツエルトを張る。今日は思い切りたき火ができるが、あいにくまきがあまりない。酒を禁止されている山本さんも、今日はこのPartyの中では最長老ということで、敬老の日を祝って一杯やる。晴れていた空には、いつの間にやらガスが降りて来ている。

9.16 晴れ
 C2 6:10 シオカラ橋 8:30 大台ヶ原駐車場 9:00 筏場駐車場 11:30

 すぐに最初のゴルジュである。前に来たときは左岸を巻き過ぎて滝見尾根に出てしまうということになってしまったが、今回はできるだけ小さく巻く。分かりにくいが踏み跡ははっきりしている。続く滝場は右岸沿いを巻いて進むうちに、高倉滝まで出てしまう。ガイドでは左岸から巻くようになっているがここも続いて右岸を巻く。左岸の尾根のスカイラインがだいぶ低くなってくると、滝見尾根の夏道が合わさってくる。いよいよ最後の東の滝である。夏道を使って巻くことになっているが、行けそうなのでとりあえず滝の下まで行って見る。東の滝自体は取り付く島もないが、左の沢型を使って登れそうだ。滝の下を渡り、東の滝の左手の尾根をブッシュを頼りに登る。踏み跡がある。これを登った所がちょうど滝の落ち口であった。沢は打って変わって穏やかなナメに変わり、横には夏道の鎖が渡っている。山行の貫徹を喜び、のんびりする。

 シオカラ橋から夏道に上がり駐車場まで。あとは筏場までの夏道を各自おもいおもい歩いて下山した。途中大台ヶ原の駐車場が入ってしまうのが 非常に残念なルートではあるが、下から沢を上ってそしてそこまで歩いて戻ることができ、秋の3日間を満喫できるいい山行になったと思う。皆さんにもお進めの好ルートである。



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