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97春合宿 白馬三山 4/25 晴れ 三瓶 修 大阪-ちくま-松本-白馬 いつも様にちくまに乗り込む。登山客の姿はまばらで、スキーやスノーボードをかついだ若い人の姿が多い。今回はB.C方式のため、いつもと違ってテントやら何やらいろいろかついでいるため、荷物がやたらと重い。この連休は天気の崩れもしばらくは無さそうで、明日の晩は白馬のピークである。 4/26 晴れ 白馬-タクシー-二股(6:15)-猿倉(7:30~7:45)-白馬主稜末端(8:45〜9:00)-4峰(13:30) C1 空はよく晴れている。車窓からは、杓子の東壁がよく見える。雪が少ない感じがするが、なかなか正面から見ると堂々としていて魅力的でもあり、難しそうにも見える。 白馬の駅を降り、臨時の登山指導所に計画書を出して、タクシーに乗り込む。大雪渓から白馬をattackするという50代くらいの人との相乗りである。雪も少ないし猿倉までは入れるだろうと思っていたら、二股のゲートが開くのが5/1からということで、二股から歩かされる事となった。時々こういう自分より大分年上の人と相乗りになるが、僕の姿はいかにもお金が無さそうに見えるのか、結構おごってもらうことが多い。今回もそのパターンで少し余計に払ってもらった。 二股には既に幾張りかのテントが張られており、登山者がうろうろと準備をしていた。彼らを横目で見ながら重いザックを背負って歩き始める。この林道を歩くのは2回目だが、展望も何もなく、ただただ単調である。いつもならあっという間に抜き去ってしまうはずの中高年登山者の団体を、まじめに追いかけても抜けず、いらいらする。が、たまに辺りに目をやれば、開き過ぎたふきのとうの合間に、かたくりの花や、水芭蕉、座禅草など様子を見て取ることができる。 猿倉には多くの登山者が来ている。学生の山岳部といった様子のPartyが多い。とりあえずDepoするものを残し、白馬尻に向かって歩き始める。他にも何Partyか一緒に歩き始める。スノーボードを背負いバイルを持って歩いているPartyもいる。 白馬の主稜にはもくろみどおりトレースはまだついておらず、春のざらめ雪がひたすら続いている。もくろみどおりであることは間違いのないことなのだが、やはりラッセルは苦しく、3Partyくらいで交替しながらゆっくりとしたペースで登っていく。 8峰の登りはひたすらしんどく遅々として進まない。満員の夜行でゆられた目には、5月の日差しはまぶしすぎる。どのPartyも似たような状態で、ポコ1つ越えるたびに休憩しながらゆっくりと進む。どのポコが何峰やら見当もつかないまま登るうちに、日は高く昇り、12時を越えてしまった。どのPartyももういい加減泊まろうか、という頃になって、スノーボードをかついで登っていた若い3人組みのPartyが頑張りを見せ、最後の雪壁に向かってのぼって行った。僕はもううんざりしたので彼らが登って行く姿を見ながらテントを張ることにした。空は明日の晴天を約束してくれている。夕方になりゆっくりとトレースを上がって来た外のPartyが追いついて来たころ、テントの外の出てみるとさっきのPartyが最後の雪壁を越えて行くところだった。 4/27 晴れ 5:20 C1-白馬 6:30-大雪渓-Depo回収-長走沢右岸尾根末端 9:30 C2 昨夜は以外にも風が結構出て、隣に夏用のフライを張って泊まっていたPartyは夜中に結構ばたばたしていた。風でトレースもだいぶしまったかと思ったがそれほどのこともなく相変わらずの雪の状態。 昨日のトレースをたどり、最後の雪壁に向かう。僕が泊まった辺りよりもこの壁の下のほうが広くて快適に泊まれる。だれが作ったか立派な雪胴の残骸があった。この気温の高さでは穴に泊まる気はしない。 稜線の雪屁はほとんど無く全く問題ない。岩の出ている2峰を白馬沢側に巻いて、そのまま最後の壁に向かって沢沿いを詰める。eisenを蹴りこんで快適に高度を上げる。やがて風の稜線にひょっこりと顔を出した。 稜線は思っていたより風が強く明日は天気が悪くなりそうな高気圧の縁と言った感じだった。小蓮華の尾根は雪が少なくBushが至るところに出ていて鬱陶しい様子だったのでそのまま大雪渓を下ることとする。大雪渓からは杓子の北稜がきれいに見える。が、黒い。雪が少なすぎる。浅いルンゼには茶色く落石の後が筋になって見えている。ここは今回のぼる予定のルートになっていないがなかなか立派なルートである。大雪渓の中のかなり上部に位置するため、下から上がってくるのは雪崩がこわく苦しいが、稜線から下って来ればあっと言う間に取り付ける。ルートも取り付きも明瞭なので、いずれまた登りに来ようと思う。今回は白馬の主稜を登ったので、次は3号尾根か、北尾根右稜から入って大雪渓を下り、杓子の北稜に継続すれば、白馬周辺のバリエーションとしてはなかなかのものだろう。 あっと言う間に下まで下り、猿倉の台地にどこから上がろうかと思ったが、長走沢がもう水が出ていて、辺りにはふきのとうがちょうどよく出ていたので、今日はここで泊まることとする。Depoしておいた後半の荷物を猿倉山荘まで取りに下り、帰りにそこらに生えているふきのとうをたくさん摘んで、テントに戻る。早速、沢の水にさらして簡単に灰汁を抜き、さっと湯がいて水にさらし軽く絞って食器のうえに並べてみる。まだ入山2日目とは言うものの、緑の野菜はやたらとうまそうに見える。食べてみる。灰汁抜きが十分でなかったせいでかなり苦みが強いが、これが春の山の味である。が、塩も醤油もなかったので少し味気無い。食料袋を漁ってみると塩気のあるものと言えば塩昆布とゆかりの元があったので、とりあえず塩昆布と和えてみる。これがなかなかいけた。 4/28 曇り→晴れ C2(5:00)-小日向のコル-樺平手前の尾根上(8:00)C3 朝からもう1つパッとしない天気で昼ころには雨になった。あしたの朝まで残りそうな様子である。雪もだいぶ緩んで雪崩も怖いので、明日は予定通り双子尾根から様子をみようと思う。1日おけば少しはしまって落ち着くだろう。 4/29 晴れ B.C(5:30/10:30)-杓子(7:30/9:00~9:30)-白馬鑓 昨日は夜中だいぶ風が吹いてテントがつぶされそうになってしまった。支えているのもしんどいので、ポールだけ抜いて倒してしまう。だんだん慣れてくるとどんどんずぼらになっていく。雨がいったんあがって、風だけになっていたのでポール抜いても問題ないだろうとのんびり寝ていたら、再び雨が降り初めてテントないが完全に酸欠状態になってしまった。仕方がないので入り口から雨の中に口だけ出して朝を待った。 明け方には何とか雨もあがって、日差しも差して来た。視界も十分だが雪がすっかり雨を吸ってすっかり重たくなっている。この雪では杓子沢をわたるのは少し怖い。予定通り双子尾根に取り付く。 奥双子のコルから杓子沢には既にトレースがついていたが、この雨で消えかかっている。ところどころデブリも見えるが、新しいものは無さそうだ。登るにつれ見上げるとA尾根にはトレースがついているようだ。A尾根の上部は双子尾根に吸収されており、雪屁の崩落の危険もない。とりあえず最初に登るには手頃に思われる。B尾根は上部雪屁があり、なかなか緊張感がありそうだ。白馬の北稜は下半分真っ黒である。 双子尾根のほうは特に難しい所もないが、杓子尾根とのジャンクションの手前に長走沢の左岸尾根が合流しているがここが上から下ってくるとなかなか分かりづらい。視界がないとそのまま沢の源頭の斜面に入ってしまう可能性が高い。勿論雪崩の危険はある。ということで、ここはDepo旗を打ちたい所だが、ここには既に誰かが旗を打ってあった。 快調に高さをかせいで杓子のピークにつく。A尾根からのトレースがあがって来ている。雪屁の境ぎりぎりまで出てB尾根の上部の雪屁を確認する。下から見るより小さくせいぜい50cmくらいだ。これなら余裕で抜ける。後は下の雪の状態だけである。何とかルートのめどがついたので下降路確保のために白馬鑓に向かう。杓子と白馬鑓のコルはかなり切れていて登り返しを考えるとうんざりするが、白馬鑓の周辺は地形が分かりづらそうなので、念のため確認しておきたい。確かに下りに取るとちょうど看板の立っている辺りが急激に落ち込んでいて、視界がないと雪屁が怖いのでそのまま黒部側に続く緩い尾根に入っていってしまいそうである。看板からの方向を合わせて覚える。 白馬鑓のピークから北稜と南稜の様子を見る。上部はところどころ岩が出ているものの尾根型は広く、どちら側からも簡単に巻ける。偵察はこのくらいにして引き返すことにする。下からは続々とPartyがあがってくる。小日向のコルに泊まっていたのだろうか。自分の天場の回りはなるたけ人が少ないほうがいい。 杓子の登り返しは予想どおりなかなかのアルバイトであった。後はB.Cまではあっと言う間である。グリセードで下れるかとも思ったが、雪が完全に腐っていてすぐに止まってしまう。尾根のうえにあったB.Cを樺平の樺の木の横に降ろして、立て直し、びしょびしょに濡れたシュラフやら何やらを全部広げて物干し大会をする。 自分もシュラフと一緒に銀マットのうえに横になって濡れた体を干す。が、日差しは強く10分ももたない。暇なので少し上にある5mくらいの岩でボルダリングをして遊ぶ。なかなか遊ばせてくれる。クレッターなら何とかなりそうだが、登山靴では結構シビアである。ここにいる間に何とかしたい。 4/30 曇り→雨 B.C(4:30)-A尾根-杓子(7:00)-B.C(8:30) 朝から天気がすっきりしない。そういえば昨日の稜線はなかなか風が強かったが、どうやら高気圧の縁になっていたらしい。この調子だと午後からは雨になりそうだ。さっさと支度をして天気が崩れる前に抜けてしまうことにする。 奥双子のコルからトラバースを開始する。うっすらとトレースが残っている。デブリもかなり出ているが新しいものはない。手前にある大きな岩稜(A尾根右稜)の基部を巻いて各尾根の取り付きに向かう。 雪の状態は安定しているのでそれほど気にする必要はないのだろうが気持ちが悪いことには変わりがない。尾根の取り付きはまだかなり上にあって、各ルンゼからの雪崩や落石におびえながら、ひたすらラッセルを続ける。さっさと通過してしまいたいので懸命にペースを上げるが、なかなか進まない。そのうえところどころ大きなクレバスが空いていてこれを迂回するのに手間取ったり、横着をしようとすると腰くらいまではまったりする。何とか早く尾根型に乗りたいのだが、行けども行けども斜面が続く。 何とかA尾根の末端までたどり着いたが、A尾根末端はAB間ルンゼ側に大きく斜面になって広がっておりこの斜面を抜けるまではまだまだ安心して休めるというところではない。そのまま一気に斜面を登りようやく尾根型らしいところにたどりついた。トラバース開始から約1時間である。ここはどのルートもそうだが、ある程度のスピードでトラバースから尾根の上まで一気に行動できないとこわい。ペースが上がらないと精神的に消耗する。尾根に乗ってしまえば後は単調なラッセルが続く。途中AB間ルンゼ側からカンテ状の岩が競り上がって来ており、これを右側から巻く。基部にシュルンドが空いており緊張させられる。シュルンドにはまってバランスを崩せばあっと言う間に下まで行ってしまうのでそれなりに緊張してステップを刻んで行く。詰めは再び雪壁となって、双子尾根にと消えている。だいぶガスが濃くなって視界のなくなった中をひたすら登り双子尾根の最上部に出た。 稜線風はないがガスガスで何も見えないので、そのまま一気に双子尾根を下る。いいタイミングである。何とか壁にいる間は視界がもった。調度テントに入ったころ、雨が降り始めた。こういうのはなかなか気持ちがいい。今回は天気図も取ってないし、天気予報もほとんど聞いていないが、空の色や風の強さで、山の機嫌を伺って行動し、その通りに動けるとなんとなく山と一体感が出て来てすごく気持ちがいい。1人の山の楽しみである。 5/1 晴れ B.C(4:45)-白馬鑓(8:30)-B.C(9:45) 昨日の雨は上部では雪になったようで、明け方には空も晴れ意外に冷え込んだようだ。雪はよくしまっている。今日はB尾根に行くつもりだったが、この雪のしまったいい状態のときに杓子沢を下っておこうということで、白馬鑓の北稜に向かうことにする。 しまった雪にeisenにを効かして杓子沢を快調に下る。北稜は本来ならもっと大きく回り込んで取り付くのだが、今回は手前の方から強引な木登りで尾根に取り付いた。双子尾根から見て取った通り、下半分はほとんどBushが出ていて木から木への結構怖い登りを強いられたり、シュルンドを回り込んだりと鬱陶しい。軍艦ピークも厚いハイマツに覆われていて、ハイマツをつかんで回り込んだり細く切れ落ちたリッジの上をeisenを引っかけないように気を使いながら通過したりと、もう1つ雪山の楽しみはないがこれはこれで面白い。何と言っても東壁と違い尾根に乗ってしまえば後は雪崩のことを考えなくて すむのがいい。 軍艦ピークを懸垂で下り一息入れる。後は幾つかの岩峰を左側の雪面から大きくまとめて巻いて中央稜3稜の頭に出た。この辺りからは稜上にも雪が多くなり、eisenが気持ちよくかかる。ところどころ出ている岩は相変わらずコンクリートされておらず、油断すると落石を起こしそうになる。ここからピークまでが予想以上に遠く、ルートが単調なだけにアドレナリンにも期待ができず、以外と時間が掛かってしまった。が、北稜上部から見る白馬鑓は、鑓の名に恥じず、なかなかといい形のピークで、小ぶりながら美しい。天気もいいのでペースが上がらないことには目をつむって、のんびりと登ることにする。今日は限りなく天気がいい。いくらでものんびりできる。 5/2 晴れ 風 B.C(4:30)-中央稜の頭-中央ルンゼ下降-のど-南稜(7:00)-白馬鑓(8:30)-B.C(10:00) 朝起き出して空を見上げると低気圧が近づいていた。サイクルが思ったより早い。もういい加減、里が恋しくなって来たが、明日になればみんな上がってくるし、みんなと一緒に1週間振のアルコールも上がってくるはずなので、今日も1日頑張ろうとstartする。朝からこんなことを考えているということはだいぶ気が抜けている証拠なのだが、この時は気合を入れ直したつもりで歩き始めた。 今回の山行も、早1週間目となり、雪の状態もルートの様子もしっかり頭の中に入っている。というつもりで杓子沢をトラバースし北尾根のBushの中をくぐり抜け、中央ルンゼを見送って南稜の取り付きにたどり着いたと思った。下部はBushがあまりにも濃いので、中央ルンゼ(当時は間違いなく中央ルンゼと思っていた)を登り始める。適当に雪面を詰めて、ひたすら登る。今日は気温は高いが風があるせいか以外と雪はしまっている。だいぶルンゼを詰めたころ、突然の様にtraceが現れた。このtraceは一体どこから登って来たのだろうと思いながらtraceを辿る。妙に歩幅が自分に会うな、と思いながら誰かの足跡を辿ると、どうにも見覚えのある場所に出た。 崩れると思った天気はまだまだ粘っており、視界はきいている。辺りを見回す。おかしい。これは紛れもなく昨日見た景色である。歩幅が合うのも当たり前である。 昨日の自分のtraceであった。これはまた北稜を登らなければならなくなるので、中央稜の頭まで行って中央ルンゼを下り、南稜を上半分だけ登ってピークに抜けることとする。中央ルンゼ上部は広い雪面で、快調に下れる。雪は安定しているが、中央稜3稜の基部を巻くようにして下る。ここから南稜を見ると丁度前半と後半を分けるように大きな岩峰が乗っかっている。これが南稜の右稜と左稜のJ.Pの直下になるのだろう。 この岩峰は越えてみたいので、(別に敢えて行くほどのものではないが、一応ここまでパーフェクトで来ているので、南稜だけ行けなかったらなんとなく悔しい。)この岩峰の下まで回り込んで短いルンゼを選んでそこから稜上に上がることとする。丁度そこは3稜の末端に当たり、いわゆる《のど》と呼ばれる極端にルンゼが細くなっているところで、各側面からの落石の跡が雪を茶色く染めていた。そこから取り付こうとしたルンゼにも落石の跡がある。日が当たってしまえば絶対通過できないが、今日はまだ7:00前で風もあり雪もしまっている。今のうちに一気に抜けようと、《のど》をかけ下り、ルンゼに取り付く。万が一の落石に備え、通り道から外れるようにルートを取って、一気に登る。40mくらいの登りである。半ばくらいまで登ったころか。注意していた方向とは全く反対の方から、突然ピンポン玉くらいの石が飛んで来た。気づいたのが遅かったため、体は避けたものの、ピッケルをもっていた手にかすめるようにあたり、石とピッケルの間に軽く挟まれるような格好になってしまった。最初はたいして痛みもないし気にせずそのまま登っていたのだが、尾根上に上がってみるとオーバー手から血が流れている。あわてて脱いでみると結構大きく傷が開いていた。痛みはアドレナリンのせいか気にならないが血が止まらないのには閉口する。赤布をさいて少しきつめに縛り止血をする。多少手の動きは制限されるがこの先特に難しい所もないので大丈夫だろう。 さて横から眺めた岩峰である。傾斜はゆるいがとにかくもろく瓦を積んだようなと表されるタイプである。ところどころハイマツが生えているのをホールドにしながら、できるだけ固そうなところに足を乗せていくが、それでも何ぼかは石が落ちてしまう。自分が落石に当たった直後であるだけにぴりぴりする。大きさはseil1p分もないのだが緊張する。慎重にこれを越えて再び単調な雪稜に出た。 稜線に出ると昨日より風が強い。北西方向の山並みはまだ姿を見せている。低気圧の動きは以外と遅く、まだ高気圧の縁にいるようだ。この分だと明日こそは雨だろう。まあ指も痛むしちょうどいいかと思いながら、東壁B尾根の偵察をしながら下る。後これさえ成功すればパーフェクトである。明日はみんなが上がってくる。それまでにはB尾根を片付けて、ゼリーでも作ってみんなを待とう。 5/3 曇り B.C(4:30)-B尾根-杓子(7:15~7:30)-B.C(8:15) 低気圧が雨を運んでくる前に上ってしまうことにする。昨日石にあたったせいで、杓子沢のトラバースが一段とこわい。雪崩のこわい斜面を体力任せに一気に登り切る。前回のトレースがところどころでぶりに寸断されているところが、いやでもペースを上げさせる。この前は簡単に取り付くことができたA尾根も末端に3~4mの大きなシュルントが口を開けておりそれがB尾根の末端付近まで伸びており、これをまとめて大きく回り込み、小さなシュルントをまたいでB尾根末端の急な雪壁に取り付いた。 B尾根は比較的尾根の形がしっかりしており。A尾根ほど雪崩の危険は感じられない。が、気を抜けないのは間違いない。休む間もなく一歩一歩トレースを刻む。雪が少ないせいで普段は出ていないであろう下部にも2つ大きな露岩帯がある。ハイマツをつかんで強引に抜けられそうだが取り付きがあいていていてなかなか近づけない。仕方がないのでB-C間ルンゼ側を大きく巻くことにする。斜面は結構急なので、岩の基部をできるだけ小さく巻こうとするのだが、シュルントに腰まで落ちたりして結局かなり大きく巻いてしまった。1つ目の岩のうえにはB-C間ルンゼ側に小さな雪屁が張り出しており、この下をトラバースするときはかなり緊張した。いったん尾根上に戻り一息着く。ようやく腰を下ろせる。天気は今日も何とか持ちこたえてくれそうだ。 次は双子尾根からもよく見える大きな岩峰である。ここはAB間ルンゼ側から大きく巻くことにする。そのすぐ上にも小さな岩が出ているのでこれもまとめて巻く事にする。ここの2つの岩も相変わらずぼろぼろで下を通過するのも緊張する。日差しが当たったらたちまち落石の雨が降りそう。小さなクレバスを避けながら尾根上に戻ると後は最後の雪壁だけである。傾斜もさほどきつい訳ではないし、上の雪屁も50cmくらいしか出ていないのでno seilで登る。小さくても雪屁を越えてぽっと稜線に顔を出すのはやはり最高に気持ちがいい。これで予定ルートを全て終えた。 双子尾根から小日向のコルを見下ろすと色とりどりのテントがだいぶ増えている。予想外に天気がいい。みんなの顔を思い浮かべながらのんびり下る。だいぶ暑くなっているので水をたくさん作り最後のゼリーを作る。お昼前には到着するだろう。 テントの中でごろごろしていると、「さんぺー」と小林さんの声がした。相変わらずトップでやってくる。いつまでも小林さんにトップを任しておく訳にはいかない。テントから顔を出すと続いてみんなが降りて来た。テントを立てて雪上訓練に向かう。双子尾根の末端がちょうどいい傾斜なのでそこまで上がる。城井さんに歩行の基本などを教えた後、みんなで滑落停止をする。その後、スノーバーやデッドマンなどさまざまな確保支点でビレーをする。なかなか荷重をかけてやったことがなかったのでいい勉強になった。 スノーバーが軟雪にたいしてこれ程役に立たないとは思わなかった。それからすぐ上にあったシュルントを切って、それを支点にしてabseilenをしたり荷重をかけてみたりした。これも自分で実際にやったのは初めてなのでいい経験になった。不安だったので1mくらいの大きなマッシュルームを作ったが、やってみると非常に安心感があった。降り始めるはずの雨はなかなか降らず、なかなか充実した雪上訓練となった。 5/4 雨-曇り 雨の中をみんなで杓子のattackに向かう。もう通い慣れたこの尾根も今日で最後である。来たばかりのころに比べ、ハイマツは大きく露出し、日に日に拡がるクレバスのためにルートも大分変わった。さすがに1週間以上山に入っていれば、山もさまざまに姿を変える。明日は下界に戻る。 5/5 雨 昨日いったんあがった雨は夜になって再び激しく降り始め、下山日の本日は最悪の朝になってしまった。待っていてもきりがないので、土砂降りの中テントを撤収する。視界が全くないので、来た尾根を忠実に下る方針で歩き始めるが、一瞬視界が開け、猿倉の台地を見渡すことができた。今歩いているところからちょうどうまい具合に雪面が台地まで続いている。一気にグリセードで下る。荷物の軽い小林さんは目茶目茶快調そうであるが、重荷を背負ったぼくにはなかなかしんどい。が、雪はほどよく腐っており、久しぶりにまとまった距離を滑り降りるので、重さも忘れて快調である。ところどころに開いたクレバスも適当に避けて行ける。野兎が2羽滑り降りる僕らの横を、驚いたように跳びはねて行く。あっと言う間に下までたどり着いた。雪は少なかったがまずまずの合宿であった。 Home > 山行報告 > 会報26号 > 97春合宿 白馬三山 |