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白馬岳主稜      
  平成8年(1996年)5月5日〜7日  青谷 晋行  
  メンバー 青谷単独     
コースタイム 5月5日 夜行            
5月6日 猿倉 0645発〜7、8のコル 1100〜P6 1200発〜1530 白馬岳発
            〜天狗原 1800着 
5月7日 0500発〜栂池 0800発〜白馬大池 0830〜下山 

 5月6日 くろよん号に別れを告げ、眠い目をこすりながら早朝の白馬駅に一人降り立つ。
前回(3月)の同ルート敗退もあり、今回はすべてにおいて準備万端だ。3月と違って、さすがに林道の雪は大分とけてしまっていて、タクシーも猿倉直前までは行ってくれる。それに5月ともあり、至るところにトレースの跡が見られる。前回8峰までの雪の斜面をあえぎあえぎ登ったものだが、今回は淡々とペースも快調に進む。それでもあちこちにデブリの跡があり、天気もいいので雪崩を警戒しながら一気に7、8のコルまで行く。とりあえず、大休止とする。空を見上げるとピーカンの一言だ。白銀に輝く雪がとてもまぶしい。今回はすべてにおいて準備万端でないのに、この時初めて気がつく。そうだ、サングラスを忘れてきてしまった。ここまで来て気がついてももう遅い。まあ、目を細めて歩けば、それに今日一日の事だしと、軽く考えてしまう。実はこれが、翌日になってとんでもないことになってしまうということが、このときは知る由もなかった。

 大休止のあと、心新たに主稜線を白馬頂上へ向けて進み出す。ラッセルすることもなく、前回敗退した6峰も楽勝で越え、P4にて先行パーティに追いつき追い抜く。次第に先程までのピーカンとは打って代わって、どんどんガスって来る。P3ではあっという間にホワイトアウトとなる。その間にも今度は白馬沢野方で、雪崩の音がする。少し気味が悪いところだがピッチは快調に進む。やがてP2直前となり、右側から巻く。その後、雪壁を1ピッチでP2の頭へ。その後更に今度は80度近い雪壁を1ピッチ半で最後の雪庇を抜けると待望の白馬岳頂上に躍り出た。すごい風だ。黒部側はやっぱり違うなと思った。ザイルをしまい、ガスの晴れ間から展望を楽しむ。

 後のパーティが頂上に到着。お互い記念撮影をしてすぐ下山にかかる。強風に気をつけながら、短いようで長い道のりを天狗原へ下る。一人楽しく山の歌を歌いながらジフィーズを作る。とりあえずこの日の夜までは大丈夫だったようだ。
 問題は日付けが替わるころからだった。何か少しずつ目に突き刺すような痛みが走り始める。最初はコンタクトレンズの疲れかなと思っていたが、朝方になるにつれて、これは普通やないなと思い始め、ひょっとしてと思った時にはもう後の祭りだ。テントを撤収し、夜明けと共に栂池へと下山を始める。でも、目が開けていられないので思うようにピッチが上がらない。痛くていたくて涙ぼろぼろ、本当につらく悔しい思いでの下山となる。行きはよいよいだったのに。歩くことすらいやになってしまう。林道をはずしてリフト沿いにまっすぐ下ることにする。どのようにして白馬大池駅まで下っていったかはよく覚えていない。ただ長くつらかったぐらいだろう。とりあえず松本で目薬を買って指すとまったく反応なし。泣きながらの汽車帰神となる。
 こんなことはもうこりごりだ。身をもって体験した今山行の感想は完登の喜びよりも帰りの苦しみの方が大であった。
最後に一言、雪山には、冬、春、問わず、必ずサングラスを持っていきましょう!!



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