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槍ヶ岳 中崎尾根 
2002年12月29日〜31日  橘(記)    L橘 SL青谷 大西 池内 岩瀬

 計画には無理がなく、天候にも恵まれたが残念ながら敗退となってしまった。
 12/27(金)22時 阪急武庫之荘集合。名神から東海北陸道経由で新穂高に入る。(翌4時到着)

12/28(土)9時出発。蒲田川添いを延々と槍平まで、途中5回ほど休憩を入れながら歩く。(15時到着)冬季小屋が開いていたので中にテントを張り、快適な一夜を過ごす。夜中、自分の家で寝ている夢を見るほどだった。

12/29(日)4時起床。6時出発。槍平テンバからすぐ中崎尾根に取り付くが昨日まで明瞭だったトレースが夜半の雪で消えてしまい、膝上くらいのラッセルとなる。中崎尾根合流9時。2300M辺りで後続パーティに追いつかれ合計10人のラッセルとなるがすぐに前夜から入っている大学パーティのテントに着き、そこからはトレースがあり、スピードが上がる。
 2500M地点到着14時30分。ここでC2とするか迷ったが西鎌尾根はそう起伏もなく、天気も晴天なのでジャンクションピークを越えて距離を伸ばすことにする。しかしここまでラッセルが続いたのでかなり体力は消耗していた。JPまでは岩稜帯直上と右上へトラバースするルートがあるがトレースがあり雪も安定しているので後者をとる。
 西鎌尾根合流16時。 西鎌尾根上は風がきついが数カ所に6テンをはれる所があり、このころはまだ余裕でどれにしようかなといった所だった。最後のテント適地と思われるところでここにテン張るかヘッドラを付けて槍の肩まで上がるかを協議する。ここが勝敗の分かれ目だった。
 L、大西はここで落ち着く、SLは絶対に槍の肩まで行くべきの意見。朝からのラッセルで消耗しており、且つ先を急がねばならない理由もないためここでテントを張るべきだと思ったがSLの主張につい色気が出て納得してしまった・・。結果的にはこの私自身の欠点ともいうべき「優柔不断」・「のぼせ上がり」の為、SLの二回目の経験からくる主張に反論できずにGOと決断してしまった事がすべての失敗の原因である。
 17時を過ぎた時点で先頭を歩いていた私はルンゼを登るべき所を左の岩稜帯に入ってしまった。登れないことはないが新人が暗い中で登るのは危険だと判断して、下に叫んだ。「最後のテンバ適地からはまだ12,3分しか進んでいない。陽が沈みどんどん寒くなる状況で上部へ登るよりも下へ降りた方が安全だ」「おーい!もう降りよう!最後のテンバでテン張ろう!」
 しかしSLから帰ってきた声は「何でや?絶対に上まで行った方がええ!」お互いに上へも下へも決着がつかず、最後に着いた妥協点が「雪のルンゼの斜面で6テンを張る」という事だった(18時30分)なんとか5人が座れる平地を整地するのに1時間ほどかかってしまった。もう完全にビバークの状況である。朝まで狭いテントとツエルトに分かれてくるまり、長い夜を過ごす。

12/30(月)7時、太陽も顔を出した。もうこれは完全に失敗山行で、滑落者が出ていないだけでも幸いである。はじめは今日、槍を経由して飛騨沢下降も頭にあったが色気を出さずにこのまますごすごとこのルンゼ(出だしはやや急だが)を下降し途中より飛騨沢に合流して槍平に戻り、完全休養する事に決定する。一晩のビバークは体力も気力も奪う。特に斜面の端でツエルトに引っかかって過ごした体はカチコチで震えが止まらない。
 意を決して斜面を降り出すと次第に体がほぐれていった。くたくたの身体を引きづって槍平に着いたのは13時だった。

12/31(火)4時起床、6時30分出発。本日はもう帰るのみである。
悔しくて情けない気持ちで一杯だが軽い凍傷のみで戻って来ただけでも良としよう。帰路、大西さんとリベンジの時期について話し合う。
 10時新穂高駐車場着。12時橋の下の露天風呂(ぬるい)に浸かり、さあ帰ろうと思ったら車の鍵の閉込みのためJAFを呼び2時間待ちとなるおまけまで付いてしまった。

反省点
1。なんといってもリーダ(私)の決断力、統率力、行動力に不足が
  あった。自分の不足な点は自覚している積もりだったが肝心な場面で
  頭に血が上り、とんでもない行動をしてしまい、新人諸君を危ない目に
  遭わせてしまった。この場を借りてお詫びします。
2.ビバークを決めた時点で、ヘッドラを付けてなぜ上に上がらなかったの
  かという意見も承知するが、その時点でなぜ10分少し降りれば戻れる
  最後のテンバに引き返せなかったのかという強い自責がある。登る決断
  より降りる決断の方が遙かに難しいということを改めて思い知らされた。
  前へ進むことはもちろん大事である。しかし、今一度足下を見直し、
  たばこを一服し、何のために我々は山へ登っているのかを考える余裕を
  持つことも大事である。危険を冒し、急いで登るだけが登山ではない。


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