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大山とエビの尻尾   
2003年01月11日〜12日      須川 雄司(記)

メンバー  岡島伸浩 岡島祥愛 岩瀬裕紀 須川雄司
ルート   1月11日  (大山寺〜元谷小屋)
       1月12日  (元谷小屋〜上宝珠越〜剣が峰 往復)
1月11日
 朝9時にJR加古川駅に集合。岡島さんの車で加古川バイパス〜播但道(福崎)〜中国道(落合)〜米子道(溝口)軽自動車で3500円位、加古川から3時間程で大山溝口インターチェンジに着く。ここから20分ほどで大山寺までつくが冬季はタイヤチェーンが必要。また、途中でコンビニも商店も無いので高速に乗る前に買出しを済ませておいたほうがよい。
(車窓からの大山

 昼時でおなかもすいたので町のうどん屋さんで腹ごしらえをする。ここは3連休だというのに人も少なく、どことなしに寂れた感じがする町だ。今日は元谷小屋まで1時間ほどの行程なので気持ちが軽い。灯篭が並ぶ静寂とした森の中で、真っ白な雪の上を踏みしめて歩いていると心が洗われるようだ。大神山神社に着き、今回の山行の無事を祈願し休んでいると、神主さんが横笛を吹きだした。いつのころからか日本古来からある、音や色に気持ちが和むようになってきて自分も変わってきたなあと、しみじみと想う。
 だんだんガスがかかってきて視界が悪くなってきた。元谷小屋を見落としてしまい、行き過ぎたところで岡島さんに呼び止められる。一度来たことがあるのに情けない・・・。
 小屋の周りをキレイに整地してブロックも積み上げテントを張った。ここは水もチョロチョロだが出ておりベースキャンプにするには最高だ。僕と岩瀬君とでブロックを積むが少し高くなるとすぐに倒れてしまいうまくいかない。岡島さんにブロックの面をノコで揃えて積む事を教えてもらい、何とか完成した。祥愛さんが用意してくれた、キムチ鍋を突付きながら大いに食べて飲んで楽しい夜を過ごした。

1月12日
 4時起床、今日もあまり天気が良くないみたいだ。6時にヘッドランプを点けて出発。剣が峰までの往復なのでテントは建てたままにしてアタックザックで行く。正月は重い荷物を1日中担いでいたので、この軽さはありがたい。
 岡島さんと祥愛さんは山スキーで僕と岩瀬君はワカンを履く。昨日の風でトレースは無くラッセルを強いられる。山スキーの後をワカンで追いかけるが沈んでしまいなかなか追いつけない。
 砂すべりのところから大山北壁が少しだけ見える。びっしりと雪がついていて難しそうだ。ここから上宝珠越への夏道を探すが同じような沢がたくさんありルートが判りづらい。砂すべりから一番左に見える沢を登ると尾根に取り付けるのだが、岡島さんに教えてもらうまでもう一つ右の沢を登るのだと思い込んでいた。まだまだ読図の勉強をしなければならない。

(上宝珠越から稜線に上がる。後方は三鈷峰)


 この尾根に上がるまでが急登でラッセルが苦しい。雪の状態が悪ければ雪崩の危険もありそうなところだ。上宝珠越を越えたところでワカンとストックをデポしてアイゼンとピッケルに切り替える。ザックも軽くなり気を引き締め直す。夏道ではユートピア小屋まで行くのだが、冬季は小屋まで行かず天狗ヶ峰に続く尾根に直接取り付ける。ここも雪崩の危険がある。天狗が峰から剣が峰までは細い稜線が続き登攀意欲を掻き立てられる。エビの尻尾もビッシリと付いている。

(天狗峰から剣ヶ峰へと向かう)

 晴れ間も覗いてきて大山の北壁がハッキリと姿を現した。全体に切り立って雪が付き迫力満点だ。別山バットレスもかっこいい。昔、彩ちゃんと別山バットレス中央稜を初めて冬季のバリエーションをつるべで登ることができた思い出のところだ。写真を撮ろうと先輩からいただいた一眼レフを取り出し、数枚撮るが、なぜかシャッターが下りたまま上がらない。せっかく持って上がったのにと嘆きつつ岡島さんと岩瀬君に撮ってもらう。

(剣ヶ峰への稜線)

 剣が峰のピークまでは、ほんの20Mほどだが強烈なナイフリッジになっておりザイルを出す。ここだけはガスがかかっており先が見えない。岡島さんにビレイしてもらい馬乗りになって通過し、なんとかピークに立つ事ができた。岩瀬君をスタンディングアックスビレイで確保していると後から2人組の男の人が上がってきて「トレースありがとうございました」とお礼を言われた。僕らは剣が峰までだが2人は弥山まで行くそうだ。ここから弥山までは強烈なナイフリッジが続くので視界が悪い時は難しそうだが、その2人組は僕らがザイルを出して馬乗りになって通過したところをノーザイルで立ったままスタスタと歩いていった。後で岡島さんが「あの人は多分ガイドの近藤さんやで」と言っていた。どうりでなんだかオーラが出ている感じがした。

(剣ヶ峰の頂上に立つ須川と岩瀬。頂上直下のナイフリッジでアンザイレン)


 ピークからの下りは3ピッチほどザイルを出した。スノーバーで支点を作りザイルをフィックスしプルージックで降りる。むかし八ヶ岳のバリエーションを登った時、吹雪でコールが聞こえず困ったことがあったので、今回は無線を2台もっていき上と下とで通信しようと試みたがスキー場の無線と混線してしまいあまり役立たなかった。
 三鈷岳や弥山のパノラマを目に納め、今度大山に来たら剣が峰から弥山の縦走と大山北壁を絶対登るぞとエビの尻尾に誓いながら下山した。

(アタックを終えて一息
       (上宝珠越から元谷への下山)




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