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槍ヶ岳山行をふりかえって
2002年12月28日〜31日  青谷晋行(記)
L:橘 SL:青谷  気:大西   会・医:池内   装:岩瀬

12/27 21:30 橘邸を出発(ドリーム青谷号)
12/28 新穂高温泉04:00着  09:00出発

 クリスマスから続いていた冬型気圧配置もやっと緩み始め明るい陽射しの中、雪の林道を遠く「槍」を目指して歩きはじめる。
 途中近道を通り穂高平でまず一本とる。本当に天気もよく遠く南岳の稜線まで白い峰々が美しい。昨年並みの雪の量で、槍平から先の行程をいろいろ思いながらひたすら雪の道を歩く。
 初めての冬の槍を計画したリーダーのたっさん、久しぶり?の雪を踏む大西さん、冬のアルプスをマジで体験しようとしている池内君、そしてなにもかもが初めての全身をモンベルで統一した岩瀬君。
 雪の道を一歩一歩、この瞬間みんなどんな思いであるいているのだろうと思いながら白出の出合、滝谷出合、と前進していく。途中、滝谷に入る2人パーティを滝谷出合で見送る。取付きまではかなりのラッセルがありそうだ。槍平の手前、ブドウ谷、チビ谷の出合の雪崩に神経をとがらせながら一気に横断する。いくつものパーティとすれ違い、追い越し、追い越されながらようやく15:00槍平に到着。
 明日からのラッセル等、体力温存も考え冬季小屋に入り、中でテントを張る。外にはテントが数張、小屋内には2,3人のパーティがいた。16:00天気図をとり、夕食の準備にとりかかる。明日は又、冬型が強まり、後半は弱まっていく、という予想であとはラッセルがどのくらい続くかなあとか、千丈沢乗越を越えて一日で槍の肩に着けたらなぁなどと話しながら、それはおいしいおいしいキムチ鍋をみんなで舌鼓を打つ。

12/29 04:00起床 06:00出発
 しょっぱなから小屋泊のおかげで快適な睡眠がとれ、朝飯もうまく全員元気いっぱいで中崎尾根に取付く。昨夜から降り続いている雪で、あっただろうのはずのトレースがほとんど雪で埋まっていて途中からワカンをつける。みんな交代でラッセルをするもなかなかピッチが進まず、奥丸山の右肩に出るまでちょうど3時間のアルバイトだった。さらに中崎尾根の稜線もラッセルは続き、途中から後ろのパーティが追いついてきたので合同でラッセルを続ける。先頭はザックを置いて空身でトレースをつくり、又、最後尾にまわるという人海戦術で前進していく。
 人がふえた分さすがに前進するスピードが早くなり、しかも2300M地点あたりからはそこをベースにしていたパーティのトレースがはじまり、2500M地点へと急激に近づく。目前にせまった千丈沢乗越を仰ぎ見ながら大休止する。時計は14:30を少し回っている、天気がいいのとみんなのがんばりで西鎌尾根へとつなげる事にする。乗越までは短い雪の斜面の急登だがけっこうつらい。
 16:00頃西鎌の岩稜帯に差し掛かる。しばらく進むとLはもうここでテントを張ろうというが僕はこんな風の通り道よりも日が暮れる頃には槍の肩につくだろうし皆の体調をふまえ意見具申した。するとL肩まで一気に行く!スピードアップ!と気合いをいれる。ルートは正面の岩峰を右から巻くように雪面にしっかりとトレースが槍の肩へついているのが見える。
 しばらく岩稜帯を進み、岩と雪のいやらしいトラバースをすぐそばの池内君をフォローしながら進んでいると先頭で先の岩峰に取付いているたLが引き返す!と叫んでいる。Lのすぐ下には、続いて岩瀬君が登っているし岩瀬君もまた、降りるのに手間どっているようだ。
 夕日が沈んでしまった時だ。どうやらルートを間違ったらしい。5人が合流後、Lがもう一度乗越のテントを張れるところまで引き返してそこに泊まるという。しかし僕は陽の落ちたいやらしい岩雪のトラバースをするよりもこのまま雪の斜面をもう少し登って夏通に出て肩の冬季小屋に入った方がベストではないかと、また意見具申した。
 とりあえすもう少し進むことになるもいきなりここでビバークすることに。僕はなんでまたこんなところで、と思ったが天気も悪くないし特別悪い場所(雪崩や落石の心配がない)じゃないし、Lに従う。60度くらいの斜面を切り出し整地するもなかなか5人が落ち着くスペースをつくるのは難しく途中スコップを落としたりノコギリの袋を風にさらわれたり、手足もかじかんでくる。とりあえず5人が座ってビバークできるスペースを確保し、2人と3人に分かれてツェルトやテントを上からかぶり、ビバークする。足をシュラフに入れたり飲み物をつくったりレーションを食べたり、時折言葉を交わしあいながらも窮屈な姿勢で一夜を過ごす。

12/30
 朝から晴天でビバーク地からヒダ沢へ降りるも、上部は雪がしまっていて新人を含め降りるのに一苦労している。宝の木近くで新人と滑落防止の練習をする。この日は皆疲れていることもあり槍平の小屋で一泊する。4人が手に軽い凍傷を負った。13:00着

12/31 06:00出発
朝から新穂高温泉を目指して一気に駆け下りる。10:40下山

 今山行の反省点としてはまず、全員での細部に渡っての綿密な計画がなされていなかったことが挙げられる。
 そして自分があれこれと意見具申したことによってリーダーを困惑させてしまった。最初からリーダーの指示に素直に従っていればこういう結果にはならなかったと思う。しかし、自分はガイドでも何でもない。人の意見に振り回されるのではなく、リーダーとして先の見通し(ルートの状況、天候、パーティの力量、時間配分等)を考案した上で的確な判断、決断力がもっと必要であると思う。
 新人は2人とも、テント生活から行動に至るまで多くの経験をしたが、これから冬山を目指していく第一歩としてそれぞれ、冬山の厳しさをふまえ、いろいろな事を習得できたと思うので、今山行で学んだ事を次回へいかせていってほしい。
 最後に、下山後、温泉でぬくもった後、さあ帰ろうと一足先に車を暖めておこうと行ってみたら、な、なんとドアが開かない!!最後の最後にJAFが来るまで車の前でビバークするはめになり、今山行の幕は閉じるのであった。心からお詫び申し上げます。


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