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京都北山 八ケ峰          2005.3.21 橘(単独)

 会の例会のつもりで京都福井県境の八ケ峰を企画したが誰も参加者がいない。仕方がないので一人で行くことにする。前夜10時、嫁に見送られて伊丹を出発。世間は3連休なので夜でも結構車の量が多い。篠山11時着、美山町には12時着。

 地図で確認しながら知見の集落にたどり着いたのは翌12時半だった。有り難いことに3月の終わりでも結構雪が残っている。ワクワクしながら車で仮眠する。あっという間に眠りにつき、朝6時に目覚める。
 辺り一面の雪景色に3月の陽光が非常にまぶしい。あんまり景色が良すぎてスキーのかかとを浮かしながらどんどん景色のいい方に進むが様子がおかしいので地図をよく見ると登山口と逆方向へ進んでいた。又小一時間ほど戻って、登山コースを登る。標識や赤テープはほとんどない。

 登ること約50分で今回のメインである八ケ峰スキー場跡へ到着する。噂通りに朽ち落ちたスキー小屋があり、雪の重みで時折ばりっと不気味な音を立てている。辺りはここをどうやって滑るのかというような樹林帯で、営業していた頃は木々がなかったと考えると3,40年前に栄えたスキー場なのでは等と考える。考えていても仕方がないので早速シールを外し小屋前に荷物をデポし、スキーの練習に取りかかる。しかし朝の雪面は氷のように堅く、エッジが聞かず、木々も邪魔で全然うまく滑れない。(元々うまく滑れないが) 

 直線距離150m程の斜面を2,3度往復する内、気温が上がってきて雪も溶けだし多少板のエッジが効くようになってきた。初めて乗ったロシニョールの160p板はなかなか軽くて柔らかく扱いやすい。そのうち、滑る練習か転ける練習か分からなくなってきたので10時30分に練習を切り上げる。そのとき気づいたが自分で付けたビンディングのねじが緩んできている。 しっかり締めたはずだがやや穴が大きすぎてねじが馬鹿になったか。ええいままよ、取れたら家にあるあと3,4本の板に付け替える迄よと更に上を目指してシール登高する。

 ここまですべて処女雪を踏み散らしての進行なのでやたらと気持ちがよい。上部も相変わらず道標や赤テープがなく、地形図は必須だ。やがて雨量観測計が現れ、人工物にがっかりしながらも安心し、そこからやや東向きに進路を変え、原生林の多少うるさい藪を越えていくと稜線に出た。その稜線を東へ行くと八ケ峰だ。西へは遙か向こうの頭巾山までうねうねと雪の稜線が続いていて食指が動く。

 またあちこちに獣たちの冬眠跡が有り、雪の穴を覗いてみると奥の方で木の根の下に快適そうなねぐらがあった。このねぐらで寝ていた主は熊か、猪かと想像してみるが、熊の親子なんかだったら大変だ。熊に会わないようにスキーをばったんばったんさせながら進む。途中で王子動物園のような匂いのする一帯もあった。此の辺りは人間よりも野生動物たちの住む領域のようだ。さて稜線上は緩やかでひろく、山スキーには丁度よさそうだ。1時間30分ほどで山頂到着(12:10)。

 天気もよいが八ケ峰からの展望もまた素晴らしい。290度くらいぐるっと見渡せ、しかもほとんど民家や町並みが見えない。延々と北山の稜線が見渡せ遙か北には若狭の海も見える。数日かけてこの山域の山々をスキーで繋げたら最高だ。冬はやや厳しそうだが3月ならもう、気分は春山だ。銀マットを敷き、スキー板を重しに乗せ、特製チキンラーメンを食す。もう、泣きそうだ(嬉しくて)。食後のコーヒーを飲み終え、しばし読書でもと思ったが本は持ってきてないので昼寝をすることにする。

 仕事の夢ややや春めいた夢などを見終え気分良く午後二時下山とする。それにしても快適すぎる。しばらくはシールを付けたまま頂上から降りる。シールがうっとうしくなって外そうとしたときに二人の夫婦登山者がやってきた。今日初めてみる人類だったのでややびっくりした。(今までこの山域にいる人間は自分一人だけと錯覚していた)。山頂脇にラーメンの汁を少し捨ててきたがこの絶景で後続の登山者に少し悪いことをしたかとも思ったが今まで処女雪の行程だったので二番手のトレースでは仕方がないことかとも思った。

 さて、シールを取り払ってからの滑降は楽しかったがすぐに藪に掴まり、スキーを外すのを余儀なくされる。ここでも今度の板は前の板(カザマのアウトバックという奴。異様に重くて固かった)に比べて軽くて短くて山には最適だ。藪を越えて、雨量観測計の辺りからまたスキーを履いて降り出すが狭い登山道で股が裂けそうなほどプルークボーゲンで耐えるが何度転けたか分からなくなってきた。(別に最初から数えてもいないが)

 スキー場跡へ付いた頃には転けすぎて耳の渦巻き管が麻痺したか立っていてもすぐ転ける。 しばらく下りたところで潔くスキーを脱いで担いで下りる(実際この方が早い)車まで戻ると時刻は午後3時過ぎで、近くの美山自然文化村というところに風呂を浴びに行くが3/31まではリニューアル改装中ということでそのまま車を運転してまた3時間半かけて家まで戻る。美山町の合掌作りの観光地は客で一杯だったがいかにも作り物という感じであまり雰囲気はよくなかった。

notes:
 今回のロシニョールの板はなかなか良かった。ビンディングを板のセンターから5p位 後ろに付けたが特別に性能低下はないと感じた。スキー歩行時での藪こぎには前に重心が あった方が扱いやすい。逆に深雪では重心が後ろに行くので自然とトップが上がり雪に 潜りにくい。それにしても初めて買ったカザマの板は堅くて重くて全くダメだった。
  北山最深部の原生林は野生の匂いが濃い。途中、熊捕獲用の檻なども有り、ギョッとさせら れる。稜線沿いにかなりの距離をスキー縦走できる。積雪期にツエルトとスキーで2,3 泊山行すれば、もう人間世界には戻られないのではと思います。



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