黒部横断 残雪期登山

山行日
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山域、ルート
黒部横断
活動内容
残雪期登山
メンバー
青谷 森

黒部横断 残雪期登山 山行記録

4 /26 大田原 5:30 ~赤岩尾根取付6:40~冷冬季小屋13:00

曇り → 雨 → 雪

雨の中の赤岩尾根からスタート。昨年よりも残雪多く、各沢はまだデブリがなくまるで3月の山のようだ。しかも雪の状態は大変悪く、雪崩があちこちで発生している。稜線直下はトラバースを避けダイレクトに稜線へ。ガスが濃く、風雪が強まる。雷も。冷池にて行動を打ち切る。冬季小屋にて濡れた物を乾かしながら翌日からの鋭気を養う。一晩中風雪が続く。

4 /27 出発 5:45~南峰 9:00 ~牛首山 10:20 ~1250m 19:20

快晴

明け方から風が弱まり天気は回復。視界良好。出発するも稜線にはどっさり雪があり、膝までのつぼ足で進む。雪庇に気を使いながら布引岳へ。ここから南峰まで夏道伝いで。はるか遠くに剣岳が・・・。(本当にたどりつけるのか?)

昨年、敗退した南峰にて二人で痛い思い出を回想しながらコンパスに高度計をセットし、気合いを入れ未知への牛首尾根へと下降する。右に左に雪庇がでかい。常に下方の状況を観察しながら丁寧に下る。牛首山は東西に広い。2300mからは2重、3重山稜だが視界も先の見通しもいいので最短ルートをとって2000mまで難なく下る。途中、熊の足跡があり超オドロキ!熊よけ鈴をより強く鳴らしながら行く。

2000mまでは右に東谷へ、左は十字峡への支稜なのだがはっきりわからずコンパスの方向へまっすぐ進む。1600mから1400mの間は右に東谷への支稜が次々に下りていて、ブッシュのひどい本稜を少しでもはずすと知らず知らすのうちに入ってしまうところだ。ポイントは視界があれば1500m付近からは左下の関電の二階建鉄筋コンクリートの屋根が見える、本稜はここから大きく右へ曲がるも50mも降りるとすぐまたそれまでのライン(左に振る)へ戻るところだ。1350m付近では右側に岸壁が東谷へと落ち込んでいる。なお、このあたりには12畳くらいの建物の跡があり、そこを経由して急斜面を懸垂した。黒部川まであと400m。ココデイロイロアッテそして日も暮れたので幕を張った。1250m。

4 /28 出発 5:00 ~S字峡11:30/12:30 ~ ガンドウ尾根取付 13:30~1250m 17:30

晴れ

夜明けと同時に下る。さあ、あと1時間か2時間か・・・非常に甘かった。1200mあたりから地形全体が南北に長く、はっきりした尾根がなく、しかもブッシュにガレ場とひどく荒れていて斜面も急でルートファインディングがとても難しい。懸垂を交えながらもウロウロする。結局、1100mあたりで主稜からはずれて東谷への支稜に1本入っているのに気づき、危うく修正する。そのトラバースのとき大きな落石をかわす。

大きく左に振ると黒部川の流れが見えだし、足下にS字峡が東西を分けているのがはっきり見える。さらにブッシュのひどい本尾根を懸垂でどんどん下る。そこらじゅうに廃材が散乱している。最後の懸垂でやっと東谷の河原に降り立った。合流点から東谷上流へ約200mほどの地点だ。かろうじて徒渉の準備ができるスペースがあった。しかし、下部でこんなに苦労をするとは?最後まで主尾根を確実に下ることが最大のポイントである。

それにしても東谷の「水」は本当にうまかった。徒渉はひざ下まで、川幅7~8m位。念のためザイルを出して渡った。大休止の後、傾いた吊り橋をザイルで確保して対岸に渡る。ガンドウ尾根の下部はブッシュとガラ場の急斜面で悪く、6Pをスタカットで登る。1250mで行動を打ち切った。

4 /29 出発 4:30 ~ 1800m JP~1900m 14:00/15:00~南仙人山~コル 2530m 19:00

夜明け前に出発するも小雨が降り出す。JPまではシャクナゲのジャングルなどのブッシュ、シュルンドからブッシュへの移り、小ギャップなど、こまめにザイルを出して高度を上げる。高曇りではあるが冷たい雨が降ったり止んだり。JPから快適な雪稜が待っているとのことで期待したがいざ着いてみると驚きだ。右は雪崩そうな不安定な雪の斜面、左は今にも崩れそうなキノコ雪で覆われた雪庇がずっと先まで続いているではないか。

しかし、ここでじたばたしてもどうしようもない。この不快な雪稜を少しでも弱点をつないで特に悪い所はスタカットで前進する。2150mからは尾根も広くなり、どこでも泊まれるが風も強いのでもう少し進む。南仙人山を過ぎたコルに穴を掘ってテントを張った。裏剣の山並はすぐ目の前だ。

4 /30 出発 6:00 ~ 仙人池ヒュッテ 7:00 ~ 仙人池 9:30 ~ 小窓谷取付 9:30~ 小窓 12:30/13:00 ~馬場島 16:00 下山

快晴 → 曇り

朝からピーカンだ。、南仙人山へ登り返し、360度の展望を楽しむ。仙人ヒュッテまでの雪稜は昨日とうってかわって雪もよく締まり快適だ。ヒュッテの赤い屋根が少し出ていた。仙人山へ登り、ダイレクトに池ノ平へそして小窓雪渓へと一気に降りる。途中、初めての人の姿(スキーヤー)を見る。小窓へは思ったよりも早く、昼についてしまった。翌日は下り坂ということもありそのまま西仙人谷を下降、夕方に馬場島に下山した。西仙人谷は側面からの落石や雪崩に気をつけたいところだ。

反省点及び感想

  • 今回は初の横断で成功できたが、次からはやはり予備日を2日以上、3日を実際に行動計画に組み入れるともっと余裕ができ本峰を踏み下山できるだろう。
  • 山行きを通して思ったことだが予備日はあくまでも予備日で成功の鍵はやはりいかに効率よく要領よく行動できるかが重要な事だと思う。
  • 黒部川を境に前半の牛首尾根の確実な下降(1日目に牛首山まで入っておくのが理想)→1日半は必要。その前の鹿島槍越えも決してあなどれない。
  • 冷池の沈はあとあと非常に影響するので予備日についてはよく検討しなければならない。
  • 後半のガンドウ尾根はとにかく前進するのみだが不安定な雪の処理、ルートどりによって個人の雪上技術により大きく時間差がでる。
  • 南仙人山まで前進さえできれば、あとはなんとでもなるって感じ。
  • 小窓までは池ノ平山への登りが不安定な雪でもありまた時間短縮を考え小窓雪渓を上がった。→側壁からの雪崩に気をつけたい。
  • 西仙人谷は滝もすべて雪の下で快適に下れる。ここからの落石、雪崩に気をつけたい。
  • 雪山ではスコップを1人1本を個人装備として持っていったほうがよい。

とにかく黒部は奥が深い。見渡す限り山だ。S字峡の谷も関電の人工物を除いては秘境だ。又、機会があればこの山域に足を踏み入れたい。