阿弥陀岳南稜 冬季アルパインクライミング

2010年12月11日(土)~12日(日)

岩瀬 崎間 宇都 佐藤 三浦 橘(記)


約25年前から計画していた山行が四半世紀の歳月を経て、やっと実現される時が来た。(大げさだが本当)。前夜10時、JR西宮駅を出発。途中何度かSAで休憩を挟み、午前3時過ぎ、舟山十字路に到着。早々にテントを張りさっさと仮眠。

午前6時過ぎ起床。本日の予定は青ナギまでなので焦る必要もない。午前7時過ぎ出発。旭小屋を経由して稜線へ上がり、青ナギへは午前11時頃到着。P1とP2のコルにもテンバが有りそうなので先へ進もうとも思ったが6天なので安全策をとり青ナギで沈する。どこでも張れそうだが雪が少なくサラサラで整地に苦労する。

午後2時から宴会を始め、食前酒の梅酒(食後にも最後まで余った)、本邦初公開のパエリア、オードブルのニンニクの唐揚げ、主菜の石狩鍋2発、食後のティラミス、口直しにリンゴの紅茶煮を食べ終わったのが午後6時で皆満腹で狭いテントで寝ることにする。(食当のSさん、ご苦労様でした)6人で寝ると狭いが非常に暖かく、汗が出るほどだった。しかし熟睡し過ぎて翌日は寝過ごす。

午前4時30分起床。狭いテントで装備を片付け餅入り棒ラーメンの作り方を伝授する。といっても餅を先に湯がいてラーメン投入の前に取り出すだけだが。午前6時30分、各自登攀具を付け、気合を入れて南稜への第一歩を踏み出す。

無名峰、P1,P2を越え、大きなP3に到着する。先行のI君に確認すると前のパーティがルンゼに取り付いているらしい。左に回りこんでルンゼを確認すると誰も登っていない。唯一残された一本のリングボルトに確保をとって準備していると尾根の反対側からやってきた3人組のパーティがさっさとダブルアックスでノーザイルで登っていってしまう。絶対に落ちるなよとか声を掛け合っていた。我々は初心者を伴い、しかもシングルアックスで落ちる確率が高い為、リードが1ピッチ伸ばし、ロープフィックスの後、後続がそれをフォローすることにする。

1P目をI君がリード。約45Mで大岩に打たれた確保点に到着。残りが一人ずつフォローで登る。やや時間がかかったが、安全上、仕方がない。1P目は出だしが少し氷結して難しいがそこを越えれば雪の階段で問題はなかった。

2P目、そのままラストの私がリード。左手用にバイルをI君から借りて登る。出だしの氷結部分は余裕で抜けたが上部で再び現れた氷にはびびった。なんせここまで35Mほどピンもなくランナウトしており氷も中途半端に薄い。右手に潅木が2本ありそれを目指して這い上がる。ガイド本にはⅡ級とあったが、登ってみるとⅢ級のフリーソロといった感じだった。しかし前の3人パーティはここも各自フリーで通過していたので感心しきりだ。支点の潅木から少し登るとまた傾斜が緩くなり、ロープを解除して登る。


P4手前を左から巻いて降りるバンドはやや狭く不安定だが慎重に乗り越す。巻き降りて再び上がる凹角に取り付くとここは容易でⅡ級とも思えないので歩いて乗り越す。そして最後に小さな岩場を登り雪稜を歩くと、待望の阿弥陀頂上に出た。頂上手前のロケーションはなかなか心憎い演出だ。山頂には我々だけなので各自写真を撮ったり、寝転んだり、好きなようにして過ごす。しばらくして女性二人が南稜を登ってやってきた。この人たちがなかなかで、中央稜下降では常に金魚の糞のようにくっ付いてきて、最後に道に迷った我々を追い越しさっさと登山道を歩いて降りて行った。

阿弥陀岳山頂からは御小屋尾根と中央稜それぞれに下降するトレースがあり、我々は少しでも早く降りれそうな中央稜を選択してトレースを辿ったが、やがてトレースが突然切れた。というか無くなった。いや、トレースはUターンしていた。(後になってから分かった事だが)雪山でトレースを辿るときは靴底の足跡の向きまで確認するべきだった。我々はトレースのなくなった地点に潅木があり、当然そこから懸垂下降したと早合点し、全員で降りたが、降りてみると真っ白な処女雪だ。この時点でなにかおかしいと感づくべきだったが、もやっとしたものを感じながら広いルンゼを歩いて降りた。しばらくしてまたトレースがあり、それを辿る。するとまた、無くなった。

I君と二手に別れ散開して降りるがどちらも絶壁に阻まれ、左側の壁を懸垂して降りる。このあたりから頭に血が上り始め訳が分からなくなってしまった。尚もS君と藪をこいでいるとI君より道は左に通っているとのコールが聞こえる。それに合わせて左へ水平トラバースするとやがて良く踏まれた下山路に出た。そこから2時間ほどで無事、舟山十字路に到着。午後4時30分。下山に思わぬ時間がかかった。西宮着午後10時30分。

NOTES:

  • 他パーティはすべて日帰りで南稜を登り舟山十字路へ戻っていた。行動時間は長くなるが装備が少なくて済みそうだ。ただ、神戸を夜発の場合、強行軍過ぎてしんどい。
  • また、青ナギで幕営だと初日に時間が余る。帰りを考えると初日に南稜を登りきり、阿弥陀と中岳のコル辺りで幕営(雪崩可能性あり勧められないが)、翌日は余裕があれば赤岳などにも登ってから、阿弥陀中央稜を迷いながらゆっくり降りて来るのが時間配分的には都合が良いのではないだろうか。
  • グリベルのエアーテックはピックの角度が氷にはいまいちだった。