北アルプス縦走(親不知~中の湯編)

2009年09月8日~21日メンバー:岩瀬

9月7日(始まり・・・)

台風は何とか東に反れてくれたようだ・・・。消えゆく寝台特急に乗る機会も滅多にないので、奮発して急行きたぐにのB寝台席を購入、期待と不安を胸に大阪駅で乗り込む。寝台席は、なかなか快適な空間で室内着やスリッパまである。ザックを傍らに横になって富山までぐっすりと眠れた。


9月8日(1日目)雨【計画:親不知~白鳥小屋】


日本海
栂海新道登山口
シキ割りの水場富山を過ぎたころにはもう起きていたのだが、糸魚川駅に着く前にわざわざ車掌さんが起こしに来てくれた。糸魚川駅で普通電車に乗り換え親不知駅へ折り返す。誰もいない親不知駅へ降り立ち登山口へ西に向かう・・・と今にも泣き出しそうな空からやっぱり雨、幸先のいいスタートだ(苦笑)。国道は、高速インター付近までは歩道があるのだが、その先はない。長距離トラックが轟音を立てて直ぐそばを通り抜けていくので心臓に悪いことこのうえない。冷や汗をかきながら栂海新道登山口へ到着。ザックをデポしてホテル横の苔むした急な階段を下り日本海へ(往復約20分)・・・決意を新たに登山道へ戻り登り始める。樹林帯の中の登山道をジグザグと登り始めるが、日頃の運動不足、大量の荷物と蒸し暑さで大汗をかき早くも挫折しそうになる。登山道は整備されているし道標もあるので迷うことはない。ただし雨のため所々にある泥濘で足元が泥まみれになってしまう。順調に坂田峠まで到着。しかしここから悪夢が始まる。いきなりの這いつくばっての200メートルの急登に、体力、精神力を使い果たしてしまう。登り終わった先に現れた汚れた沢にて半信半疑で水を汲むが、実はこの先にきれいな水が流れている沢があった。シキ割りの水場はここであろう・・・当然汲み直し。疲れた体を引きずってガスに覆われた先の見えない同じような景色の緩い登りを登れど登れど・・・いっこうに白鳥小屋に着かない。小屋ってまだかいな~!?と叫び、足元泥まみれになりながら歩きに歩いて漸く白鳥小屋が見えた時は正直ほっ?とした。坂田峠からのコースタイム2時間のところ、なぜか4時間近くもかかってしまった。小屋には誰もいなかったが、裏側にテントを張る。夕食を食べて就寝するもテントを叩く猛烈な雨に眠れず、午前0時頃やっと就寝Zzz…

コースタイム

親不知駅0615~0725栂海新道登山口~0735日本海~栂海新道登山口0800~1000二本松峠~1135尻高山~1225坂田峠~1440シキ割りの水場~1640白鳥小屋(行動時間10時間25分)

水場

シキ割りの水場:坂田峠からの急登を終えた先にある。手前の汚れた沢とお間違えないよう。

9月9日(2日目)曇り【計画:白鳥小屋~栂海山荘】


黄蓮ノ水場
白鳥小屋目覚ましをセットしたはずだが・・・、小鳥の囀りでふと目を覚ます。既に周りは明るい・・・寝坊だ・・・。あわよくば朝日小屋までと思っていたが早速挫折。朝食の雑炊をかきこみ雨に濡れたテントをうんざりしながら片付け出発。この日も樹林帯の中のアップダウン。登山道の泥濘と濡れた岩と木の根に四苦八苦しながら進む。下駒岳からの下りは結構急である。菊石山を下り黄蓮山の登りにかかる付近の東側の沢に黄蓮ノ水場がある。登山道から往復8分程で水量は豊富だった。この辺りはテント張れそうな場所がある。ガスで先が見えない樹林帯を越えて進むとひょっこり栂海山荘が現れた。歩き始めて4時間程だが朝日小屋まではどう頑張っても無理そうなので今日はここまでとする。山荘は立派な造りでヘリポートまである。傍らにテントを張って中でゴロゴロしていると朝日方面から男女6名程の中年登山者が山荘に到着。お酒を飲んでご機嫌なようで、皆で懐メロを歌いまくり・・・雲の切れ間から街の明かりが見えたーとかで♪街の明かりが・・・とブルー・ライト・ヨコハマを大合唱していた。懐メロを聞きながら就寝Zzz…

コースタイム

白鳥小屋0650~0815下駒ヶ岳~0850菊石山~0925黄蓮の水場~1125栂海山荘(行動時間4時間35分)

水場

黄蓮ノ水場:菊石山を下り次の黄蓮山登り始め付近の東側の沢の水。少し足場不安定な所がある。

9月10日(3日目)曇り時々晴れ【計画:栂海山荘~朝日小屋】


文子の池付近
黒岩平
朝日岳日の出少し前に出発。ここからは歩き易い稜線上のピークを次々と越えて行く。天気が良ければ快適な稜線歩きだろうが、ガスっていて展望が利かない。犬ヶ岳の次のピークを越えた鞍部に北俣ノ水場がある。登山道から苔むした滑りやすい石ころ道を5分ほど下れば水場だ。水を補給し先に進む。サワガニ山を越え、黒岩山に近付いた草原付近で漸く太陽が顔を出す。この辺りから黒岩平付近は雲上の楽園である。草原、湿地帯が広がり、最盛期はお花畑がさぞかし綺麗だろうと思う。ここから先は所々、環境省が設置した木道が整備されている。黒岩平の沢でも水は補給可能。黒岩平から登りが急になりしんどい。重荷にはかなり堪えた。途中のアヤメ平も展望の利くお花畑が広がっている。長栂山に近付くにつれ北西の風が強くなり鼻水が止まらなくなる。高山に来たな~という実感が湧く。強風の吹く長栂山越えて木道を進むと吹き上げのコルに到着。ここも北西の風が吹き抜けていく。東側の眼下には蓮華温泉の建物が見える。ここから上は風の状態は変わらず、体に容赦なく吹きつけ体温を奪う。気を取り直して朝日岳へ向かう。所々にマツムシ草等かわいいお花の咲くザレ場のジグザグ道をヒーヒー言いながら登り、雪渓を横切って朝日岳に到着!・・・が強風とガスで景色どころではない。寒いので早々に写真だけ撮って朝日小屋向けかけ下る。朝日小屋は見えてからが遠かった・・・。朝日小屋でキャンプ受付(1人500円、水無料)を済ませ広いテン場にテントを張る。本日のテント泊は僕1人。天気図をとると気圧の谷が近づいてきている。おまけに大陸から寒気が入り込んでいるという。道理で寒い訳だ。明日からは後立山連峰縦走だ。雨が降らないことを祈りつつ就寝Zzz…

コースタイム

栂海山荘0455~0625サワガニ山~0745黒岩山~1005アヤメ平~1045長栂山~1140吹上げのコル~1225朝日岳~1315朝日小屋(行動時間8時間20分)

水場

北俣ノ水場:犬ヶ岳の次のピークを越えた鞍部の涸れ沢を5分程下った所にある。岩が滑りやすいので注意。黒岩平:沢の水で汲める。朝日小屋:無料の給水設備がある。

9月11日(4日目)曇り時々晴れ【計画:朝日小屋~白馬頂上宿舎】


小桜ヶ原からの雪倉岳
鉱山道分岐からの白馬岳
白馬岳山頂朝食の棒ラーメンをかき込み午前5時頃出発、小屋からすぐの分岐から水平道へ。地図記載のとおり小さな登下降が多いので意外と時間がかかる。水平な道は全体の5分の1位?か。朝日岳の分岐点で一休みして小桜ヶ原の木道を進む。この付近の湿原も花の最盛期は綺麗なことだろう。水も汲める。燕岩のガレ場を越えると登りがキツくなってくる。目の前に聳え立つ雪倉岳にテンションは上がるが、歩くスピードは反比例して下がるばかりだ・・・。特に北東面をトラバースしてからの稜線に向かうガレ場の登り、稜線に上がってからの登りは堪えた。コースタイムを大幅にオーバーして雪倉岳に到着。・・・が頂上の立派な石碑以外、周りは何も見えない。ガスと北西の風が吹きつけるばかりだ。晴れ間を待ったが寒すぎてギブアップ。諦めて避難小屋向けガレ場をジグザグに急降下。鞍部の雪倉岳避難小屋は思ったよりも立派で造りもしっかりしている。小屋付近で大学ワンゲル部の大パーティー、数人の単独行者と出会う。小屋から南に聳え立つ鉢ヶ岳に気持もすっかりブルーになるが、登山道は東側をトラバースするように緩やかな登りとなっていて助かった。鉢の鞍部からはザレ場の急な登りが続く。振り返ると雪倉岳山頂のガスが切れているではないか。悔しいが仕方ない。三国境までの苦しいザレ場の登りは、白馬岳での素晴らしい展望をイメージしながら?登って凌いだ。三国境からは急に登山者が増える。先に見えるはずの白馬岳は残念ながらガスの中だ。行動食を補給し本日最後の登りにかかる。バテバテだったが後から近づいてくるおじさんに抜かれまいと頑張って約2年振りの白馬岳頂上に到着。平日にも関わらず白馬岳は本当に登山者が多い。頂上で粘っていると、時々ガスが切れ、雪倉岳方面や足下の主稜、大雪渓、明日登る白馬鑓方面が見えた。やっぱりピークでの展望は嬉しいもんだ。しかし風が強く体も冷え切ったのでテン場へ向かう。受付(1人500円水無料)を済ませてテン場へ向かうと既に10張りほどのテントがあった。ここのテン場は噂通り風が強い。1人で張るのは大変だ。天候不順に備えガチガチに大きな石でテントを固定する。天気図をとると東から高気圧が近づいているのだが、地方版天気予報によると雨らしい。気圧の谷だろうからそれ程大崩しなだろうと思っていたのだが・・・この判断の甘さに明日以降泣かされることになるとは・・・。就寝するも寒い・・・とにかく寒い!3シーズン用シュラフにシュラフカバーの冬山仕様にも拘らず、あまりの寒さに何度も目が覚めた・・・。

コースタイム

朝日小屋0455~0615小桜ヶ原分岐~0920雪倉岳~1155三国境~1255白馬岳~1335白馬岳頂上宿舎テン場(行動時間8時間40分)

水場

小桜ヶ原:沢の水が汲める。コップが必要。白馬頂上宿舎:テント受付者はテン場近くのポリタンクから無料で補給可。山荘直下の雪渓からも汲める。

9月12日(5日目)雨【計画:白馬頂上宿舎~五竜山荘】


白馬鑓からの杓子岳
不帰瞼2峰
唐松から白岳への稜線朝起きると既にパラパラと雨が降っている。ラジオ天気予報は正しかった訳だ。本降りにならないうちに雑炊を食べテントを畳んで出発。丸山から鞍部に下り杓子岳のザレ場を登る頃には雨が徐々に本降りに。展望もないので杓子岳は割愛し、西側の斜面をトラバースして白馬鑓の登りにかかる。ここの登りも結構急だが2年前に下って概要は知っていたのでバテることはなかった。白馬鑓山頂では風も強く叩きつける雨で顔が痛い。ジグザグのザレ場を下り白馬鑓温泉への分岐を越え、天狗山荘へ。山荘内では停滞する人達が談笑している。ここで前進か停滞か迷う。先には不帰瞼が控えている。迷ったが今までの経験なら行けると判断して前進する。残念ながら風雨は強くなるばかりだ。山荘からアップダウンの少ないザレ場を進み天狗ノ頭を越えると今度は緩やかな下りに入る。広い稜線を下っていくと突然、登山道が眼下に切れ落ちる。天狗ノ大下りだ。下り始め、上部の岩場に鎖があり、鎖がないと結構厳しい。ここを過ぎれば、浮き石が多く滑りやすいザレ場をジグザグに急降下。転ばないように慎重に下る。不帰キレット手前でおじさん3人パーティーとすれ違う。状態はどうですかと聞くと、怖いとこあるけどね・・・とのこと。見上げると時折吹き抜けていく雲の切れ間からいかにも険しそうな不帰瞼が見え隠れする。ここまで来たら行くしかないなと気合いを入れ登りにかかる。1峰は難なく通過。しかし2峰は取り着きから見上げた時、これ登るの??と思ってしまった。しかし、ルートは岩場の弱点を縫うように付けられており、しっかりとした鎖も付いている。所々、鎖のお世話になった。容赦なく吹きつける風雨で手元、足元が滑るうえ重荷だったので、かなり嫌な汗をかいた。滑り落ちたらアウトの梯子を渡り切るとある程度悪場は落ち着く・・・が2峰の南峰を越えるまでは気を抜かない方がいいだろう。気付かないうちに3峰を通過し、ひょっこりと唐松岳頂上に出た。悲しいことに、この頃には新調したゴアテックスの登山靴内部は既に超浸水状態となっていた。唐松山荘裏手で休憩し、昼前だったので、計画通り五竜山荘まで進むことにする。大黒岳前後は赤茶けた岩場で鎖も付いている。稜線を右へ左へ進んで鞍部を通り過ぎ、白岳へのハイマツ帯を登る頃には、吹き抜けていく北西の風もMAXで、時折耐風姿勢を余儀なくされる。当然、雨着の中までボトボト状態で身体も冷え冷えだ。記憶では五竜山荘のテン場は稜線の西側にあったはずだが、この風では、テントを張ることもままならないし張れたとしてもポールがもつかどうか。ここで人生初?の山小屋泊を決断する。白岳の頂上に向かい昨年末登った遠見尾根と時折見える唐松岳を眺めてから五竜山荘に向かう。山荘は白岳山頂から直ぐだ。勿論テントを設営者は誰一人としていない。素泊まり(6300円)にて受付をして部屋へ。荒天にも関わらず既に沢山の宿泊者がおり、乾燥室は沢山の雨着で溢れ返っていた。

コースタイム

白馬岳頂上宿舎テン場0510~0700白馬鑓~0810天狗の頭~0910不帰キレット~10402峰の南峰~1125唐松岳~1350白岳~1400五竜山荘(行動時間8時間50分)

水場

五竜山荘:宿泊者は無料。小屋の外にも水道の蛇口があり1Lが100円?だった…と思う。

9月13日(6日目)雨【計画:五竜山荘~冷池山荘】

初めての小屋泊はすこぶる快適だった・・・が、夜中、隣で寝ているおじさんのいびきの凄まじさに耐え切れず、何度も枕元を突つかせて?いただいた。外では強風を伴った雨が小屋を揺さぶっていた。前日の夕方天気図をとると西から近づいていたはずの高気圧が消え、代わりに前線が発達中部地方を北上中であった。地方版天気予報によると明日昼頃に雨が上がるとのことであったが、あくまでこれは平地での話。高山には当てはまらない。午前5時過ぎには歩ける準備が整ったが、外は台風並みの暴風雨が吹き荒れていた。視界は10から20メートル程で猛烈な風のうえ雨粒が容赦なく身体に叩きつける・・・全く歩ける気がしない。・・・というか身体が感覚的に拒否反応を示す。強引に五竜に向かったパーティーが次々と山荘に引き返してくる。他の宿泊者も山荘の玄関で天候の回復を待っていたが、五竜への登頂を諦めて次々と遠見尾根を下っていき、最後にはとうとう僕一人になってしまった・・・。小屋の玄関で受付のお姉さんに降りた方がいいですよ・・・と呆れられながらも、天候の回復を1人寂しく待ったが変わらず、昼頃に沈を決める。雨は昼頃に収まりつつあったが、風は依然として強いのでテントを張るのは無理やなぁ・・・ということで、どうせなら記念に小屋飯もと夕食付き(8000円)で宿泊受付。まさか小屋に2泊することになるとは(哀・・・)。そんな中、キレット小屋から五竜を越えてきた単独おじさんが山荘に到着。話を聞くと風が凄まじく岩陰で30分程風雨を耐えたとのこと。また途中ですれ違った2人組もいたらしい。あの凄まじい風雨の中、吹き晒しの稜線を行動するなんて凄い人もいるもんだ・・・。こんな荒天でも、登山者は続々と小屋にやって来る。夕方頃には殆どの部屋は埋まっていた。夕食は五竜山荘名物?のカレー、山菜味噌汁、缶詰フルーツだった。カレー、味噌汁はお代わり自由だったので、カレーのみお代わりさせて貰い超満腹に。夕食は毎日カレーらしく、お代わりは自由とのこと。明日は少なくとも今日より天候はマシになるだろう・・・回復を祈りつつ午後7時頃就寝Zzz…五竜山荘のスタッフの皆さんお世話になりました。

コースタイム

行動せず・・・

9月14日(7日目)快晴【計画:冷池山荘~針ノ木小屋】


雲海上に昇る朝日
五竜岳から鹿島槍方面
鹿島槍から爺ヶ岳方面午前5時過ぎに山荘を出発。風は嘘のようにぱったり止み、空には星が輝く。快晴の予感。五竜のガレ場を登りつつ振り返ると東の空の雲海から太陽が顔を出す。入山して以来、初めて見る日の出に超感動。山頂直下の鎖場を抜けると、お待ちかねの360度の展望だ!デジカメを撮りまくり、いざキレットへ。・・・が、いきなりの脆いガレ場の急下りにえっ???ここは4年前のGWに岡島さん達と同コースを通過していたはずだが、当時の記憶と現状が全く噛み合わない。キレット小屋までは楽勝♪なんて思っていたが、意外と多い岩場のアップダウンに苦労する。突如現れる鎖場や梯子に???の連続だ。終盤急な鎖場の登りを2箇所程越えて西側斜面を回り込むと懐かしのキレット小屋が見えた。4年前はここでハーネスを着けたな~なんて感傷に浸りながらベンチで休ませて貰い八峰キレットへ。脆い急斜面を登り切ると、下は絶壁の針金で支えられた丸太渡りが続く。もちろん鎖はあるが正直キレットでここが一番?怖かった。急峻な稜線を進んで鞍部へ。積雪期とは異なり、斜面東側をトラバースして折れ曲がった梯子を下り鞍部へ降り立つ。ここからはハイマツ帯の岩場約300メートルの登り返しだ。4年前、滑る雪の中、ヘトヘトになりながら登った記憶が蘇る。快晴の天気にも後押しされ鹿島槍北峰を目標に登り続けること1時間、北峰直前の斜面を右へトラバースすると見覚えのある十字の道標が視界に飛び込んでくる。吊尾根の分岐にある道標だ。ここにザックを置き4年振りの北峰へ。眼下には越えてきた八峰キレット、北壁、東尾根が見える。引き返して未だ東側斜面に雪田の残る吊尾根を進み沢山の登山者で賑わう南峰へ。ここで靴を脱いで30分程大休止しながら雲上の別世界を満喫する。もっとゆっくりしたかったが、気持ちを切り替え冷池山荘へ勝手知ったる登山道を駆け下る。しかしザレ場の下り始めから左足の踝付近に違和感じ始め、直ぐにそれが激痛に変わる。たまらず布引山で休憩。どうやら登山靴をきつく締めすぎていたため擦れて筋を痛めてしまったようだ。一息入れて下り始めるも状況は変わらず、痛みを堪えながら、だましだましゆっくりと下る。積雪期と違い樹林帯に入ってからの冷池山荘までがやたらと長く感じた。まだ時間も早いので冷池山荘を通過して種池山荘へ向かう。ここからの登りも今春の爺ヶ岳からの下りのイメージと異なり、登り返しがやたら長くキツく感じる。今年GWに寒さでゆっくりできなかった中峰、その先の南峰で休憩し、種池山荘へ緩やかなザレ場を下る。最後は左足踝の激痛で真っすぐ歩くことができず、カニ歩きしながら種池山荘へ到着。テン場受付(1人500円)を済ませ、奮発して高価なコーラを購入しテン場へ。テン場は山荘の西側徒歩1分程の樹林帯の中にあり綺麗に整地されている。テント固定はペグのみ使用可。山荘の隣に「種池」という本当に小さい池?があった。

コースタイム

五竜山荘0505~0600五竜岳~0735北尾根の頭~0845キレット小屋~1015鹿島槍北峰~1050鹿島槍南峰1120~1300赤岩尾根分岐~1410爺ヶ岳中峰~1445爺ヶ岳南峰~1515種池山荘(行動時間10時間10分)

水場

種池山荘:1Lが150円(2L購入)。冷池山荘では確認せず。

9月15日(8日目)雨【計画:針ノ木小屋~船窪小屋】


岩小屋沢岳から赤沢岳方面
鳴沢岳から赤沢岳の稜線
針ノ木岳への登り2日振りのテント泊は、樹林帯の中で風に悩まされることもなく眠れた。生憎の曇り空の下、テントを畳んでペグを受付に返しに行き出発する。緩やかな樹林帯を下ると所々にお花畑が広がっている。この辺りに熊が出ると種池山荘で聞いていたので音の頼りない鈴を無理やり?鳴らしながら進む。相変わらず左足踝の痛みが続くので、途中で膝用のサポータを重ねて巻くと幾分か歩けるようになった。ハイマツ帯を暫く登ると岩小屋沢岳に到着。この頃にはポツリポツリと雨が降り出す。岩小屋沢岳の次のピークを右に回り込んで続くハイマツ帯を下っていくと新越山荘だ。ベンチで行動食を補給し鳴沢岳の登りへ取りかかるが雨も本降りに。鳴沢岳ピーク前後は結構急峻だ。この辺りから稜線を吹き抜ける北西風が強くなる。あっという間に体温を奪われ慌てて岩陰でインナーを着る。鳴沢岳から赤沢岳までのガレ場の登りは風雨との闘いだった。天気が良ければ黒部ダムが眼下に見えるはずだが、この天候では望むべくもない。赤沢岳では写真のみ撮って速攻スバリ岳へ。ここからスバリ岳がまた長かった・・・。「滑落注意」の札があるガレ場を下り、引き続き先の見えないガレ場の稜線を右へ左へうんざりしながら進むと先行者に追いついた。人影を見て何故かホッとする。高知から来たという御夫婦と懐かしい高知弁を聞きながらついつい話し込んでしまう。そろそろスバリ岳でしょ・・・と先行するもまだまだ・・・ピークへのガレ場登りがまたしんどい。登山道でウロウロする雷鳥さんの先導の下、ズルズル滑るガレ場を越え稜線を右から回り込むとスバリ岳に着く。勿論、展望はなく行動食を補給して針ノ木岳へ向かう。脆いガレ場を経て岩場の稜線を下っていくとヤマクボノコル。ここから再びガレ場の登り・・・だがスバリ岳の登りよりは短い。頭上の尖がりを目指して風雨を背中に受けながら登ると針ノ木岳山頂に出た。残念ながら風雨が厳しく展望はなし。寒いのでここも写真だけ撮って針ノ木小屋へ。よく踏まれたザレ場のジグザグ道を下っていくと針ノ木山荘に到着。「テントは指定場所に」との表示を見てブルーになるが、受付(1人500円)するとシーズンOFFだからか空いてる所に張ってくださいとのこと。ラッキーと思いテン場へ向かうと既にベストポジションに一張り。自分の事は棚に上げて、こんな天気なのに物好きな人もいるもんだ・・・と思いながら隣にテントを張る。雨が小降りになっていて助かった。強風に備えしっかりと大きな石で補強してからテントに入る。食事後、眠りに着くもテントを叩く雨と、あまりの寒さに何度も目が覚めた。しかし斜面の南側にテントを張っていたので風は心配したほどでもなかった。

コースタイム

種池山荘0525~0645岩小屋沢岳~0715新越山荘~0800鳴沢岳~0855赤沢岳~1115スバリ岳~1215針ノ木岳~1300針ノ木小屋(行動時間7時間35分)

水場

針ノ木小屋:1Lが200円(2L購入)。新越山荘では確認せず。

9月16日(9日目)晴れ【計画:船窪小屋~烏帽子小屋】


蓮華岳から七倉岳方面
船窪岳
七倉岳からの針ノ木岳目覚ましで起きると、雨は止んでいるようだ。外に出て撤収しようとすると・・・テントが「バリバリ」に凍っていて畳めない。雨粒までがしっかり凍っている有様である・・・収納袋に入らないので無理矢理ザックに押し込んで出発。最初のジグザグの急登を登り切ると、なだらかな砂礫の一本道が東へ伸びている。先にピークが見えているがこれは2754のピーク。これを越えると漸く蓮華岳山頂が見える。既に東の空から朝日が登っているが、西側斜面は陽が当らず、朝特有?の北西風も強いのでやたらと寒く鼻水が止まらない。振り返ると朝日に染まる針ノ木岳が美しい。強風に背中を押されながら砂礫の稜線を登り切ると蓮華岳に到着。快晴で360度の展望。20分程景色を楽しんで蓮華の大下りにとりかかる。この約500メートルに及ぶ急下降は、上部は砂礫、中間部はハイマツ帯の急な砂礫と露岩が混じるジグザグ下り、下部は鎖が連続する岩場と結構玄人向き?だ。今回の山行中で一番印象に残っている下りである。鞍部から樹林帯からハイマツ帯と続く稜線を約300メートル登り返して北葛岳に到着。天気も良かったので、途中と山頂で休みつつ凍ったテントを干して解凍した。北葛岳から南の七倉岳は目の前に見えていて近そうだが、そう簡単には着かない。中間部の七倉乗越までは樹林帯の中を下るが、途中梯子なんかもあって意外と急だ。特に七倉乗越付近は、脆い箇所が多く梯子を登るのも緊張する。乗越から七倉岳までは狭い露岩の稜線をひたすら登るが、ルートの東側が所々崩れているので注意が必要。雨の日は苦労しそうだ。右手に船窪岳を見ながら狭い稜線を登り続けると七倉岳に到着。七倉岳の標識は登り切った所から少し先(南)にある。一休みしてハイマツ帯の緩やかな下りを船窪小屋へ向かう。船窪岳への分岐を通過して更に南へ進むと小さな小屋が見えてくる。ランプの小屋で有名な船窪小屋である。小屋前のベンチで一休みしていると、別に宿泊受付をした訳でもないのに小屋のお姉さんが熱いお茶を出してくれた。これにはマジで大感激!!因みに今まで色々な山小屋を通過してきたが、お茶を出してくれたのは、ここと南アルプスの早川小屋のみである。テントの受付(1人500円)を済ませて小屋のお母さんと少し話をする。聞くと小屋から不動岳までのルートは整備してあるとのこと。このことは翌日身をもって実感させていただいた。小屋の中を覗かせて貰うと・・・お~っ囲炉裏があるじゃないですか!?雰囲気とスタッフの人柄の良さ、今度は是非とも小屋に泊まってみたいと思った。分岐まで引き返し、船窪岳方面へ10分程下るとこじんまりとしたテン場に着く。ちゃんと工事現場用?の新しい簡易トイレが設置してある。早速テントを張って、ザックの中身を全て出して物干し&お昼寝タイム♪真夜中に見えた満天の星空☆と久し振りに見た流れ星が印象的だった。

コースタイム

針ノ木小屋0525~0625蓮華岳0645~0800蓮華の大下り鞍部~0905北葛岳0925~0955七倉乗越~1105七倉岳~1125船窪小屋~1205船窪小屋テン場(行動時間6時間40分)

水場

船窪小屋テン場付近:テン場から5分程下った崩壊地の真っただ中にある。崩壊地は、足場が脆く梯子もあるので両手は使えるようにしておいた方が無難

9月17日(10日目)快晴【計画:烏帽子小屋~三俣山荘】


船窪岳付近の脆い稜線
不動岳への登り
烏帽子岳から不動岳方面早朝、テン場から見える槍ヶ岳が朝日に染まる。今日も快晴の予感。準備体操を終え、樹林帯の中を不動沢の崩壊地を左に見ながら下る。船窪乗越から船窪岳への登りは、不動沢側から右の樹林帯の中をジグザグに登るルートに付け替えられている。おそらく旧ルートが不動沢の崩壊により危険になったためだろう。切り開かれたばかりのルートを登り切ると意外にも船窪岳と書かれた標識が・・・。昨日見えていた顕著なピークは船窪岳第2ピークだったようだ。第2ピーク目指して先に進む。しかし、この第2ピークまでが意外と悪い。稜線左右は切れ落ち、所々崩壊しているため、鎖、ロープ、梯子が連続する。特に鞍部付近の岩場は急峻で脆く大きなザックを背負っていると苦労する。第2ピークへの登りも、ロープ有りの滑りやすい岩場から始まり、所々手足で登るような急登が続くので時間もかかる。漸く着いた第2ピークで休憩し、不動岳に向かう。不動岳へは所々、不動沢側の崩壊地も通過するが、主に稜線の西側の樹林帯の中を右手の眼下に黒部湖を望みながら進む。歩き易く、天気も良かったので森林浴を楽しみながら気持ちよく歩けた。不動岳直下も旧ルートが崩壊しており、切り開かれたばかりのハイマツ帯のルートを登る。船窪小屋のスタッフにより整備されているのだろう。安全に歩けるのも小屋の皆さんのお陰だ。最後の鎖場を登り切ると不動岳ピークだ。不動岳で一息ついて南沢乗越へ沢状のガレ場を下る。不動岳から南沢岳間はあまり人が歩いていないせいか雑草の繁殖が凄い。また濁沢側の崩壊が激しくこの登山道もあと何年もつかな?と思うような所もあった。ハイマツ帯の急斜面を色づき始めたナナカマドに見とれながら登ると、砂礫が広がる南沢岳ピークに出た。南に聳える烏帽子岳が印象的だ。南沢岳からの下りに烏帽子岳方面を見下ろすと、そこにはこれまでの景観とは全く異なる雲上の別世界が・・・。白い岩と砂礫、池塘、ハイマツと草原・・・それぞれが見事に混じり合い、こんなところに何故?と思わずにはいられない素晴らしい雲上庭園が広がっていた。初夏のお花畑の季節や紅葉の季節に是非とも訪れてみたい場所だ。雲上庭園を越え分岐にザックを置いて烏帽子岳へ。山頂直下の岩場は落ちれば大怪我だが、階段状でしっかり鎖も整備されているので問題ない。烏帽子岳のピークで眼下の色づき始めた雲上庭園と360度の展望という贅沢な時間を味わう。分岐へ戻りザックを背負って烏帽子小屋に向かうが、無風状態と容赦なく照りつける太陽に脱水症状を起こしそうになる。何とか前烏帽子を越え、フラフラになりながら烏帽子小屋に到着。テント受付(1人500円)と同時に冷たいみかんジュースを購入し、一気に飲み干す。テン場は小屋の南側を一丘越えた窪地に点在している。天気図をとると台風が徐々に近づいている。進路次第では下山しなければならない。台風が反れてくれることを祈りつつ就寝Zzz…

コースタイム

船窪小屋テン場0520~0605船窪岳~0710船窪第2ピーク0740~1005不動岳1035~1205南沢岳1235~1345烏帽子岳1415~1500烏帽子小屋(行動時間7時間40分)

水場

烏帽子小屋:水0.5Lが100円(1.5L購入)

9月18日(11日目)快晴【計画:三俣山荘~槍ヶ岳山荘】


振り返れば立山
野口五郎岳へと続く稜線
水晶岳から鷲羽岳方面0520テントを片付けて出発。ハイマツ帯の岩礫に続く砂礫の稜線を三ツ岳へ向かう。東の空の雲海から朝日が顔を出す。朝靄に浮かぶ山々は幻想的だ。何度見ても飽きない。ルートを南から西にとり緩やかな登りを越えると、野口五郎岳へ続く稜線が見える。登山道は三ツ岳ピークの東側を巻き展望コースとお花畑コース分岐へ。後者の方が、起伏がないので楽だろう。展望コースのピークで一休みして野口五郎岳へ向かう。緩やかな登りが続くが、徐々に大きな岩塊が増えてくる。岩塊と砂礫の続く登山道を進んでいくと徐々にのっぺりとした野口五郎岳山頂が近づいてくる。・・・とその前に野口五郎小屋が現れた。地図上は水、有料と記載されているが、大きなタンクにはペンキで「タンクに水はありません。」の大きな文字が?ここは数年前にキャンプ禁止となったようだ。そのまま進んで岩塊の谷間を越えると野口五郎岳に到着。ここで船窪のテン場から一緒のコースを歩いてきた単独行のおじさんからウォークマンを勧められる。神奈川から来たというそのおじさんは、なんと野口五郎岳で、その山名が芸名となった野口●郎のヒット曲を聴くというシブい目的があったのだ!ウォークマンを借り、そのヒットメドレーを聴かせてもらう。大縦走のよき思い出になりました。おじさんありがとう!!湯俣へ下るというおじさんとここで別れ、山頂から砂礫のジグザグ道を下り真砂岳方面へ向かう。登山道は真砂岳の北側を巻き、やや下ると湯俣との分岐がある。鞍部から再びハイマツ帯の稜線を登り返し、岩塊が積み重なったピークを越えて下っていくと東沢乗越だ。所々、ワリモ沢側に切れ落ちたところもあるが、悪いと言う程でもない。だが、調子に乗って野口五郎岳を駆け下り、岩塊を飛び跳ねながら進んだ結果、後半、手痛いしっぺ返しを喰らう。東沢乗越で一息つき、一山越えて現れる赤茶けた狭くて脆い稜線を登っていくと水晶小屋に着く。時間もあるので、ザックをデポし、天気が悪ければ割愛するつもりだった水晶岳を往復する。しかし、この復路で右足太腿前面に妙な違和感が・・・それが小屋に戻ってザックを背負いワリモ乗越に下り始めた途端、激痛に変わる。筋肉がパンパンに張ってしまっている。これで両足に痛みを抱えて歩く羽目になってしまった。たまらずワリモ岳手前の分岐で休憩&ストレッチ。歩けなくなってしまっては元も子もない。できるだけ歩幅を小さくして歩き、ワリモ岳を越えるが鞍部への下りがまた辛い。鞍部から牛のような鈍さでザレ場を登り返し漸く鷲羽岳に到着。3年振りの頂上は、少し雲が出てきていたが展望は申し分なかった。ここから三俣山荘へのザレ場下りはメチャメチャ急なうえ滑りやすい。3年前に頭からブっこけて上着がズタボロになったのがこの下りだ。ここは本山行中、最も過酷な??下りとなった。右足に体重をかけられないので左横か後ろ向きに歩いて降りた。なんとか1時間チョイで下り切って三俣山荘に到着。大型連休が始まるとあって、テン場は結構一杯だった。入念なストレッチ後に就寝したのは言うまでもない・・・。

コースタイム

烏帽子小屋0520~0820野口五郎岳~0920真砂岳分岐~1055水晶小屋~1130水晶岳~1205水晶小屋~1250岩苔乗越分岐~1350鷲羽岳~1510三俣山荘(行動時間9時間50分)

水場

三俣山荘:テン場の傍に給水口あり。野口五郎小屋、水晶小屋は確認せず。

9月19日(12日目)快晴【計画:槍ヶ岳山荘~奥穂山荘】


秋の気配深まる西鎌尾根
槍ヶ岳
夕陽に染まる雲海心配していた強い台風はどうやら日本の東海上を北上するようだ。0515誰よりも早く三俣蓮華方面へ出発する。右太腿の痛みは治まっていたが、大事をとって封印していたストックを使うことにする。このストックの効果は絶大!?だった。ハイマツ帯を登って行くと岩の鎧を纏った三俣蓮華岳が現れる。岩場をジグザグに登り山頂へ。雨着を脱いで、なだらかで広い稜線のハイマツ帯を双六岳へ向かう。丸山を越えて下り、分岐を通過した後の登りに現れる大きな岩塊を越えれば双六岳山頂。西には雲海に浮かぶ白山が見える。山頂から東は広大な稜線が広がる。ここから見る槍ヶ岳は絵になる。広大な稜線から白いザレ場をストックを駆使して下り、ハイマツ帯の一本道を抜けて双六小屋へ到着。休憩を挟んでいざ西鎌尾根へ・・・、が、いきなりの急登に早くもバテバテに。樅沢岳で一本取り、ストックに頼りながら先へ進む。4年前は下ってきた西鎌尾根だが長くて時間がかかるという思い出しかない。硫黄尾根の頭と左俣岳付近はアップダウンがあり苦しいところ。左俣岳で一本取って後は稜線をひたすら登り続けること1時間半、見覚えのある鎖場を越えると思い出?の千丈沢乗越に到着。眼下に見える飛騨沢を沢山の登山者が登っているのが見える。大型連休が始まり槍のテン場も直ぐに満杯になるだろう。一休みして先を急ぐ。岩場の稜線を登り途中で右手にトラバースしてガレ場の急斜面をジグザグに登る。大岩の下付近でふと足を止める。7年前の冬合宿、やむを得ずここでビバーク、橘さんと共に急斜面に腰かけツェルトを被って極寒の夜を過ごした記憶が昨日のことの様に甦る。あの時はマジで寒かったなぁ・・・。気を取り直して先へ進む。ルートは再び稜線に戻り、さらに岩場を越えると肩の小屋に出た。もういいかな思いつつ、ついついザックを置いて山頂へ向かってしまう。登っていると、上から何とマウンテンバイクを背負った人!?が降りてくる。世の中いろんな人がいるもんだ。最後の梯子を登り切ると・・・今日も360度の展望!一つの目標であった槍ヶ岳までは達成できた。後は奥穂を越えられるか?だ。時間も早いので予定を変更して、南岳小屋へ向かう。急斜面を下り、照り付ける太陽の暑さに参りながら、下った分を大喰岳へ登り返す。さすがに足取りは重い。大喰岳の広い山頂から南へ岩場の稜線を下って行くと次は中岳への登り。大喰岳への登り程キツくもないが、上部は岩場で梯子が設置してある。中岳からは南西側の斜面より岩塊が重なる南側斜面をガンガン下る。ストックのお陰で随分助かる。しかしここから南岳までが遠かった・・・。緩やかな登りだったが、更にピークを一つと天狗原の分岐を越えて漸く南岳に到着。記念写真を撮る団体さんの横をすり抜けて南岳小屋へ向かう。小屋で受付(1人500円)してテン場へ。ここも風が強いテン場で、至る所に風除け用の小石が積み上げられている。ここから笠ヶ岳の向こうの雲海へ沈んでいく夕陽は本当に綺麗で心に残る景色でした。オススメです。

コースタイム

三俣山荘テン場0515~0605三俣蓮華岳~0715双六岳~0805双六小屋~1140千丈乗越~1315槍ヶ岳~1415大喰岳~1450中岳~1605南岳小屋(行動時間10時間50分)

水場

南岳小屋:水1Lが200円(2L購入)双六小屋に給水設備あり。

9月20日(13日目)快晴【計画:奥穂山荘~西穂山荘】


キレットから北穂へ
北穂から奥穂へ
ジャンダルムからの奥穂朝から風が強い。気を抜けば畳もうとするテントが一瞬で飛んでいきそうな勢いだ。慎重に片付けて0525出発。急峻な脆いルンゼと岩場を一気に下降して最低コルへ・・・が何故か東から吹き抜けていく風が滅茶苦茶強い。耐風姿勢をとりつつ長谷川ピークを越えてA沢のコルへ。コルから急峻な脆い岩場を登って行くと飛騨泣き。杭がなければ越えるのは難しい。また、その上部のザレ場も崩壊が激しく、上部に人がいる時は要注意だろう。東側斜面に入り岩場の急斜面を手足を使いながらひたすら登り続け、北穂高岳に到着。他の登山者達に交じって、1人小汚い自分が妙に浮いていた・・・。一休みしてドーム左を回り込み岩場を下って行くと眼下の第4尾根を登っているクライマーが見える。いつの間にか吹きぬけて行く風も弱まっていた。最低コルからは下ってきた分の登り返しだ。しかし、ここは大切戸より危ない気がする。登り始めの鎖場が、浮き石が連なっていて悪い。涸沢槍下の長い鎖場を飛騨側から信州側に回り込み、ルンゼを越えれば涸沢岳山頂。写真だけ撮り穂高山荘まで駆け下る。山荘周辺は大賑わいで、奥穂へ向かう梯子場は既に渋滞が発生している。約6時間あれば西穂山荘まで行けると判断して出発。行動食を補給して梯子場が空いている合間を縫って奥穂高岳へ。山頂は沢山の登山者で溢れ返っており、写真を撮るのにも一苦労だ。そしてクライマックスの西穂へ続く稜線へ。両側の切れ落ちた馬の背を左右に越えて行くと、ロバの耳の東側斜面に痛々しい姿のヘリの尾翼が見えた。付近には、真新しいフィックスロープが張り巡らされ至る所にヘリの残骸が散らばっている・・・。五竜山荘で聞いたヘリ墜落情報は本当だった。ジャンダルムまでは、このロバの耳の登りが浮き石も多く悪い。ジャンダルムは信州側から回り込んで頂上に立った。一休みしてゴブ尾根の頭から長~い急斜面をゆっくりと天狗のコルへ下る。コルからの登り始めに鎖場があるが以前より悪くなっているような気がする。浮き石に気を付けながら慎重に越える。岩場の稜線を登って漸く天狗の頭へ。まだまだ西穂までの道のりは長い。逆層スラブの長い鎖場を慎重に下って間天のコル。ここから間ノ岳の登りだが、この周辺のルートが最もわかり辛く、急峻なうえ浮き石も多いので思いのほか時間がかかる。傾斜のキツイ階段状の鎖場を越えると岩に間ノ岳の文字が・・・。西穂はもう目の前だが、もう一山越えなければならない。しかし既に身体はお疲れモード全開!?だ。赤石岳をヒーヒー言いながら越え、漸く西穂山頂に到着した頃には既に太陽も傾きかけていた。ここから一気に西穂山荘へ!と行きたいところだったが、疲れ切った身体には望むべくもなく、ストックを使用してノロノロと下る。日没直前にコースタイムMAXで西穂山荘へ到着。小屋もテン場も人、人、人で一杯だ。ダメもとでテント受付(1人500円)をすると、受付のお姉さんが親切に辛うじて一張り分空いている場所を案内してくれた。本山行中、最も充実した?山歩き日となった。

コースタイム

南岳小屋テン場0525~0750北穂高岳~0955奥穂高山荘~1050奥穂高岳~1150ジャンダルム~1330天狗の頭~1530西穂高岳~1730西穂山荘(行動時間12時間5分)

水場

西穂山荘:水1Lが200円(1L購入)

9月21日(14日目)快晴【計画:西穂山荘~中の湯】


登山道から見える笠ヶ岳
焼岳
賑わう焼岳山頂いよいよ、最終日の朝を迎える。天候不順により西穂を越えられるか怪しかったが、最後の踏ん張りで、なんとかここまで来れた。あとは百名山の焼岳を越えるだけだ。0520、皆が西穂方面へ向かう中、焼岳方面へ出発。薄暗い樹林帯の中を進む。上高地への分岐を過ぎると、途端に踏み跡が少なくなる。登山道は整備されているが、所々大きい泥濘があるので雨の日は要注意だろう。誰もいない木漏れ日の射す静かな樹林帯を進むと突然視界が開ける。この槍見台で正面の霞沢岳を見ながら一休み。更に進むと登山道は、割谷山の西側、つまり飛騨側を巻くようになっている。この飛騨側への巻道付近が急斜面でやたらと細く、滑りやすいので注意。2229のピークを越え、急な斜面をジグザグに下って行くと漸く焼岳小屋に着いた。樹林帯の中に佇む小屋脇にあるベンチでお休みさせて貰い、いざ焼岳へ!笹に囲まれた登山道を登って行くと、あちこちから噴煙のあがる焼岳が姿を現した。ラストの登りだ!テンションも上がるが、上がり過ぎて下りで派手にコケてしまう。中尾峠からはガレ場をひたすら登る。涸沢を越え、その左側をジグザグに直上して、途中で左へトラバース。荷物は最も軽くなっているはずなのに疲れが溜まっているのか一向にスピードが上がらない・・・。岩場の混じるガレ場を右へ回り込んでいくと大きな噴煙の上がる北峰が近付いてくる。そして最後の岩場を登り切り2年振りの焼岳頂上へ到着!前回はガスで全く周りが見えなかったが、今日は360度の展望だ。バッチリ槍まで見えている。連休中とあって、山頂は、老夫婦、カップル、親子連れ、グループ、ツアー客等々と多彩な登山客で溢れ返っていた。ザックを降ろし、腰かけ、靴を脱いで一息つく。長かった山行を振り返る・・・。色々あったが、目標通り日本海から焼岳を繋ぐことができた。この山旅も今日で終わると思うと少々複雑な気持ちに・・・。30分程景色を眺めながら感傷に浸り、下山開始。2年前往復した登山道を中の湯向け駆け下る。2週間振りの下界へ向かう嬉しさからか自然と足も速まる。分岐にて旧道から新道へ進みどんどん下って行くと、懐かしの車やバイクのエンジン音が・・・そして中の湯に無事、到着。長かった山旅も終りを告げた・・・。中の湯の日帰り入浴の営業開始は午後零時からだ。帰り道での周囲への悪影響(悪臭?)を考えると何としても風呂に入っておきたかったので、1時間程旅館前でボーっと待ち、良質の温泉でサッパリさせて頂いた。そして中の湯のバス停まで歩いて下ったのだが、ここで非常事態発生!?バスが全て停車することなくバス停を通過していってしまうのだ。この時、ここのバスは座席の空きがないと途中のバス停に停車しないことを思い出した。連休真っ只中でタクシーも捕まらない・・・。たまたま一旦停止してくれたバスに何とか頼みこんで乗せて貰い、中の湯を脱出できたが、もしあのままだったらと思うとぞっとする。その日のうちに帰れたかどうか・・・。午後3時過ぎの平湯発高山行きのバスに乗り、特急と新幹線を乗り継いで大阪に着いた時には既に午後8時を過ぎていた。連休中の中の湯バス停は要注意です。

コースタイム

西穂山荘0520~0620槍見台~0740焼岳小屋~0855焼岳~1110中の湯(行動時間5時間50分)

水場

:焼岳小屋は確認せず

旅の終わりに・・・

3年前の単独南アルプス縦走(夜叉神峠~寸叉峡)に始まり、2年前のM君との八ヶ岳縦走(蓼科山~小淵沢)、昨年の単独中央アルプス縦走(桂木場~飯田)と続き、そして今回の単独北アルプス縦走で、アルプス夏季縦走シリーズは一段落?した。今回の北アルプス縦走(親不知~中の湯)は、日程と所々にある難所から実現は難しいと思っていたが、休暇と天候にも恵まれ無事歩き通すことができた。今回の縦走では、何といっても北アルプスの天候の厳しさを再認識させられた。北アルプスのテン場は吹き晒しの稜線上にあるところが多く、ひとたび天候が崩れれば、激しい風雨によりテントで凌ぐのは容易ではない。一旦、下界に降りるのなら話は別だが、長期縦走の際は、緊急時の山小屋泊も視野に入れて臨んだ方がよいと思う。(実際、今回の山行ではそうなってしまった・・・)また、シーズンにもよると思うが、同じ時期に歩いた南アルプス縦走とは比較にならない位寒かった。冬山に使用しているシュラフとシュラフカバーに目一杯着込んで眠ったが、それでも寒さで何度も目を覚ました。この時期に登るなら、軽量のダウンジャケットがあれば是非とも持って行った方がよい。また、水も南アルプスとは異なり、自然水を汲めるところは稀で、殆ど各山小屋で購入しなければならない。9年前は、六甲山を日帰りハイキングする程度だった自分が、まさか親不知から上高地までを単独でテントを背負って縦走できるなんて思いもしなかった。会での様々な経験がなければ、おそらく今回の山行は成功しなかった・・・、というより不可能だっただろう。山での色々なノウハウを教えてくださった会の諸先輩方に感謝したい。今回、山に入る前の体重は55kgあったが、最終日に中の湯で計ると50kgを切っていた。2週間の山行と言えば長く感じるが、実際歩いてみれば、あっという間だ・・・。ただ、ひたすら歩いて、そして眠って・・・の単調な毎日の繰り返しのように思えるが、その単調さを補って余りある程の様々な出来事が山行の中には詰まっている・・・。

参考

装備は、3年前に南アルプスを夜叉神峠から寸叉峡まで単独縦走した時とほぼ同じ内容でした。ザック65L、3シーズン用シュラフ、シュラフカバー、エアーマット、1人用テント、フライ、ボトムシート、ペグ、銀マット、替えシャツ、ズボン、下着類、靴下2枚、長袖ウェア2枚、ガス缶3缶、ガスヘッド、ランタン、チタン食器及び武器、ストック1本、サンダル、ロールペーパー、帽子(夏用・冬用)、救急セット、調理用板、レインウェア、ザックカバー、時計、洗面用具、地図、細引き、水3.5L、磁石、ナイフ、タオル、ヘッドランプ、ライター、手袋、天気図、筆記用具、携帯電話、携帯ラジオ、折りたたみ傘、デジカメ、お茶セット、行動食14日分(非常食を含む。)、朝夕食料14日分・・・総量約30Kg服装等は山用半袖シャツ、長ズボン、靴下、下着、ゴア登山靴で、状況に応じて重ね着していました。行動食は様々な種類のチョコ、アメ、クッキー、おかき、饅頭、栄養補助食品等々の小袋を、5Lのスタッフバッグ1と2/3袋分、食料は、基本的にアルファ米2人分シリーズ&レトルト食品、味噌汁と翌朝は雑炊、またサラスパ&各種パスタソース、コーンスープと翌朝は棒ラーメン&餅を組み合わせたものに、野菜ジュース、缶詰等々を加えたものを、6Lのスタッフバッグ2袋分でした。水は非常用として常に2.5Lを背負い、飲料用として一日当たり約1Lで行動しました。ガス缶は3缶持って行きましたが、最終日に2缶目が切れ、3缶目を使いました。テーピングテープは靴ズレ防止等のために必携、サポーターはあればイザという時便利です。※山行文は個人の主観がかなり入っています。またコースタイムや装備は個人差があります。どちらも参考程度として下さい。