南会津の山 大戸沢岳 会津駒ヶ岳 山スキー

2010年01月09日~10日     記) 金田 晏

1月9日 大戸沢岳(2089m) 小雪

大戸沢岳は会津駒ヶ岳の北東1.7kmに位置し吊り尾根でつながっていて山頂は平らでドーム状の山である。

R352の下大戸沢スノーシェルターの嫁郷側の出口に駐車(840m)し道路から板を履いて台地に上って9:30出発。先行パーティのトレールを辿って尾根末端を捲いて下大戸沢の右岸を行き、すぐ左手から入る枝沢に入り北東尾根の末端に取り付く。急登だがラッセル跡に助けられて1150m辺りで先行する2人(男性)に追いつきラッセルを交代する。

ブナやミズナラの疎林の尾根を滑り下る自分の姿を想像しながら頑張って・1386地点に11:37着。ここからルートは平坦な雪原状の広い尾根になり、やや下り気味になって・1553ピークへと高度を上げて行く。2人パーティは登高を断念、下るというのでラッセルの礼を述べて上を目指す。くだり気味の雪原を過ぎ緩い登りを膝下のラッセルで・1553地点に12:57着。

頂上までの標高差500m余りだが、今の登高ペースでは時間切れは必至なので下ることにする。13:30下山開始、緩斜面は真っ直ぐ下るが深雪でスピードダウンしてしまう。平坦地はシールをつけ脚にかかる負担を軽減する。今シーズンからCOLLTEXよりCT40という130mm幅のシールが発売されたので使用しているが、このシールは接着剤に糊を使わず貼付面は極小の吸盤状になっているので低温でも水分が付いていても圧着性はよい。

ゴミが付いたら水洗いも出来るすぐれもの。シールを付けたり外したりと少々タイムロスをしたが、・1386地点からはダウンヒルだ!樹林を縫ってパウダーを滑り降りる快感を存分に楽しみ15:00下山。16:00桧枝岐村の民宿「駒口」に投宿。この宿の主(あるじ)はマタギ(猟師)で機会があれば山や猟の話を聞かせてもらうことに約束してくれた。

1月10日 会津駒ケ岳(2132.4m)雪

滝沢橋の駒登山口(930m)8:00出発。夕食に山椒魚の天婦羅を食したので疲労回復?の効果があったのか足取りも軽い。先行者のトレールを辿って夏道との合流地点(1300m)9:38着。ブナ林帯のすばらしいパウダースノーを踏みしめながら下りのことを考えると自然と笑みがこぼれる。

10:37シラビソの針葉樹林帯(1700m)に入る。風雪次第に強くなり先行者3人(地元の猟師)も下りてきた。1900m付近の針葉樹林帯の切れたところで下山することにする。途中で相前後して登ってきた単独行の男性も先に下っていった。

12:30滑降開始、時間に余裕があるので1700m付近の針葉樹林帯から下ノ沢側のブナ林の大斜面を1500m付近まで滑り降りパウダーを満喫する。トラバースしてルートに戻ろうとしたが雪崩れそうな感じがしたのでシールを張って上り返す。この上り返しはしんどかった。

ルートに戻って15:30下山開始、ブナ林斜面の快適なパウダーを飛ばす。先に下った男性がパウダーに埋まってもがいているのが目に入り助け起こす。もう疲労困憊の様子だ。下で見ていると斜滑降とキックターン、ターンの時にバランスをなくして転倒し中々起き上がれない。そう遠くない昔の自分を見ているようでサポートしながら下ることにする。彼は「太腿が痙攣して痛い」というので板を外し脚を投げ出してゆっくり伸ばし、食べ物と水分を摂ってゆっくり休ませる。

辺りは次第に薄暗くなってくるので「私にかまわないで先にいってください」というが放っては行けない。私が「イザという場合はツエルト、コンロ、食料を持っているから大丈夫」というと初めて笑顔になって少し元気が出たようだ。滑りよいコース取りをし根気よくゆっくり下って17:00滝沢橋に下山する。村の街灯には明かりが灯り夜の帳が下りはじめていた。

残念ながら両山とも山頂に辿り着けなかったが、山はいろんな試練と歓びを私に与えてくれた。単独行の素晴らしさと危険性は紙一重だ。要はそれを自分の意識の中に常にしっかり把握しておかなければ無謀な登山者と云われてしまうだろう。単独でもパーティを組んでも安全且つ楽しく山を登るには体、知、技術、精神の4つの力のバランスがとれている事が好ましいと思う。ここで重要な事はシニア世代になると4つの力が衰えてくるということをどれだけ自分の意識の中に自覚しているかということである。バランスが崩れだしたら登山行為も慎まなければならないと思った次第である。