槍ヶ岳→西穂 縦走
山行日 | 2013年10月6-8日 |
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山域、ルート | 槍ヶ岳→西穂 |
山行形態 | 縦走 |
メンバー | Y山 |
槍ヶ岳→西穂 縦走 山行記録
仕事で中々取得できなかった夏季休暇を取得し、幕営装備2泊3日の日程で槍穂高縦走を計画した。
"槍→大キレット→奥穂"は3年前にテント泊装備で2泊3日で縦走済みだが、その時は"奥穂→西穂"間は縦走せず、奥穂をピストンして白出沢から新穂高へ下山した。
そこで昨年"奥穂→西穂"間を縦走しようと、"新穂高→白出沢→奥穂→西穂"を1泊2日の日程で幕営装備で計画を立てたが、2日目が事前の天気予報からは打って変わって雨天となった為に断念。
今回リベンジで計画を考えたが、昨年と同じ計画というのも芸が無いので、3年ぶりの大キレット縦走を中日に加えて計画を立てた。
今回の山行計画↓
1日目:新穂高→槍平小屋→千丈乗越→西鎌尾根→槍岳山荘(幕営)
2日目:槍岳山荘→大キレット→穂高岳山荘(幕営)
3日目:穂高岳山荘→奥穂→西穂→西穂山荘→新穂高ロープウェイ
このルート、山と高原登山地図によるとコースタイムが3日間とも9~10時間となっており、幕営装備を担いでの縦走となると食料と水も含めて体力的には通常かなりキツいルートだ。
しかし、今年は100㎞ウルトラマラソンを9月に2回完走した為、損傷した筋繊維が超回復により筋力アップし、オムロンの体重計測定によると体脂肪率は最大10.0%まで減少し、体内年齢は21歳となった。
瀕死の状態から回復するとパワーアップするサイヤ人みたいだ。言わば現状は超サイヤ人状態なわけで、体力的な心配は全く無い。
体力的には36年間生きてきた中で今が一番の体力だと思う。いつやるか?今でしょ!(古っ)
加えて"奥穂→西穂"間は破線ルートとは言え、一般登山道には違いないので技術的にも不安感は無いが、問題は天候だ。
それでも荷物は昨年同様軽量化を考慮してテントではなく、ツエルト幕営にて計画。
昨年は天候の為、敢え無く撤退したが、出発前日の10/5(土)に休日出勤を終えて気象庁発表の最新の500hPa高層予想天気図を確認したところ、何とか縦走最終日までは天候も持ちそうだった。
土曜日の時点で発生した台風24号も気になるが、この時点では10/8まではギリギリ台風の勢力圏外の予想だった。
前夜に新穂高温泉無料駐車場に入り、車中泊。
初日の行程は序盤林道歩きで問題ない為、まだ未明の4時半頃からヘッデンの明かりを頼りに新穂高を出発。
久々の幕営縦走登山、初日は相変わらず食料満載でザックが重い・・・。
山スキー、アイスクライミング、沢登り、クライミング、トレイルランニングと色々とやりだして、縦走用ブーツの活用は1年に1回ほどとなってしまった。
時間はたっぷりあるので、ゆっくり歩く。ほぼ1時間に1回、行動食及び給水の為に小休止。
それにしても秋晴れで最高の天候だ。この天候が最終日まで持ってほしいと願いつつ、ひたすら足を前に進めていく。
滝谷出合を過ぎたところで六甲山では見慣れた藤木九三のレリーフを拝む。
飛騨沢と千丈乗越の分岐点で、千丈乗越へ向かう。3年前は飛騨沢から槍ヶ岳へ登頂したので、西鎌尾根ルートは今回初。
稜線までの登りが急坂で息が上がる・・・
重荷に喘ぎつつ足を進めて行き、気付くと山荘に到着した。なるほどココに出るのか。
シャリバテ気味だったんで、餅入りラーメンでエネルギー補給。ランチも終了したところ、さて槍のてっぺんに登るか・・・と思ったら、さっきまで見えていた穂先がガスですっぽり覆われて全く見えない。
こんな状態で登ってもなぁ・・・と思いつつ、特にすることも無いので山荘前のベンチでノンビリ。
暇過ぎるので、ガスっている中暇つぶしに穂先に取りつく。
梯子に沿って登っていき、穂先に登頂。穂先は昨年のGWにアイゼン ピッケルで登って以来、3回目の登頂で、何の感動も無かった(苦笑)
穂先に登頂して間もなく、ガスが晴れ始めた。暇つぶしにしてはいいタイミング♪
穂先に10分ほど滞在したが、またまたガスってきて展望も無くなってきたので山荘へ下降。
山荘で缶ビールを購入し、行動食の柿ピーと一緒に山荘前のベンチでガスの合間から除く穂先と紅葉に染まる槍沢と正面の常念岳を眺めつつ、まったり。
缶ビールを空け、幕営地に戻ってだらだら過ごす。遠くには富士山が望めた。
早めに夕食を済ませ、日没と同時くらいに就寝。
夜中に目を覚ましてトイレに行くと、満点の星空を背に槍の穂先がくっきりと浮かび上がっていた。
2日目、4時半に起床し、簡単に朝食を済ませてツエルトを仕舞い、5時半頃幕営地を穂高岳山荘へ向けて出発。
5時半頃、ちょうどヘッデンが要らないくらいの明るさになっていた。
3,000mの稜線漫歩で南岳を通過。ここから大キレットへ突入。ストックを仕舞い、ヘルメットを装着。
初日の行程もそうだったが、2日目もコースタイムより所要時間が大分早く、いつの間にか大キレットの核心部である長谷川ピークも越していた。
初日同様、ほぼ1時間に1回の小休止で行動食でエネルギー補給しつつ縦走していく。
北穂高岳へのルートはガレガレの岩場で、下から見ると結構な迫力だ。
北穂高岳に登頂、涸沢岳への稜線も鎖場等が出てきて中々気の抜けないルートだった。
涸沢岳からジャンダルムを見ると、ピークに立っている登山者が見えた。午前中は晴れているが昨日と同様、昼が近くなるにつれて稜線にはガスが掛かり始める。
明日は午前中早い時間に危険地帯は脱したいものだ。
山荘で幕営許可申請をしたところ、13時に荷揚げのヘリが来るのでテントはその後で張るように注意されたので、幕営場所だけ確保。
幕営地から望む紅葉に染まった涸沢と前穂高岳北尾根を眺めつつ、山荘で購入した缶ビールと行動食の柿ピーでまったり。
ビールを飲んで気持ちよくなったところで、餅入りラーメンのランチ。
山荘付近は携帯の電波圏内なので、スマホで明日の500hPa予想高層天気図をチェック。何とか明日日中は天候が持ちそう。3,000mの稜線で500hPa高層天気図を見られるなんて便利な世の中になったもんだ。
気になる台風24号も当初の予報通り10/8の夜半までは気にしなくて良さそうだ。逆に言うと、余裕がなくギリギリのタイミングだが。
涸沢と前穂北尾根を眺めて、ぼーっとしてると山荘の方がヘリが間もなくやってくるので、山荘前のベンチで寛いでいた登山者にベンチ付近から退去するよう案内を始めた。
涸沢ヒュッテと涸沢小屋で荷揚げをしていたヘリが信州方面へ飛び去って行ったのを見て間もなく、山荘の方の誘導で、飛騨側から突如東邦航空のヘリが出現。
涸沢の上空をゆっくりと旋回し、山荘前のヘリポートへ荷揚げ。荷揚げ後、涸沢側へまたまた旋回し、今度はヘリポートから準備してあった荷卸しのゴミをピックアップして信州側へ飛び去って行った。
さてツエルトを張るかと思って準備を始めると、もう一便来るとのこと。
10分ほど待機していると、先程と同様、飛騨側からヘリがアプローチしてきて2便の荷揚げを行った。その後、沢山のギャラリーが見守る中張り切っていたのか、空身のヘリは涸沢へ向けて急降下!見ててゾッとするほどの急降下&急旋回で鮮やかに信州側へ飛び去って行った。
見てて惚れ惚れするくらいの鮮やかさだった。
ヘリが飛び去り、ツエルト設営。今回、軽量化を優先してストックはZポールを装備にしたが、昨年の伸縮式のポールと違って長さ調整ができない為にツエルト設営が難しい。
軽量性とトレランでの使い勝手で選んだ短めのZポールなので、ツエルト設営に使用するとツエルト内部への出入りがし辛い。
ツエルトでの快適性を求めるのがそもそもの間違いだが・・・
午後になると昨日同様ガスが広がり、景色も見えなくなってしまった。
昼寝してノンビリしつつ、早めの夕食を取って日没と同時に明日に備えて就寝。
夜中にトイレに立つと、またもや満点の星空で、明日の好天が期待できる。穂高岳山荘の建つ白出のコルは地形上風の通り道なので、風が若干強く、時折7~8m/sほどの風でツエルトが煽られたが降雨に遭うことも無く快適に朝まで過ごせた。
3日目最終日、未明の5時半前に幕営地を出発。相変わらず稜線上は7~8m/sの西風が吹いており、切り立った岩場ルートに不安を感じる。
穂高岳山荘からは初っ端から岩場の急登で、今日はストックを使用することはないだろう。
黙々と岩場を登高し、奥穂への稜線で日の出を拝む。遠くに見える富士山も槍ヶ岳で見た時より若干大きく見える。
奥穂ピークに登頂。前穂吊り尾根への縦走も含めて今回でこれまた3回目の登頂だが、何の感動もなく、とりあえずピークから望むジャンダルム方面の稜線を写真に収めて西穂へ向かう。
程なく奥穂→西穂間でも危険地帯である馬の背を通過。確かに両側が切り立っており、ヤバい所だった。
ジャンダルムに登頂した時点でコースタイムよりも大分早い。穂高岳山荘から新穂高ロープウェイまでコースタイムで10時間となっているが、この調子なら午前中には辿り着けそうな勢いだ。
天狗のコルの時点でコースタイムでは約4時間のところ、半分ほどの約2時間で到達。
ガレガレの岩場や逆層スラブの下降などを緊張しつつ通過。この辺り、序盤の馬の背も含めて、雨天で岩場が濡れていると相当ヤバそうだ。昨年雨天で断念したのは正解やった。
奥穂まで吹いていた西風も西穂へのルートに入った途端2~3m/sほどの風に不思議と弱まり、強風に煽られることもなく、難なく通過できた。
山頂にいた山ガール2人パーティにどこから来たのか聞かれたので、槍から縦走してきたと言うと、「スゴーイ!」と驚かれる。
いや~そんなにスゴい?とチョット気を良くして元気付けられ縦走を続行。
マラソンでの沿道の声援と同じような効果があるようで、感心されると不思議と力が漲る感じがする。
その後もすれ違う登山者から聞かれる度に槍から縦走してきたと伝えて元気付けられながら下降スピードを上げてどんどん下って行き、最終的に休憩時間込みでコースタイムの6割弱の所要時間で新穂高ロープウェイの駅に到着。
これで小屋泊装備でザックがもっと軽かったら、コースタイムの5割はイケた感触。
一ヶ所、山と渓谷8月号に記載されていた畳岩尾根ノ頭での滑落遭難事故と同じ場所でルートを誤りかけた。遭難記事同様、誤った踏み跡にに誘い込まれ、本来のルートである飛騨側でなく信州側へ導かれてしまった。先のルートを確認したところ、ルートが不明瞭になっており、また遭難記事のことを思い出して正規のルートを見つけ出した。
ケーススタディとして遭難記事に目を通しておくのは重要だと感じた。自分だけは遭難しないという驕りも禁物だ。
それにしてもコースタイムは遅過ぎる。3日間全ての日程でコースタイムの約6割で辿り着けた。
トレランなら通常コースタイムの8割くらいで余裕を見て見積もるが、今回は別にトレランでもなく、幕営縦走装備でザックも重くて走れたもんじゃ無かった。それでもコースタイムの6割で行けるとは・・・これも100㎞ウルトラマラソンで鍛えられた賜物か?まさに超サイヤ人状態(笑)
3年前に槍穂高をテント泊装備で縦走した際は、下山後に筋肉痛に悩まされたが、今回は筋肉痛は全くなし!100㎞ウルトラマラソンに比べれば体力的には大したことないルートやね。100㎞ウルトラマラソンと言っても、サロマみたいな平坦なコースだと登山用の筋力は鍛えられないけど。
10日後には氷ノ山71㎞トレイルレースに出場するので、今回の槍→西穂幕営縦走で最終調整はバッチリかな?
今までで一番キツかった100㎞ウルトラでの累計標高差が2,707mで、トレイルを除く100㎞ウルトラマラソンの中では最も累計標高差が大きい過酷なレースだった。
氷ノ山71kmトレイルレースの累計標高差は4,823mで、距離こそ100㎞に満たないが、今まで出場したどのレースよりも過酷になりそうだ。