空木岳 残雪期登山

山行日2014年5月4-5日
山域、ルート空木岳
山行形態残雪期登山
メンバー三浦、橘(記)

空木岳 残雪期登山 山行記録

半年ほど空木空木と念仏を唱え、やっと行く機会に恵まれた。山の神様に感謝。実際には奥穂高コブ尾根を登るべく準備を進めていたが直前になり登攀日の5日は悪天候が確定的となり、やむなくセカンドベストの選択となった。もし仕事が立て混んで天気予報を見る暇もなかったらそのまま岳沢に入り、悪い天気の中を突っ込んだか停滞となり今年のGWが終わっていたかのどちらかだっただろう。

3日夜、三浦君に宝塚まで来てもらいフォレスターのマニュアルで一路駒ケ根インターまで走る。何度来ても思うが駒ヶ岳SAと駒ヶ根ICは名前を統一してもらいたい。隣同士で間違いやすい。久し振りに運転する乗用マニュアル車は運転が大変楽しい。またフォレスター君はよく走る。3時過ぎ、林道終点に到着し5時まで仮眠する。6時過ぎ出発。今回は残雪期の往復歩きコースなのであまり危険性は低いが山では何が起こるかわからない。1時間ほどで池山小屋に到着。綺麗な水が出ており、白樺林、奥に聳える木曽駒~空木の山々と、ロケーションは最高な場所だ。しかも小屋内も綺麗で太陽光発電で電気まで灯る。気をよくしながら進み、マセナギ辺りを通過し、大地獄・小地獄と呼ばれる箇所を三点支持で登る。
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この辺りからアイゼンの出番となった。鎖や梯子は整備されているが気を抜くと両側が切れているので大事故になる地形だ。滑落しないように慎重に歩を進め、迷い尾根(下山時に何故そう命名されたかわかった)と呼ばれる箇所を過ぎるとやがて周囲は高山らしくなってきた。長い樹林帯を抜けると雪の稜線となった。天気は快晴で南・中央アルプスの山並みや駒ヶ根あたりの街の景色が360度近く見渡せ、なるほど、さすがは百名山と、勝手に納得する。雪の緩い斜面を遠くまで見える景色に疲れを感じながら歩き、避難小屋が見える辺りまで来た。
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なるほどカールの末端にその避難小屋は建てられ、積雪期にはあまり役には立ちそうにない。無雪期でも坂を下って行かなければならないので立ち寄りにくそうだ。もっと考えて建てられたら良かったのになあ。

遠くに駒石が見える。その手前にテンバがあったので張りかけたが欲を出して頂上付近まで行く事にする。(12時) 駒石を過ぎ、エッチラオッチラと歩くと突然岩陰から駒峰ヒュッテが出現。

頂上辺りは奇岩が林立していて火星のようだなと相方に話しかけると「ほー、橘さんは火星に行ったことがあるのですか?」と返される。そうか、ワシの見た火星は「宇宙大作戦」というTVドラマでやっていた正体不明の惑星のことだったのかと疲れた頭で脳内を整理する。

さて小屋前には木曽駒から一日でやってきたという元気な単独の青年がおり、情報交換する。

我々は天気も良いし景色の良いところで張ろうということで意見が一致し小屋裏で設営する。(まさかこのあと一晩中地獄の責め苦を味わうとはこのとき予想できなかった)
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中央アルプスの雄大な景色を眺めながら飲むビールやチュウハイは天下を取ったような錯覚に登山者を陥れる。若輩の我々ももちろん同類だ。日没前テントに入り、寄せ鍋を囲んで飲み直す。

今夜の寄せ鍋は自慢ではないが美味しかった。和風、イタリア風と趣向を凝らし(といっても具材を鍋に放り込むだけだが)、ヒガシマルのうどんスープ君もよく頑張った。さて気持ちよく19時二人の無実の青年は眠りについた。あーぐっすり。しかし21時頃、突風に叩き起こされる。「ドンドンバリバリ」「ドンドンバリバリ」「ドンドンバリバリ」。。5秒間の静寂後、「ドンドンバリバリ」「ドンドンバリバリ」うるさい!と怒鳴るがお天道様は言うことを聴いてくれない。結局朝までお天道様のロックコンサートは続いた。ラスト近くにはブリザードか砂つぶてのような音も加わって最高に盛り上がった。テントが潰れないか心配したがさすがアライテントは丈夫だった。この風では下山は無理かも知れない、そうなったら駒峰ヒュッテにお邪魔して一日やり過ごそうかと考える。

また、風でテントが潰れたら荷物をまとめてザックに入れ、匍匐前進で小屋の冬季入り口から潜り込もうかと考える。万一に備え、ヘッデンと携帯、眼鏡を手元に寄せておく。9時間後の朝4時過ぎ、ようやく風も弱まりだした。朝飯を掻きこみ、空の機嫌が良いうちに高度を下げるべく下山を開始する。

稜線上はそれでも体が浮きそうになるような風だった。樹林帯に入ると穏やかになり一息つくことができた。この空木岳も樹林限界以上は非常にのっぺりしており、新雪が降りホワイトアウトの状況では簡単に遭難できる。冬季にはGPSが重要な武器になると思われる。もう少し避難小屋がいい位置に有れば、、惜しい。しかし駒峰ヒュッテの存在は有難い。(中は狭くて暗そうだが)
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さて、下山では迷い尾根あたりで我々もご他聞にもれず迷い、あちこちのトレースにウロウロしながらGPSに頼って元来た道に戻り、小・大地獄を慎重にアイゼンを効かせながら池山小屋まで下り、小雨の中コーヒー休憩の後駐車場に戻った。(12時) 帰りに「こまくさの湯」¥610(天気のせいか空いていて泉質も良かった)に立ち寄って帰神する。

NOTES:

  • 今回、武器を忘れる。まともには戦えなかった。
  • 今でも耳奥で風の音が抜けない。こんなにうるさい一夜は初めてだった
  • 天候による山域変更は致し方のない所だと考える
  • 新人を含めた雪山合宿に最適な山だ。随所にスパイスがあり、山頂ではロックコンサートが楽しめる(かも?)耳栓必須
  • 稜線上でテントを張るなら、樹林限界を少し超えた2400m辺りがベストと思われる(四方雪ブロックは必須)頂上付近は風の通り道か
  • GWでもほとんど人と会わない、静かで思索に浸れる山域だ。
  • 駒峰ヒュッテの周りには熊君のウンチが数箇所。餌付けすると危ない。
  • 三浦君、奥穂またリベンジしましょう!