明神岳 東稜 残雪期アルパインクライミング
山行日 | 2015年5月4-6日 |
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山域、ルート | 明神岳 東稜 |
山行形態 | 残雪期アルパインクライミング |
メンバー | I瀬、H瀬、橘(記) |
明神岳 東稜 残雪期アルパインクライミング 山行記録
何とかGW4連休を勝ち取り、念願の明神東稜へと出発する。メンバーはI瀬君と新人のH瀬さん。新人でも行けるか迷ったが、前後を固めればなんとかなるだろうと考えて、縦走ではなく雪稜登攀とする。越百~空木も行きたかったが。
5月3日20時発の予定が、高速道路の渋滞などで集合に手間取り22時発となる。うーん、仮眠の時間が削られた。やや混雑した高速を乗り継ぎ、アンダナ駐車場に3時過ぎ到着。早速仮眠する。
5月4日7時起床。Hさんのアイゼンの調子が悪いので、I君の予備アイゼンを調整して持って行く事にする。久し振りに65リットルザックを担ぐので重い重い。
上高地着9時半。この時間からではひょうたん池泊りか。観光客で賑わう上高地を後に、明神池まで歩き、そこから明神沢へと入る。天気は曇り。
そのうちに振り出しそうな気配だ。下明神沢、上明神沢を通過。
降雪が多いと雪崩れそうな嫌な感じの道だが、今日は連日の晴天続きのためか雪も殆どない。何度か休憩を挟みながらひょうたん池到着は14時過ぎ。
ここまで雨の中の歩きだったのでザックやズボンはびしょ濡れだ。
ラクダのコルまでとも思ったが、プラス4時間すると日没前後なので、大人しくテンバ跡にテントを張る。テントの中で濡れた衣服を乾かしていたらフリースに穴が空いてしまった。フリースはよく燃えるので注意しよう。今日のメニューは餃子鍋。担ぎ上げた大量の餃子が旨い。デザートの抹茶プリンを食べ終え、明日の晴天を期待しながら半乾きの衣服でシュラフに潜り込む。春山の雨は侮れない。
5月5日3時起床。月が出ている。今日は晴れのようだ。岳人の朝飯棒ラーメンを食べ、ハーネスやギヤを付けて出発。しばらく雪稜を歩くと第一階段と呼ばれる岩稜帯に出た。簡単そうではあるが落ちたら命はない所なのでロープを張って登る。3級(-)40m2ピッチ。
第一階段
尚も痩せた脆い岩稜と雪稜を進むとやがてラクダのコルに到着。
3張りほどのテンバ跡があるが雪もだいぶ溶けかけ、なかなかスリリングなテントサイトだ。
夜中の用便は命がけかも。休憩を挟みながら尚も進むが次第に日差しは強まり、雪が腐ってくる。
東面なので日当たりも良いようだ。
ラクダのコルまでテンバを上げられたら雪の固いうちに悪場を通過できてよいだろう。
そのうちにバットレスト呼ばれる核心部手前の小ピークに差し掛かったが、右から巻いているトレースはあるがコンテナほどの大きさのブロックの真横であれが崩れたら一溜まりもないということで左から巻くことにする。
(30m1ピッチ)巻き上がるとバットレスの基部でテンバ跡が3つほどあるが、さらに融雪は激しく殆ど張る気はしない。
核心部のバットレス基部に支点のアングルを打ち足し、I君リードで登る。
文献どおり、なかなか左手のつかみはあるが、右手右足の置き場所がない。
しかし20mの下部と上部には残置ハーケンは多数あり。
中間部はカムが使えるためか支点が薄い。
一番きつい乗越し手前に残置スリングがぶら下がっており、これは使える(というか使わないと登れなかった)
しかし20キロほどのザックを背負うとこれほどにも登攀がしんどいとは!!
不動の凹角(4級+)でザックを背負って練習すべきだった(後の祭り)。
何とか楽しく3人で登攀を終え、しばらくガラ場を落石に注意しながら歩くと明神山頂に出た。(14時)山頂標識もない、地味な山だ。しかし展望は最高。
360度眺められる。ここから見る明神2峰は浮石の積み重ねのようなピークで登攀意欲はあまり沸かない。しかし足の揃ったパーティならばさくさくと超えていきたくなる所だろう。我々は足並みが遅いので残念ながら奥明神のコルを目指す事にする。
ガラ場を少し迷いながら夏道に合流し2ピッチの懸垂を交えて奥明神のコルに到達。
ひたすらバックステップで降りる
ここからひたすら奥明神沢を後ろ向きに降りて岳沢を目指す。2時間ほどで小屋に到着。テンバ代一人1000円を支払い、快適な一夜を過ごす。晩飯はまたもや棒ラーメン。棒ラーメン好きには堪らない。20時就寝。
5月6日6時起床。本日も超快晴だ。山を降りるのがもったいない。このまま山賊になったろうかとも思う。朝飯にもう一度棒ラーメンを食し、岳沢を後にする。
後は重い足を引き摺りながら上高地まで頑張り、記念撮影をしたりして土産を買ってからバスに乗り込む。朝の観光客のまばらな上高地は素晴らしい景色だった。
いつもバスで来る団体さんとかで河童橋もどうかと思ったが爽やかな人のいない上高地は登攀の疲れを引きずった3人の心と身体を癒すには十分すぎるものだった。
NOTES:
- 文献に有るとおり、核心部のバットレスをザックを背負ってクリアできることが第一条件と思われる。4級くらいか。冬なら手袋なのでさらにレベルアップ。
- その前の岩場も一部垂直が現れ、気が抜けない。しかも脆い。
- アプローチも近くスケールは小さいかもしれないが中身の濃い、気の抜けない(テント場も含めて)辛口ルートであると感じた。スピードと歩荷力も要求される。
- ないパーティは我々のようにひょうたん池泊~奥明神沢となる。
- 新人訓練というよりは中級パーティがより爪を磨くのに適しているのではと感じた。
- 今度は雪のない時期にさくさくと再訪したい。