大峰山 行者還岳から大普賢岳 縦走
山行日 | - |
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山域、ルート | 大峰山 行者還岳から大普賢岳 |
山行形態 | 縦走 |
メンバー | 岡島×2 |
大峰山 行者還岳から大普賢岳 縦走 山行記録
2016年 10月9日 雨のち霧 小坪谷登山口11:00-行者還小屋13:00
10月10日 晴 行者還小屋6:00-大普賢岳9:00-行者還小屋11:00-登山口下山13:00
最初は九月の連休に神童子谷のノウナシ谷から大普賢岳を計画していたが腰痛と足首の炎症に見舞われたために10月の連休に延期することになった。また今年の九月は秋雨前線がずっと停滞し、おまけに台風も頻繁にやって来た。10月の体育の日ならば必ず晴れると見込んでいた。
しかし10月に入ってもまだ前線が停滞し、少し蒸し暑い日が続いていた。10月8日の土曜は天気が下り坂で翌9日の朝には回復するとの天気予報であったので、入山を一日遅らせ、ノウナシ谷から大普賢岳に登って国見岳の西尾根を下降する計画に変更した。土曜日の夜に天川村の御手洗渓谷で前夜泊するも未明から大雨。夜が明けてもしっかり雨が降っている。やむことを祈りながら神童子谷林道の奥まで車で進む。行けぬ天気ではないがメンバーの事を考えると登山道から大普賢岳を目指すことに計画を変更した。
大川口からの送電線コースは通行禁止になっており、少し上流の小坪谷のルートを登ることにする。判りにくい踏み跡であるが目印を追っていけばよい。昔は送電線の巡視路や、天川村と北山村を結ぶ峠道であったのだろうが、人が通わなくなると道は消えてゆく。もはや沢の高巻きに近い。
濃いガスが流れる天川辻に上がり出て、直ぐ北側の行者還小屋に入る。世界歴史遺産の功績か、立派なログハウスである。30年以上前に高校の登山部で来た時はトタンの避難小屋だった。
翌日は暗いうちに出発。七曜岳からは大普賢の三角形の頂上がガスの中に見え隠れする。前穂北尾根の様なピークが連なる。大普賢岳の頂上は完全に晴れ、神童子谷の対岸は稲村ヶ岳と山上ヶ岳が間近に迫る。東の大台ケ原や南の釈迦ヶ岳の方は無数の山々が広がる。紀伊山地は本当に山ばかり。西方の遥か彼方は四国の山かも知れない。やはり10月10日は晴れの得意日なのだ。
天川辻から奥駆道を離れほとんど人の通わない下山路、途中でヒラタケとタマゴタケを収穫する。美味しそうなツキヨタケも沢山生えているので注意が必要。
後日談であるが、23日の日曜日の朝、弥山で行方不明になっていた男性が13日振りに発見されたというニュースが流れた。ちょうど私達が天気待ちをしていた頃、道を失って谷に滑落された模様である。水だけで飢えをしのぎ、骨折しながらも崖を這い上がって他の登山者に発見されて生還された。
大峰では道迷いの遭難の話をよく聞く。20年近く前に三瓶さんが白子又川に沢登りに行った時に、奥駆道から間違って谷に降りて動けなくなっていた人を発見したことがある。主稜の奥駆道でもなだらかで森になった様な場所は、落ち葉が積もっていて道が判然としないところがある。鹿の踏み跡も入り混じってどこでも歩けるので、つい歩きやすい下りの方へ進んでしまう。無理に谷を下るととんでもない所に出てしまう。足下だけを見ずに少し先にも目をやり、あの辺りがルートだろうと見当をつけながら歩く。ルートを外したかもしれないと感じたら周囲を見渡して軌道修正する。ルートファインディングは先頭を歩かなければ上手くならないし、整備された人気ルートばかり歩いていても力は付かない。
役ノ行者が大峰山を開いた奈良時代の初め頃には奥駆に道などあったのだろうか。話は跳ぶが、少し前にテレビ番組で、鏑木毅のパタゴニア山岳レースの様子が放映されていて、人は極限状態を越えると「神の領域」に踏み込むらしい。肉体的にも精神的にも過酷な極限状態になると、脳は身体の活動を停止して体を休養するように指令を出す。疲れたら休むのが当然だ。しかし脳に逆らって身体を動かし続けると「神の領域」に突入するという。大昔に奥駆を開いた役ノ行者も、現代でも稀に成就される千日回峰の大阿闍梨も、神仏の世界を求めて山を駆け廻ったのでしょう。
そんな話を登山研修所で山越さんと駄弁っていたら、「限界とは自分が作ってしまうものだ。」と、山越さんが言われました。確かにハードルートで「もう力が持たない。」と諦めてロープにテンションを掛ける、その事が自分で限界を作っているのだ。極限レースの「神の領域」と、クライミングの「限界を越えること」が同じではないが、通じるものがあると思う。墜落の恐怖に打ち勝って身体を持ち上げて手を伸ばしたところに微かなホールドがある。
クライミングと言えば、国内で初めて5.14を登った吉田和正が53歳の若さで亡くなりました。フリークライミングをする人達には知っておいて欲しい最強のクライマーでした。
大峰奥駆、行者還岳、役ノ行者、神の領域、クライミング。まとまりのない報告になりましたが、もう一度シャクナゲの頃にノウナシ谷を計画します。
最後に本の宣伝です。「冒険登山のすすめ」米山悟著 ちくまプリマ―新書 820円モノに頼らないフリーな登山のすすめです。
大峰山 行者還岳から大普賢岳 縦走 山行写真
大普賢岳・小普賢・孫普賢
弥山から孔雀・釈迦ヶ岳
タマゴタケ 美味しい